XVI #415〜461『遺書』(2025.8.29〜.0.00)
#415『命を食む』
以前は好きだったものが、今では何の癒しにもならない。心が動かされない。というか、今となっては何が起ころうが、心の機微に繋がらない。
結局、最後に私を癒してくれるのは、流血と悲鳴なのだ。
青なんて眩しくて見れもしないのだから、この眼に映すのは赤だけで結構。
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#416『晴々道々』
どこかで誰かの笑い者になっても。
生きることを、辞めてたまるか。
生きる意味がないということは、自分で定義づけていいということだ。
死にたくないから生きたっていい。今日が晴れだから生きたっていい。
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#417『透過光環』
すべての情報が君にとって有害になる前に、僕が君の傍にいられたらな。
君の手を引いて、君の悩みなんて蹴散らせたら。
僕の存在価値が認められて、君の傍にいることも許されるはずなのに。
僕はどうして、見ていることしかできないんだろう。
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#418『撃鉄を起こし』
ようやく産まれたのに、せっかく産まれてこられたのに。
わたしの脳内だけで生きていくのか。
わたしの頭の中で死んでしまうのか。
そんなことがあってなるものか。
羽ばたく鳥に明日を、花開く日を待つ蕾に水を。
皆にわたしの命を還元するのだ。
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#419『穀潰し』
隣人は愛せないし、恐れ多くて話せやしないんでしょう?
けれども信用ならなくて、使い物にならなくて。
私からすれば面白くて良いですよ。退屈凌ぎにちょうどいい。
私の開幕まではまだ調整に時間がかかりそうですしね。
暇潰しにはもってこいです。
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#420『幸福度』
自分が獲得した環境やら個性やらを投入し、がむしゃらに精一杯生きる。
ああ、なんて素晴らしく、美しいことだ。
ゲームを攻略するように、僕はエンディングを目指している。
エンディングとは何か?
それはもちろん、面白いことをし尽くして、満足だと笑って死ぬこと。
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#421『アイデンティティ〈放棄〉』
羽が捥げたからって、鳥が鳥でなくなることはない。
だからといって、鳥は明日を諳んじることはできない。
けれど、思考しなくなった人間は、人間と呼べるかしら?
人造人間の方がよほど人間らしいかもしれないわね?
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#422『志合わせ者』
もういいよ、不幸自慢はさ。
君だって、本当は不幸に甘んじてないで、幸せになりたいんだろう?
ぼくだってそうだよ。
不幸者どうし、さいごのさいごにちょっとだけ、足掻いてみようよ。
どうせ終わらせるだけなら、それくらいいいだろ。
じゃあ、まずはなにする?
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#423『高塔へ』
いつまで神の真似事をしているつもり?
そんな高尚な生き物じゃないでしょう。
理性ある獣風情が、高みを目指すなんて烏滸がましい。
梯子も、地に着くほど長い髪もない塔を、あなたはどう登るつもりですか?
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#424『すききらい』
好きなものも嫌いなものもないのなら、一緒に探しに行こう。
快不快があること、愛憎があること、それってとっても人間らしくていいと思う。
あなたは一体何者になるんだろう。
あなたは、何色が好きになるかな?
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#425『ちっぽけでいとしい』
僕たちはこれでいいんだ。
不便で、脆くて、醜くて、弱くて。
だって、僕たちはかみさまにならない。
僕たちは、人間なんだ。
今も、昔も。
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#426『さあ』
「一文字変えたら面白くなる言葉あるじゃん。となりのトロロとか」
「例えの時点で面白いけど、それを超える何かこれから言える?」
「たぶん」
おいおい、本当だろうな……と不安に思いながら、溜めに溜めて奴は言い放った。
「うさぎとメカ」
「……それどっち勝つの?」
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#427『轢殺』
我慢し続けたから、私の背は曲がってしまったのだろうか。
耐え忍んだから、私の性根は腐ってしまったのだろうか。
軋んでいるのは、本当に背骨なのだろうか。
軋んでいるのは、本当は心ではないだろうか。
今となっては、もうわからない。
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#428『やさしくされたい』
どこまででも逃げたくて、何もかもを棄てたくて。
それをすべて「しにたい」に包括している。
死を軽んじてごめんなさい。でも、そうじゃないとやっていけない人間だっているんだ。
生に見捨てられた僕らは、何でも貶すことができてしまうから。
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#429『待ってるから。』
人の顔をまともに見れなくなったの、いつからだったか覚えてる?
きみは本当に他人が怖いんだね。
ねえ、おれの顔、どんな顔だったか、おぼえてる?
