13頁:レッド・リボン
「……何かの間違いじゃないですか?」
「いえ。しっかりと王より褒章が授与されることになりましたので。」
第1王子……この美青年が言うには、褒章をもらう立場に等しいというらしい。
手を差し伸べられたので、俺はその手をとった。
俺は会場のど真ん中に連れられると、他の人が褒章授与されるときと同じようは立ち振舞で行うことにした。
こういうのは、あまり慣れないが……
褒章授与式は進み、次々と名前を呼ばれて贈呈される。
『にゃあ』と鳴きながら俺の腕の中で丸くなっているクロ(猫)はまるで興味無さげにあくびしている。
そしてついに「ミライ」と言う名前で呼ばれたのであった……俺は緊張しながらステージの中央へと歩いて行く。
すると、国王様が椅子から立ち上がり、俺の目の前に降りてきた。
ん〜?
なんだろう……なんか嫌な予感がするんだけど……気のせいかな……?
「ミライ殿、貴殿はキングプロプスとレッドボアの討伐に成功し、国民の生命及び生態系を保護した実績を踏まえて、『レッド・リボン』を授与します。」
「え……っ?」
俺が驚いていると、授与式に参列している貴族たちの声が聞こえる。
「おい……レッド・リボンって……」
「ええ。世界的にも大きな功績を挙げたものに与える勲章ね」
「確かに、キングプロプスとレッドボアは、本来なら魔法騎士団出動して討伐……そしてその肉は献上されなきゃいけないもんな」
「しかも……親子2代揃ってって言うのが……」
……は?……え?
「あの……国王様??俺、レッド・リボン程でもないと……」
「ふふっwwそれ、君のお父さんも同じことをおっしゃっていました。『自分は、魔法も使えないし料理を作ったり、みんなの体のことを思っての行動しかできなかった。そんな俺がこんなものいただいて良いものか』と。謙遜の意を示されていたほどです。」
「親父が……」
「親子とも、謙虚で素晴らしい。是非、受け取って頂けませんか?」と、俺の方を向き直ると、懐から赤色のバラを取り出し、お付きの人が俺の指に針を刺す。
その花に血を垂らす。
すると、その花はリボン調に姿を変え、俺のドレスの飾りの一部となった。
「わぁ……」
「ふふっ、とても似合っているよ。ミライ殿」
「ありがとうございます……」
俺は少し恥ずかしそうに言うのだった……。
********************
そして、式のあとはパーティーだ。
初めての経験ばかりで、少し緊張している。
しかし、どの料理も美味しくて俺は驚いていた。
再びレッドボアを食べれる機会が巡ってきた時、マジで感謝しかなかったけど、良く考えたら高級品だもんね。
白金亭も良く考えればクオカフ村で唯一の王室御用達のレストランだから、俺でも入りにくかった。
このサラダなんかも美味しい。
今度、姉貴にお願いして再現してもらおう。
(姉貴のスキル:見て食べたものをそっくりそのまま再現できる)
食べていると、何人かの貴族令嬢が俺と話がしたいらしく話しかけてきた。
「ミライさん、お初にお目にかかります。私はルーゼンブルク家、次期当主の『セレ』、セレスティアと申します。」
「はじめまして。大衆食堂『満腹屋』の食材調達人をしています、荻野御雷と申します。」
「先程は、『レッド・リボン』の褒章授与、誠におめでとうございます。」
すげー美人さん……セレさんだっけか?金髪に魔力の高い証のオッドアイ!そして、ドレスがとても似合っている。
「ありがとうございます」
俺がそう答えると、彼女は言う。
「あの……私、『レッド・リボン』の授与式の時からずっと気になっておりまして……、そのレッドボア……どうやって倒されたのですか!?」
「ど……どうやってと言われましても……」
「レッドボアは、私の家の騎士団を用いたとしても倒すことができなかったんです。何せ、クオカフ村は私の家の領地の1部でして……」
この子、領主様の娘さんだったのか!
