15頁:ルーゼンブルクの街
「えへへ……」
『にゃ〜』
俺とクロは、クオカフ村より少し遠い位置にあるカギア山の麓の街、ルーゼンブルクに来ていた。
この街は、クオカフ村よりも少し大きく、人口も10万人くらいいるらしい。
そしてこの街には「ルーゼンブルク家」という大きな貴族の屋敷がある。授与式の時に出会ったセレさんがいるお屋敷だ。
『ルーゼンブルクは、とても大きい街だにゃ。カギア山から流れる水はとてもキレイで毎年季節問わず色んなお魚が獲れるにゃ〜。』
「へぇー。」と、俺はクロに相槌を打ちながら馬車に揺られている。そして、ルーゼンブルクに到着したのだ。
「おぉ〜でっけぇ……」
『にゃ……』
俺とクロは驚いてしまった……。クオカフ村もなかなか大きかったが、ここはもっと大きくて色んな人や建物が立ち並んでいた。
「じゃあ、早速向かうか!」
『にゃ!』
ルーゼンブルクの街をゆっくり走る馬車に乗り換えて、揺られること10分程……大きな屋敷に着いた。
「ここがルーゼンブルク家……」
『そうにゃ。ルーゼンブルク家……この辺りの領主、貴族の中では2番目に大きな権力を持つニャ』
「へぇ〜凄いな!お前も知ってるくらいだから強いのか?」と言いつつ、俺は目の前の屋敷を見て驚いてしまう。
まるで中世のお城のような外観に圧倒されてしまったのだ。
「よし!じゃあ早速行くか!」
『にゃ』
俺とクロは、屋敷の門を潜る。すると、そこに1人の女性が立っていた。その女性は俺を見ると言う。
「ミライさん!授与式のときはお世話になりました。」
「いえ、本日はこちらこそよろしくお願いします。」
セレさんが自ら出迎えてくれた。
「実はですね、私よりも父がお会いしたいと……先日の授与式のとき別件でこれなかったのを、すごく後悔していたようでして。」
「そうなんですか?」
「はい!是非ともお時間があればお話をしたいと……私も父もミライさんのファンなので……」
『にゃっ!?』
「え?そうなの?」
俺は思わず聞き返してしまう。するとセレさんは笑顔で言った。
「はい!」
そして俺達は応接室に通されるのだった……
そして数分後、セレさんの父がやってきたのだ。
「はじめまして、私がルーゼンブルク家の当主のアルフ・ルーゼンブルクです。レッドボアの件ではお世話になりました。」
そう言って手を差し出してきた。俺もその手を握り返す。
「どうも、荻野御雷と申します。あのときはありがとうございました。」
「ささっ、お掛けになってください」
セレさんに促されるまま、俺はソファに腰掛ける。するとセレさんは俺の隣に座り、アルフさんは対面のソファへと座った。そして……「では早速……」とアルフさんが話を切り出す。
「先日はレッドリボンの授章、誠におめでとうございます。その時は愛娘のセレスティアがお世話になりました。」
「いえ……」
「今回、ミライさんにお願いしたいことがございまして……要件は3つです。」
「何でしょう?」
「1つ目は、先日……セレスティアにボアの討伐技術について教えて頂いたことを……その技術を是非、当家の騎士団に教えていただきたいのです。2つ目は、最近山脈川の岸あたりに出没している『キングシャーモン』の討伐。3つ目は、その間にセレスティアに魔術について教えていただきたいのです。」
ちゃんと要件を説明してくれてる。
それに、セレさんに魔法を教えてほしいらしい……まぁ2つ目以外は簡単に解決できるな。
「大丈夫ですよ」と俺は笑顔で言う。すると、セレさんが言った。
「本当にですか!?ありがとうございます!」
「そして、キングシャーモンについてなのですが、冒険者ギルドには前もって説明してあるので、ミライさんは討伐していただければ大丈夫です」とセレさんが補足してくれた。
「宿についてですが、もしよかったら、当家で泊まっていただいても大丈夫です。こちらで料理やお風呂も用意致します。」
「え!?良いんですか???」
「はい!是非とも泊まってください!」
「ありがとうございます。」と俺はお礼を言うのだった。
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その後は、セレさん同伴でルーゼンブルクの街をみて回ることになった。
「セレスティア様だわ。」
「今日も可憐で可愛らしい……」
「あの赤いドレスがよく似合うわね……」
そんな声があちこちから聞こえる。どうやらセレさんはルーゼンブルクでの人気がかなりあるようだ。まぁ、こんな美人さんだからそりゃ人気もあるよな〜と思っていると、セレさんが言う。
「まず、この街のレストランギルドに行ってみませんか?ギルド併設の施設があって、そこのスイーツがとても美味しいんです!」
「へぇ〜、じゃあ行ってみましょうか」
『にゃっ!』とクロが鳴く。そしてセレさんは俺の手を取り、歩き始める。俺は少し照れながらもついていったのだった。