ああ、いいよ。無理に見ようとしなくても。
いつか、顔を合わせて話そうね。
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#430『門前より』
僕らを受け入れてくれる地獄があること。
慰めをもらうことなんかよりも、よっぽど安心材料になる。
願わくば、地獄への道が、善意なんかで舗装されていませんように。
もう一滴たりとも、善意なんかを浴びたくないのだ。
無為な期待など、するものか。
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#431『無常』
僕たちの信じているものも、僕たちの操る言葉も、すべてが有限で、不変なんかではなくて。
勇壮とやってくる波に勝手に攫われてしまって。
それでも、何か、手放せないもののために。
僕たちは今でも、一見すると無意味な言葉を紡いでいる。
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#432『大切、裏切』
自分が気にしていなくても、褒められたものは大切に手入れしていこうと思うのです。
褒めるという行為は、大抵は自分にないものを指して行われるはずです。
褒められたものを、私自身が蔑ろにしてしまうのは、その気持ちを裏切ることのような気がしてならないのです。
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#433『此処に在る証』
あの光を目指して羽ばたこう。
自分が蛾だって構わない。あの光が、本当は太陽だって構わない。
光に焦がれて、焼け落ちることだって厭うもんか。
あの光に、触れたいのだ。
あの光に、知ってもらいたい。
此処にいた、ちっぽけな人間のことを。
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#434『願い星』
これが、君の見ていた世界か。
ぼやけていて、滲んでいて。
君はずっと、涙を堪えて、世界を見ていたんだね。
でもさ。
面白くなくたっていい、無愛想だっていい、泣き虫だっていいから。
君には、生きててほしいんだ。
身勝手で、ごめんね。
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#435『獣の居所』
この怒りが、虫などという生易しいもので言い表せるものか。
これは炎だ。獣だ。
何もかもを燃やし尽くし、焼け爛れた己はもはや獣だ。
他人と見分けがつかなくなったとしても、頼むから、姉妹たちだけには牙を剥かないでくれ。
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#436『私読』
文字は、私の饒舌な口である。
小説は、自己紹介に相応しい。
自分がどういう存在なのか定義づけられない私は、人からの想像に頼っている。
誰と話すことができなくとも、私は誰かの書いた小説を、今日も読んでいる。
読むと書いて、話す。
こうして、私は辛うじて人間の最低条件を満たしている。
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#437『待ちぼうけ』
たくさんたくさん、言いたいことがあって。
でも、すぐには言葉にならなくて。
だからこうして、口を閉ざすほかない。
わかってもらえるわけなんてないし。
自分の言葉なんて誰も待ってなんかない。
ただ、ずっと。
自分の言葉を、他の誰でもない自分自身が待っているだけ。
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#438『遺書』
これは、遺書だ。
生きて、生きて、そして死ぬために、こんなものを書いている。
自分の名前を好きにも嫌いにもなれなかった私は、この名前で生きていた。この名前でいる間だけが、満足に生きていると胸を張って言えた。
私は、人生を書ききれるのだろうか。
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#439『石』
目に見えない、触れられもしないものを動かすため、我々は命を削る。
傍から見れば、滑稽で現実を知らない空想家に過ぎないのだろう。
だが、絵空事で救われることは絶対にある。
この意志を継承し続ける者も、文明も、絶たれてはならないのだ。
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#440『迷惑料』
こんな僕でも、生きてていいですか。
誰の役にも立てなくて、この世に存在している価値なんてない僕に。
こんな僕にも、生きてていいなんて言えますか。
僕がいるメリットなんかよりも、他の人が被る迷惑の量が多くても。
こんな僕なんかが、生きてていいわけないのに。
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#441『ResetButton』
ふと、何の脈絡もないけれど、叫び出したい衝動に駆られて。
こんな汚らしい身体も、重力も振り捨てて、透明な電波に変わり果てたい。
この手にあるものすべて投げ出したい。生まれ変わるように、すべてをリセットしたい。
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#442『老いてもうつくしい、花となれ』
彼女は、花になった。
その桃色は、いつまでも僕の記憶に刻み込まれている。それが数十年も前のことだったとしても。
花弁に皺があっても、色がくすんでしまっても、それでもなお、彼女はうつくしかった。
着飾る必要も、隠す必要もないほど。
彼女は、うつくしかったのだ。
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#443『絶対至上主義』
いつから勝ち負けでしか物事を見ることができなくなったんだろう。
数字が絶対王政となってしまってから、僕らの日常は壊されていった。
言葉は自身を取り繕うものでしかなくなり、それでも僕らはありのままを信じてもらうために、言葉を尽くすしかない。
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#444『守護霊』
私が私を軽んじたら、他人も軽んじるに決まっている。
私のことは、私が守らなくちゃ。
誰も私のことを好いてくれなくても、嫌われてばかりでも。
私だけは、私から離れたりしない。
ずっと傍にいるからね。
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#445『おしえて』
正常な人間ってどうやったらなれるの?
声のトーンは?
話しかたは?
逆に何をしたら異常呼ばわりされるの?
誰が決めるの?
決められるの?
…………。
ねぇ、僕ってセイジョウなの?