「そのような討伐クエストが出ること自体も珍しいのですが、あれはS級の魔物……1人で討伐されたということですよね?」
「はい。まぁ、そうなりますね」
俺は答える。するとセレ嬢は言う。
「どうやって倒したのですか!?1人で討伐ということは……何か特別な魔法とかスキルを使ったのですよね?」と彼女は目をキラキラさせながら言うのだった……
仕方ないので少し教えることにした。
「レッドボア含め、哺乳類種は首周りに太い血管があって、レッドボアだと……人間の心臓よりも太い動脈があるんですよ。その動脈を切れば簡単に倒せます」
「え!?そ、そうなのですね……」と彼女は驚く。そしてセレ嬢は続けて言う。
「でも剣では刺せなさそうですね……。」
「切れ味がめっちゃいい短剣じゃない限り難しいんですけど、氷魔法で先を尖らせたものを作って貫通するイメージで放てばある程度倒せますよ。気絶させるのも良く聞きますが、それだと解体するときどうしても途中覚醒とか怖いので……」
「そうなのですね!メモメモ……」
セレさんは、とても熱心に俺の話を聞き、ノートにメモをし始めた。
「あ、すみません!私ったらつい……」
セレさんは顔を赤くしながら言った。
「いえいえ。お気になさらずに」
「あの……もしよろしければ、また今度お話を伺ってもよろしいでしょうか?これ、私の連絡先です。」
「はい。構いませんよ」と俺は笑顔で言うのだった。
そしてパーティーは終わりを迎えようとしていた。
最後に国王様が挨拶するらしい。
「此れにて、本日は終了です。ここまでご静聴頂き誠にありがとうございます。」
その後、親父と国王様が再会したとき、厳かだった国王様の雰囲気がガラリと変わった。
「アーサーじゃぁぁん!おひさー」
「リュウも変わらねぇーなー!うぇーい!」
まるで近所の男の子の幼馴染のやり取りみたいなノリで抱き合う2人。
「アーサーかっこよかったぜ」
「そりゃーね!せっかくだからかっこよく決めないと、もったいないしね!」
にぱっと笑う。こういうところはその人の昔からの性格何だなと理解した。
しかも、めっちゃ親しい。俺は思わず驚いてしまったくらいだ。
「あと本題なんだけどさ……お前の娘さんに『レッドリボン』が授与されてるだろ?その件でちょっとな」
「え、えぇ……まぁ……」
「ミライちゃん、何か欲しいものとかある?」
「え!?俺ですか!?」と、驚いている俺に親父は言う。
「お前以外にいないだろ!?」と言うので俺は言う。
「レッドリボンなんて身に余る光栄すぎる称号だからなぁ〜……」
すると、国王様は少し考えて言った。
「例えば地位や名誉でもいいし、今後の活動に使う資金や道具でも良いんだよ?」
「えぇ……でも……」
「うんうん。遠慮しないで」
俺は少し考えてから答えた。
「それなら……一つお願いがありますね。」
「おっ!?」
「親父たちが昔、そうしたように食の貧富の差を無くしていただくよう努力して頂ければ俺は何もいりませんから」
「え〜〜俺とおんなじ願い事かよ〜」
「これしか思いつかないんだってば。」
「まぁ、確かに。」
「でもさ、ミライの願い事なら何でも叶えてくれると思うぜ?」
「そうかなぁ〜?そうだといいけど……」
俺は少し不安だった。国王様にお願いするのだから……。
そんな時、親父が言う。
「大丈夫だって!俺なんて『レッドリボン』授与されてから、1週間は毎日城でパーティーやら接待やらで忙しかったんだぜ?」
「え!?そうなの!?」
俺は驚いた。そんな大変な思いをしていたなんて……知らなかったからだ……。すると国王様が言う。
「まぁな。でもリュウが頑張ってくれたお陰で魔王も討伐されたわけだしな。」
「……っ!」
(そうか。今この目の前にいる黒猫が魔王が衰弱化した原因でもあるのか……)
「うん。でも俺は今の生活が幸せだから気にしないことにした」
「そっか……」
親父はそう言いながら、俺の肩に手を置いた。
そうして古い親友……国王様と親父が仲良く話しているのを見て、俺は何だか微笑ましかった。




