俺の家族の話。
俺の父、荻野龍太は元英雄で、今は大衆食堂「満腹屋」を営む店主だ。
彼は地球の日本で料理人をしていたが、異世界に召喚され、魔王討伐隊の一員として活躍した。
父は料理の腕前でパーティーを支え、見事魔王を討伐。
その後、勇者パーティーの仲間だった母と結婚し、俺と姉をもうけたが、母は亡くなった。
父は死に物狂いで働き、今では国の五本の指に入る大衆食堂を経営している。
五年前に設立されたレストランギルドのおかげで、店はさらに繁盛している。
「いらっしゃいませ~!何名様ですか?」
「4名です」
「4名ね。ミライ、5番席に案内してやって」
「りょ。お客様、こちらへどうぞ〜!」
「満腹屋」。
親父が営んでいる食堂は、連日大盛況。様々な料理技術が進歩しているこの世界で、特に親父の調理技術はどこの誰にも敵わないくらい最強だとか。
そんな親父の手伝いを俺はしている。
アイテムボックスのスキルを使って、お客様にお水とお手拭きを出す。
「こちらをお使いください。」
そして、今日のお品書きを書いた魔導板を置く。
「今日の日替わり定食は、トットリスの卵焼きとサカバンバピルスの煮魚です!」
「じゃあ、それを頼むよ」
常連のお客さんが注文してくれた。そして、次は親子連れのお客様が来た。俺は魔導板を置いてからすぐに水を出して接客した。
「いらっしゃいませ~!!」
すると、母親と思われる方が話しかけてきた。
「あの……このお店は子供がいても大丈夫ですか?」
「もちろんですよ!こちらの席へどうぞ!」
お子さんも楽しめるような絵本やお絵かきをアイテムボックスから探して置いておく。あ、もちろん水とお手拭き、お品書きを書いた魔導板も置いてね。
「お子様用の椅子はこちらです。」
俺は注文の料理と飲み物を浮遊魔法で持ち上げて持っていく。
「お待たせしました~!!」
すると、今度は冒険者らしき集団が来店してきた。
こんな感じで夕方の夕飯時から日付が変わるまで、毎日営業している。
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「みんなお疲れ様!先に上がっても大丈夫だぞ。」
「お疲れ様です。店長。また明日もよろしくお願いします。」
日替わりでくる従業員さんたちに挨拶している親父。従業員さんはみんな、親父にメロメロだ。
親父、さっさと再婚しちゃえばいいものを……。
「今頭に思い浮かんでいる言葉、口に出したらどうなっているか分かってるよな?」
「しねぇわ。バカ姉貴」
この毒舌女は、俺の双子の姉貴…アカリ姉さんだ。振る舞い方が生前のオカンにそっくりらしく、上品でおしとやかそうな見た目に反して、中身はババアよりひどい。
「おい!誰がババアっつった?」
「心を読むなよ。というか地味にチートなんだから隠しとけよ。」
「また姉妹喧嘩か〜?程々にしとけよ〜」
そういえば、あらすじで親父の話ばっかで俺の自己紹介とかしてなかったな。
俺の名前はミライだ。親父の元いたところで「先を見据え、明るい先を創る」という意味合いがあるらしい。
冒険者兼食料調達係で、たまに今日みたいに従業員さんが少ないとき、お手伝いさせられるが普段は色んな場所で食材を採取したり、魔物を倒したりして稼いでる。
「ミライちゃん、今日も食材貰っていくわね♡」
「このハタケガメの作物、甘くて美味しかったわ。また旬のときに採ってきて頂戴ね」
「うっす!」
「あと、これ。お裾分けよ。」
そう言って、従業員のおばさんから渡されたのは、美味しそうなサンドイッチだった。
「ありがとう!じゃあまたね!」
そうして、俺は久しぶりに食堂の二階……住居スペースで寝ることにしたのだった。