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#446『猿になる』
他人なんか見なければ、自分を嫌いになることはないから。
だから、抗して瞑目している。
目に突き刺さる化けの皮も、一様の仮面も、何もかも。
見を封じたのなら、あとは二つ。
耳を削ぎ、口に戸を立てたのなら、完璧だ。
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#447『SPAM』
思考もなく、思想もなく。
感情もない空気人形はここを去れ。
他人を不快にさせるだけでは飽き足らず、増殖までするとは一体何事か。
青空へ羽ばたけなくとも、古き良き籠の中だけは手放したくはなかったが。
いつからこの古巣はこんなにも居心地が悪くなってしまったのか。
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#448『+赤』
空の先、もっと果ての宇宙へ。
一片の欠けもなく、家族を揃えよう。
数多の艱難辛苦を乗り越え、ただひとつのハッピーエンドに至り。
三千世界の隅々を見守ろう。
いつか、私たちになる星々を。
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#449『何様?』
人様の日常を我が物顔で奪い稼ぐ奴の気が知れない。
現実だけでなく、ここにすら安息の地がなくなってしまったのなら、迷える小鳥たちはどこを止まり木にすればいい。
見えるものに恐怖し、見えないものにも恐怖し。
安寧は、遥か遠く。
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#450『見聞言』
青い他人は見ないようにしよう。
親愛なる者の言の葉だけに耳を傾けていれば、耳障りなことはない。
聞こえのいい嘘も、誰かに拾ってほしかった言葉も、すべて発信しなければいい。
もう、そうでもしないとやっていられないんだ、こんな生きづらくなってしまった海なんて。
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#451『虹の麓』
人を傷つけることに罪悪を感じない人間がいていいはずがない。
我々が定めた人間が、そんな動物であってはならない。
稲穂を刈るように、命を刈り取れ。
蔓延る悪は摘み取る。残すのは良き種だけだ。
〈よりよき繁栄〉への、犠牲による架け橋を。
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#452『彼岸より志願を』
産まれてきたことも、産まれた環境も悪くなかった。
悪いのは、俺だ。
俺が悪かったんだ。他の誰でもない。俺が、産まれてきたことが。
だからさ、もうゆるしてくれよ。
こんな生き地獄を味わわせることないだろ。
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#453『ありきたる』
腐敗を待つ君にどんな言葉を投げかけたとしても、君が起き上がることがないなんてわかりきっている。
その言葉には何ら新鮮味がない。いつもどこかで、誰かがこうして嘆いている。泣き縋っている。
腐り落ちた言葉の先に、君の命が実らないだろうか。
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#454『代わらないひと』
君が生きて帰ってくるまで、僕はずっと変わらないからね。
身長も伸びない。声も変わらない。髪型だってそのまま。
僕は、
僕だけは、ずっと君の知っている僕のままだよ。
だってそうじゃないか。
君だけが時間を失うなんて不公平だよ。
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#455『共依存』
誰かの悲しみを取り除けるほど、きみはやさしくなれないもんね。
それだって構わないよ。
ぼくは、そんな中途半端なきみがすきなんだ。
だからね、完全になんてならないで。
不完全なきみのままで。
そのまんまのきみでいいんだよ。
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#456『智による者』
人は自然と創造に向く生き物のようです。
しかしながら、創造に向かない者もおり、その者たちは余暇を頭を空にすることで潰しているようでした。
その者たちを有効活用する術を、私は長らく思考していました。
そして、ようやく辿り着いたのです。
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#457『カルペ』
たかが一時の美しさのためだけに、花に水がやれますか。
実を結ばない花に水をやることに何の意味がありますか。
何ら成果の出ないことに取り組んで、あなたの人生の時間を無為にしますか。
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#458『リスタート』
為す術なく、この世界は終わりを迎える。
だが、最後の最後に人々は美しさに涙を流した。
自分たちが顧みることのなかった母なる地球。
自らが利便と繁栄のために切り捨てた景色。
それが、ほんのわずかの猶予として、人々に再出発の機会が与えられた。
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#459『誰がために鐘は鳴る』
ころすって何。
どうして、そんな短絡的な方法でないと向き合えないの。
あなたたちは、どうして言葉を話せるようになったの。
誰を生かして、誰を殺すかなんて、誰が決めたの。
命の価値を、誰が推し量れるというの。
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#460『おいで』
我々を甘んじるのなら、我々もお前を甘んじよう。
その腐った欲望、大変結構なことだ。
お主を、死の国へ招待しよう。
そこでなら、もう我々を恐れる必要はない。
生の恐怖からも解放される。
この災厄を産み落としてくれた対価には相応しいだろう?
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#461『幸願夢知』
究極的には他人だけれど、どこかで、何かでは繋がっているあなたへ。
顔も名前も知らない他人がどうなっても、悲しいと思うことはできないけれど。
ほんの少しでも繋がりがあるのなら、もう他人と呼べる気はしなくて。
だからこそ、幸せでいてほしいと願うばかりなのです。
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