表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人2世×英雄の娘(妹)の食材探しの冒険譚  作者: みかんぼ〜@みかんが丘通信局
22/37

19頁:「ごちそうさまでした」

 料理はどれも美味しかった。

 さっきのローストトラウト、お魚のおつまみみたいなやつやスープ。ふわふわの焼き立てのパン。ミノリイヌの果実のゼリー。

 どれも美味しかった。


「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした。」

「ご馳走様でした。」


「この『ご馳走様』というのも、挨拶であり、儀式の一部なのですか?」

「そうですね。神様を食べるには数多の過程が必要です。例えば、食材を取ったり、育てる人。それを仕入れる俺達フードバイヤー、作る人……多くの生き物の命を“ごちそう”になり、食事を作る人が走り回って材料をそろえ、手を尽くしてくれたことへの感謝の気持ちを表す言葉……それが『ごちそうさま』、パーリ市で使われている締めの挨拶は長いので、親父がそれを短縮したのがこの言葉なんですよ。」


 俺は、「ごちそうさまでした」の意味や由来を簡単に言うと、料理長が凄い泣いてみえた。


「うっ………!」

「ちょっ、料理長!?」

「いや、奥が深い言葉で……こんな、素敵な言葉があるなんて思わなくて……つい」

「なるほど……パーリ市はとても面白い場所ですね。食文化への信仰は聞いたことありますが、ここまで奥が深いとは……」と領主様が言う。


「えぇ、このパーリ市では、食文化がとても盛んであるのと同時に、食べれることへの感謝の気持ちを挨拶にすることを大切にしています。食事の礼作法は社会的な意味合いではなく、親父はこう考えています。『きちんと食べてありがとうを体全身で表すためのもの』だと。だから結構、悪クセやると怒られたんですけどねwww」

「なるほど……そういう見方もあるのか。新しい発見だ。」

「えぇ、私もです。」とセレさんが言ったあと、俺は言う。


「ちなみにお伺いしたいんですが、貴族の方が食べられている食事って、華奢なイメージが強いんですけど、特別な調理法だったり魔法を用いて料理するのかな〜と。ご存知でしたら、教えてください!」

「うーん……基本的には魔法で調理します。ですが、私も本格的な料理は何度かしか経験がなくて……」

『にゃっ!?』とクロは言うので俺はその方向を見る。もしかして驚いているっぽい。

するとセレさんは言った。


「貴族の方って結構私みたいなのが多くて……私のところは大きな方なんですけど、王室だともう少し品のあるメニューが多いみたいですし。あまり日常的に食べないのです」とセレさんは言う。

「なるほど……コレは良い発見かも。また後日、厨房を詳しく見させて頂いても良いですか!?」

「どうぞ!!」


 俺はまた後日、厨房を見学させてもらえることになった。


********************


 パーリ市の歴史はとても古い。

 

 昔々、まだ大地が新しく、生命が芽吹き始めた頃、神々は地球を創造した。その創造の中で、最も大切な役割を担ったのは食物の女神であった。

 彼女は、すべての生き物が生き延びるために必要な糧を与え、生命の輪を回し続けることを使命としていた。


「この世界には、すべての生命に神々の御霊が宿っているのだ」と、古の教典は語る。


 人々はその教えを守り、生命を分け合うことの重要性を深く心に刻んでいた。年老いて土に還るまでの間、互いに助け合い、感謝の心を忘れなかった。

 だが、時が経つにつれて、食物の女神に感謝するための宗教の名前は魔王に奪われ、彼らによる支配が始まった。


 神殿は壊され、教典は散逸した。


 しかし、食文化への信仰は人々の心の奥深くに刻まれており、断片的な教えは後世へと伝えられていった。


 遥か遠い日本から異世界に召喚された俺の親父……荻野龍太は、パーリ市に訪れた際、この古の信仰に出会った。

 親父は、日本の神道と通じるものを感じ、パーリの人々と食文化の信仰を伝え合った。


 その結果、今の混在化した食文化が神格化され、新たな教典が生まれたのである。



「なぁ、クロ。」

『何だにゃ?』

「あの宗教の名前って何だったんだろう……」

『……名前を奪ったら、みな忘れ去られていく。取り返すこともできないのにゃ。』



「……そうか。」



 そして、俺とクロは眠りについたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