1頁:黒猫のヒミツ
翌日。
姉貴に頼まれ、開店前に店の前を掃除していたとき……
「にゃあ……」
「なっ……!?」
怪我した猫が倒れていた。
俺は、すぐに猫に駆け寄り抱き上げる。
「お前……酷い怪我だな。」
すると、姉貴が店の中から出てきた。
「どうしたの?ミライちゃん?」
「姉貴……この猫の怪我を治してやりたいんだけど……」
「わかったわ。ちょっと待っててちょうだいね。」
そう言って、姉貴は店の中に戻っていった。そして数分後、救急箱を持って戻ってきたのだ。
「よし!これで大丈夫なはずだよ!」
「ありがとう!」
ぐぅ〜……
「ごめん、俺朝食早く食べちゃったから、姉貴ご飯頂戴?」
「仕方ないな〜お姉ちゃんが作ってあげるから、そこで待ってて。あっ、あなた用のご飯も出さないとね」
「にゃあ!」
そして、姉貴が作ってくれた朝食を食べる。
「わぁぁぁ!うまそ〜!」
「お待たせ。『コカトリス』の卵を使った、ねこまんま風卵かけご飯!」
「にゃあ〜……」
姉貴の作る料理はどれも美味い。親父譲りの血筋だろうか。俺も料理はある程度作れるが、姉貴みたいに頭が冴えてないと、こんなに美味いものは作れない。
「美味しい?」
「にゃあ!」
猫は美味しそうに食べていた。俺はそれを見て安心した。そして、姉貴の作った料理を全て平らげたあと、猫はキラキラと目を輝かせて、俺の前に来た。
俺の顔を見ると頭を撫でて欲しそうにしている。
俺は猫を抱き上げた。
「にゃー!」
「お前、可愛いな〜」
「とりあえずこの猫ちゃん、どうしようか。」
「親父に相談して、治るまでの間保護しとくか?それとも招き猫にするのもいいな〜」
「そういう系ってレストランギルドに相談しないといけなかったっけ……」
「取り敢えず、親父に許可取ってくるわ」
俺はその猫を抱きかかえたまま、店の奥へと入る。
********************
「親父〜ちょっと相談したいことが……」
すると、事務室から親父が顔を出した。
「どうした?ミライ」
「この猫なんだけど……怪我しててさ。治るまで保護してやりたいんだけど、いい?」
「ああ!もちろんいいぞ!でも……!?」
「親父?」
「にゃあ……!?」
親父と猫、一瞬目が合った途端固まってしまった。
しかも、猫は驚きすぎて、顔がめちゃくちゃ引きつっている。
「ミライ、その猫はどこで拾ったんだ?」
親父が恐る恐る聞いてきた。
「いや、なんか店の前で倒れてたから……」
『こいつが助けてくれたのにゃ!というか、異世界人!何故貴様がココに居るのじゃ!?』
「喋ったぁ!?」
「ミライちゃ〜ん、その猫俺の知り合い。ガチで。」
「えっ?マジ?」
俺の腕の中の猫は、親父の顔を見上げて震えている。
「この猫……どうやら俺の知り合いみたいだ」
『まさか……貴様が店主だったとは……』
「ミライちゃん!その猫を今すぐ捨ててきなさい!」
「いや、元から怪我してるから保護したっていいだろ!何で捨てていくんだよ!?怪我してるんだぞ!?」
「やだ!俺のトラウマえぐる気か!?」
「何でそんな事言うの!?それでも、親父人間か!?」
『もっと言ったれ!小娘!』
俺は、「捨ててこい」という親父の言葉に反発した。すると、親父は慌てふためきながらも反論してきたのだ。
「その猫……『クロノス』って言うんだけど、俺のトラウマなんだよぉ!頼むよ〜」
「あの厨二病気味の親父にトラウマを植え付けるなんて、お前……凄いな」
俺は思わず感心してしまった。
『にゃふん!』
そんなやり取りをしているうちに、姉貴がやって来た。
「ちょっと何騒いでるの?」
「姉貴!聞いてくれよ〜!この猫、一時的でも良いから怪我が治るまで保護したいって言ったら、捨ててこいって言うんだよ!?ひどくない!?」
俺は、姉貴に妹特有のうるうる瞳で訴えた。
姉貴は、俺のウルウルアイ攻撃に弱いので、大抵の事は聞いてくれるのだ。
「お父さん……それ本気で言ってるの…?『元英雄』なのに?」
「ちょっ!?(汗)」
『心優しい娘持っておいて、貴様は冷酷な人間……怖いにゃあ……』
「お前……!次、口開いたら調理してやろうか……」
親父と猫は、俺を横目で見ながら口論を繰り広げている。
「お父さん……」
『小娘!お前は良い奴だにゃ!』
「えっ?俺は?」
なんか俺無視されてるんだが。
「お・と・う・さ・ん?」
「『ひぃぃ!』」
「私とミライが保護してって言ってるんだから、保護……してくれるわよね……?」
「分かった!許可するから!許してくれ!!!」
親父は土下座して、姉貴に許しを請う。
「……ふふっ。お父さん、ありがとう!」
「ありがとう親父!」
「にゃー!」
しかし、姉貴にはこの猫の声が聞こえていないみたいなので、先程の経緯を詳しく説明することにした。
〈経緯説明中・・・・・〉
「えぇ!?お父さんの話、本当だったの!?」
「姉貴……常連さん達が親父のこと『英雄』って言ってる時点で気づけよ……」
『ん?どういうことにゃ?小娘達と異世界人の関係性はどうなってるのにゃ?』
猫が不思議そうに聞いてくる。
「あぁ〜……俺と姉貴は親父の実子なんだ。母さんは『ナタール』っていう昔、全ての争い事を止めたとか言われる元英雄で……」
『それくらい知ってるのにゃ。さしずめ、異世界人2世ってことかにゃ?』
「そういうことです。ハイ」
『ところで、その小娘は……異世界人の血を引いてる割に、我の声が聞こえないのかにゃ?』
「ああ。姉貴は異世界人2世だけど、元から魔力が少なくて魔法も使えないんだ。その代わり、調理系のスキルを持っているんだ。」
『なるほどにゃあ……』
「そういえば、お前の名前は?」
俺は猫に名前を聞いた。
『我の名前か?我が名はクロノスだ!』
「そうか……じゃあ、『クロ』って呼んでいいか?」
「にゃあ!」
こうして、俺と親父、姉貴と元魔王の猫は一緒に暮らすことになったのだった。