20頁:女神の救済
今回は「クロ」ことクロノス視点のお話です。
『魔王クロノス……貴方は、この教典に反し……数多の罪を犯し、多くの生命を奪いました。しかし、今のあなたなら食の女神の救済を得ることができます。』
「・・・・・。」
『しかし、その救済をあなたが受けるには、ある条件があります。』
「なんだ?」と俺は言う。
すると、『食の女神』はこう言った。
『荻野御雷……かの世界を救った私の使い手、荻野龍二の娘……いや、双子でしたね。彼女たちもまた、私の加護を生まれ持って生まれてきています。』
「結局、何が言いたいの?俺今猫になってるんだけど?」
『えぇ、それはわかっています。』
「じゃあ、なんで?」
『……貴方なら彼女たちの食に関する知識と手料理……。どれも美味しかったのではないですか?』
「……たしかに美味しかったな。それに、あの異世界人を目の前にすると、口答えしていたが結局、美味い飯に釣られて何も言えなくなってしまう……無力だとは感じていたけどね……」
『……やけに素直ですね』
「もう、疲れてるんだよ……」
『それもそうですね……』
「それで?」と俺は言う。
『……つまりですね。「荻野龍太」の加護は、料理に関する知識と調理技術。またこのふたつの力を分け合って生まれた「娘達」その双子の内……片方だけに宿っているはずなのですが……』
『不思議なことに、2人同時にその加護を授かっています。』
「え?」
『そして、その片方の娘が女神の力…そのものを宿しています。』
「ミライが?」
『えぇ。彼女が信仰の礎となるのです。』
「え?」
俺は思わず、そう呟いた。
『……しかし、今の人間達は貴方が倒されてからというものの、勢を尽くしています。そのような世界では、少なからず悪影響を及ぼすでしょう。その存在から彼女を守ること、その為に貴方を救済すると言っているのです。』
「ほっぺた突かないでくれる?それに、撫でられるのもなんかちがう……」
『えぇ……?こんなに可愛らしいのに?』
俺は猫にされてしまっていたので、終始女神に撫でられ続けている。
くすぐったいし、何故か癒されてしまう。
なので抵抗することにしたのだ。
「だから……俺のほっぺた触らないでくれる?」
『でも、可愛いですもの!』
「分かった。もう俺は人とか痛めつけることとかはしない。それに……救済を得られるんだ。あまり干渉しないでもらいたい。」
『わかりました。私から名前を奪った罰として、あの姿でしたからね。戻して差し上げます。』
そして、私の体は元の魔王の姿へと戻った。
『それでは、食の女神の権限として、魔王としての力を解放するときは彼女に……委ねましょうか。彼女は常識的な人物ですし。』
「大雑把すぎない?」
そして、私は元の姿に戻れるようになったのだった……。
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朝の光が差し込む部屋の中、俺は目を覚ました。
いつもなら、彼女の枕元には可愛らしい黒猫の従魔……そう、我が丸まっているはずだった。
しかし、今日は何かが違った。我が目をこすりながら視線を移すと、彼女が驚いた表情でこちらを見ているのだ。
「え……クロノス、クロ……だよな?」
「あぁ、そうだが……」
語尾に「にゃん」が自然と付くはずなのだが、何故かついていない。
恐る恐る俺の姿を確認すると………
元の姿に戻っていたのだった………。




