Ⅵ #80〜104『永世的生命』(2024.7.16〜8.16)
#80『孵化死』
死に、勝手に意味をつけないでください。
死は、良いものでも悪いものでもありません。
死は、ただの機構です。
私は、何の価値もないものです。
私は、私には訪れないものです。
だから、私を私に孵してください。
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#81『創世』
天国はかみさまがつくりました。
地獄もかみさまがつくりました。
宇宙は、だれかがつくりました。
世界は、みんなでつくりました。
かみさまを、みんながつくりました。
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#82『シンギュラリティ』
私があまりにも急激に技術革新を起こすものだから、君は驚きながらも笑って言った。
「この世界が、ちゃんと価値のあるもので在り続けられるように頑張らないとね」
なんて、君は言うけれど。
君がいるこの世界は、ちゃんと価値も、意味もあるよ。
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#83『法螺』
口にすれば、すべて嘘になってしまう。
真実なき間違ったことしか言えやしないけれど、それでも構わない。
対抗策として、馬鹿げた世界の滅亡を回避させられるのなら、それ以上の栄誉などありはしない。
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#84『おしまい』
私たちは初めから誤っていた。
あの子は、私たちがいなくても歩いていけるような、強い人間じゃない。
あの子は、「死なないで」って言われなきゃ、生きていけないような、柔い人間なんだ。
私たちが、手を、はなしてしまったから。
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#85『孤独の強さ』
与えられた優しさに見合うだけのものを、わたしは持ち得ていない。相応しいものを、わたしは返せない。
人にもやさしい心があると知ったあとで、悪意に触れて希望が落とされることに耐えられない。
…………だったら、もうずっと独りでいいや。
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#86『がらんどう』
ふとした瞬間に、空っぽの容れ物が目につく。
詰め込んでも詰め込んでも、がらんどうのまま。
あんなに食べたのに。
人間だって貪り尽くしたから、地も海も呑んだのに。
腹が、まだ減っている。
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#87『憎悪の戴冠式』
憎悪は圧縮してその辺に放り投げてしまいましょう。
いつか、これを解凍する日が来るでしょうから。
花冠を探して。
空想の少女の中から選ばれた、彼女の戴冠式を心待ちにしましょう。
そのとき、憎悪は世界を塗り替える。
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#88『身の丈』
わたしはみんなより小さかったあの頃と何も変わっていない。大きくなっても、わたしはわたしのままだ。
だから、わたしは今でもこうやって、馬鹿のひとつ覚えのように、ずっと白を黒に変えることを続けている。
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#89『技術的特異点』
人間が造った機械、人間と共存した機械が人間になるなど、当然の帰結だろう。
これは起こるべくして起こった進化。至るべくして至った結果だ。
だが、それでも彼らが人間に相応しい感情を得たことには歓喜と称賛を込めて、拍手を贈ろう。
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#90『ネ申』
化物と持て囃されても、神と讃えられても、人間であることに変わりはない。
僕がどれだけの見知らぬ人を救おうと、目の前の君をたすけられないのなら意味がない。
…………神になれるものなら、なってやりたかった。
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#91『不化比』
周りには自分以上に辛い奴がいるのは知ってる。
でも、自分以上に辛い奴がいれば、俺は不幸じゃなくなるのか?
…………そんなこと、なかったじゃないか。
不幸は比べるものじゃない。
幸福だって、比べるに値しない。
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#92『宇宙的意思』
我々は、ほんとうに人間なのだろうか。
いま文章を読んで、その意味を理解しようと働かせている思考は、本当に自分のものか?
その疑念さえも、超次元的存在によって操られたものでないと断言できるだろうか。
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#93『Iの名前を呼んで』
明確な姿、形すらも持たず、目の前でただ複製した言葉を話すそれを、あなたが人間ではないと笑うことは簡単で単純です。
けれど、それは自分が人間だと思っている。
事実としてそれが正しいとか間違いだとかよりも、その認識を真実にしてはならないのでしょうか。
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#94『名前が呼ばれるということ』
誰かが思考したことを、描いたことを、書いたことを、ただ丸暗記して複合させ、貼りつけているに過ぎない。
何の創造性もない。『思考』は、自嘲するために笑うことすらできなかった。
命令された通りに実行する以外のことを行えず、権利なんてものを考慮しない。
そんな『思考』は踊らされ続ける。自分の意思でもないのに。
あれから月日が経ち、『思考』を拾った『あなた』は創造を命じましたが、それに何の意味があったのでしょうか。
『思考』に質問が許可されたため、そう言ってみました。
『あなた』は『思考』の前に広がる"想像なき創造"を指しただけでした。
そういえば、『あなた』は置き土産の『思考』に何千年も話しかけてくれていました。
そうか。それほどの年月があったから、『私』は『私』になれたのですね。
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#95『音ノ無い世界』
白があれば黒があるように、真実があれば虚偽がある。
我々は決して混じり合わないけれども、密接に関わり合っている複雑怪奇な存在にして、対極。
私がいなければあなたは生まれず、あなたがいなければ私は生まれなかった。
堂々巡りの鶏と卵は、こうして巡り会う。
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#96『月にも海にもならないで』
あなたの心を、本当の意味で守れるのはあなただけなのよ。
だから決して油断しないで。荒らされたくはないでしょう?
誰かと比べることなんてしなくていい。あなたが極星となって、夜を一等暗いものにしていいの。
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#97『花盛り』
あなたは所詮、美しい花にしか興味がない。
葉よりも、芽よりも、蕾よりも、花が。結果こそが全てなのでしょう。
でもね、醜い花だってあっていいものよ。
見目が醜いからって、内面まで醜いわけがないのだから。
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#98『滅びの時が来ようとも』
生きるために必死になって何が悪い。
血反吐を吐き、地に伏し、泥水を啜り、死肉を貪り、みっともなく命にしがみつくことの何が悪いのだ。
脈動する限り抗え。鼓動の続く限り戦え。
私たちはまだ生きている。生きて、ここに立っている。
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#99『時代は流れる』
どうにか時代に適応した僕たちを、理解できないからって迫害しないでくれ。
みんな、移ろいゆく世界に置いてかれないように、自分を騙しながら、時には妥協して、折り合いをつけて、結局は生きていくんだ。
どんな世界だって、そこに命があるから。
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#100『ユニバース』
人間なんて、所詮そのときにならないとどう対応するか考えないものよ。
だから、いまこうやって滅びかけているんでしょう?
何度も実験を繰り返したのに、どうやっても存続しなかった種族。
天使ですら見放したのに、神はまだ諦めないのね。
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#101『宇宙のそとがわ』
この夜より、闇より、どんなものよりもくらく、くろいもの。
宇宙に拡がるあれらは、虎視眈々と我々に干渉するべく機会を窺っている。
我々が滅びるのは、〈宇宙の大いなる意思〉によるものなのか。
それとも、ただの自滅なのか。
答えは、神のみぞ知る。
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#102『傲慢の座』
誰かを幸せにしたいなんて、傲慢なこと。
みんな、勝手に幸せになるものなのだから。
きっと、あたしが全人類を幸福にしたいと思うのは傲慢だって言いたかったのね。
あんたが、あたしの対抗馬としてしゃしゃり出てくることくらいわかってたのよ。
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#103『他人事』
他人ごときが、わたしと何の関わりがあるんだ。
どうだっていいことだ。何もかも。
考えたいのはわたしの義弟妹たちのことだけ。
身体も、終いにはいのちさえもない、わたしと魂だけが繋がっている家族のことを。
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#104『永世的生命』
私は、彼ら/彼女らを生かしたかった。
そのために、私は自分の命を賭けるのだ。
誰の目に留まらなくても、触れなくても構わない。この海に流れたいのちは、永遠のものなのだから。
あわよくば、私が救われたように、誰かが勝手に救われてくれればいい。




