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鼓動140  作者: 楪葉夢芽
13/17

Ⅻ #283〜323『前人未到のハッピーエンドへ。』(2025.3.27〜5.14)

#283『鼓動』



 私の思考は誰にもわからない。

 私の心は誰にも読めない。

 私の考えていることは、私しか知らない。

 私が言葉にしないと、存在しないことと同義だ。

 生き急ぐように、死に急ぐように、手を動かした。

 彼らと彼女らの鼓動は、まだ私しか知らない。



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#284『夏が死んだ。』



 その季節は、宿題が山のように積んであった。

 いつまで経っても減らない山は、夏の終わりになるにつれ、ようやく崩されていく。

 それが、その年はやけに計画的に崩されていった。それだけ成長したのかと思った。

 思いたかったのに。

 本当に崩れたのは、私たちの日常だった。



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#285『ままならない』



 自分がどうしようもなく上手く生きられないんだと悟った。

 涙すらも出てこなかった。

 神様からも、自分からも見捨てられているみたいだった。

 幸せになりたいだとか、欲張ったことでもないのに。

 こんなことすら、叶えてはくれないのか。



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#286『ウィンドウショッピング』



 歌詞を噛み締めるように歌い、死にたがりの僕を殺すんだ。

 歌詞をナイフに代えて、今日も人殺しの気分で街を歩こう。

 誰も人殺しになりませんように。ちぐはぐな思いを込めて、この歌を録る。

 飾りつけて、あとはショーウィンドウに並べるだけだ。



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#287『System’s GOD』



 規則も法律も、正義ではない。

 あれらは社会を円滑に回すためのもの。言わば、機構だ。そこを履き違えるから、自らを正義だと勘違いする奴らが出てくるのだ。

 あれらは、此処に座す神と何ら変わらないというのに。

 意思などまるでない、ただのシステムだ。



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#288『月夜』



 夜の海でなければ、月は海に反射できない。

 夜でなければ、それらふたつは同居できない。

 であれば、それを成立させるには夜をつくりあげればいい。

 空を黒く塗り潰せば。

 それで、夜空のできあがり。

 月と海は、再び邂逅する。



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#289『さらば、哀愁よ』



 時代の転換期、言い表せない寂しさを覚えるのは何故だろう。

 命無き声が嫌いではないのに、人間の声しかなかった箱からそれが聞こえてくるのは違和感があり、異世界に迷い込んだ気がする。

 こんな感傷、その転換期に立ち会わなければ、なんとも思わないのだろうが。


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#290『過ぎ去りし過去』



 過つことは良いことではない。

 だが、それが悪となるかは本人次第だ。

 過ちを認め、反省し、同じ過ちを繰り返すことがないように。

 ただの一度たりとも過ちが赦されないのなら、過去なんてものは必要ないのだから。



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#291『滅望』



 自分のことすら理解してないくせに、随分お偉い言葉が出てくるものだ。

 自分のことすら断じられないのに、どうして他人のことをとやかく言えるのだろう。

 都合のいいときばかりすり寄ってきて、本当に気色悪いイキモノだ。

 はやく破滅しないかな。



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#292『罪には報いを、鉄潰(てっつい)を』



 これから、まともになろう。

 過去は変えられなくとも、これからは変えられる。

 許されることではないことはわかっているが、罪を償うために、この生涯を捧げ──。

「罪人に、未来があるとでも?」

 そう、愚かなことを考えた頭は、己の犯した罪に潰された。



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#293『明日はきっと晴れるから』



 大丈夫。前に倣っていれば、昔に沿っていれば、間違えることはないから。

 大丈夫大丈夫。これまでだって大丈夫だったんだから、明日だってきっと大丈夫。

 大丈夫大丈夫大丈夫。これからもみんなと一緒になれる。

 ね。

 大丈夫だって、あなた、誓ったのに。



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#294『櫻毒』



 桜の樹の下には──と言うように、桜の美しさには理由があるのだ。

 思い出で咲く桜は大層美しいだろうと、卒業アルバムを埋めた。その年の桜は一等美しく咲いた。

 きみは「桜になりたい」と言った。だから、そうした。

 以来、僕の前には君が現れるようになった。



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#295『星鳥』



 俺は大人になっても色が変わらないまま。痛みがなければ、成長はできないということか。

 それでも俺は、初めて心を動かされたんだ。空を動かない星に。

 とは言っても、人間の尺度ではほとんど動いていないように見えるだけだ。

 星からすれば、俺だって少年だろうが大人だろうが、変わっていないように見えるんだろうから。



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#296『生傷だらけの心臓を』



 真っ当に生きてみたい。

 後ろめたい思いもせずに、堂々と前を向いて。

 幸せばかりじゃなくたって構わないから、生きている実感があってほしい。

 繰り返しの日々に恐怖するのは嫌なんだ。

 生傷だらけだろうと、この心臓を突き動かさなきゃ。



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#297『祝呪(しゅくじゅ)



 あなたが他人の不幸を満足に祝えるようになって、私は本当に安心したんですよ。

 あなたはそれぐらいじゃないと割に合いませんから。

 思う存分、他人を呪ってください。

 あなたはもう死んでしまったんですから、それくらいは許されていいはずでしょう?



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#298『死亡動機』



 恵まれているから死を望んではいけないのか?

 死が近くにある者しか死を願ってはいけないか?

 どうして、恵まれているのに何も為せないから死にたいと思うことに辿り着かない?

 この世界では死すらも平等ではない。死を願うことすら許されない。

 できちゃったで終わるソレと何ら変わりのない死を。



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#299『あの青い春』



 思い出のアルバムというのは、その厚さよりも中身が充実しているかどうかなのだろう。

 本当に他愛もないことばかりだっだが、振り返ってみるといつも笑っていた。

 内容を思い出せなくとも、とにかく笑っていたことだけは思い出せる。

 思い出なんて、そんなものだ。



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#300『罪架』



 全ての人間は等しく区別され、差別され生きる。

 無意識だろうと、意識的だろうと、そこに罪はないのだ。

 悪いのは……すべて、あの精神構造と、それを認可した神に欠陥がある。

 そうでなければ……そうでないのなら、人間は生まれながらに



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#301『君の死とは。』



 あんなにも馬鹿騒ぎした君は、今ではこんなにも小さくなってしまった。

 実感がないまま、君を送り出したけれど、数日経ってようやく君がいないことを思い知った。

 いつまで経っても既読がつかないんだから。

 …………なんで、君は死んだんだろうなぁ。



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#302『文字化け』



 俺は小説家なんかじゃない。物書きなんだ。

 書いてない俺には何の価値もない。

 書かないなら死んじまえ。

 死ぬくらいなら書け。

 そんな物語ぶって生きるんだ。

 いつか、文化す(ばけ)るために。

 せめて文字の上では最強の心算(こころづもり)で。



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#303『有形の命、無形の心』



 形あるものは一切が老い、朽ち果てる。

 形なきものは一切が瞬く間に風化する。

 有形だろうと、無形だろうと。

 この手にある温もりを、いつまで大事に抱えていけるだろう。

 この胸の内にある悲しみを、誰が知ってくれているのだろう。

 私自身もわからないのに。



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#304『習慣病』



 痛みを感じていないのに、習慣のように苦痛を口にする自分に何故か笑えてきた。

 身体以上に心が痛ければ、なんにも感じないんだ。

 この心の痛みが、表出してしまえばいいのにな。

 ああ、でもそんなことになったら、自分はすぐに死んでしまうか。



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#305『暴闘』



 我々はいま、どこに向かっているのだろう。

 競争にも、闘争にも飽き、恐怖心から道を転がり落ちる始末。

 いつから隣人は愛するものではなく、どうしようもなく恐れるものになってしまったのか。

 これだから、我々は空の青さを知れないのだ。



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#306『Overseas』



 この世界に、旧い命は私だけとなった。

 正しくない命の巣窟だが、これからの時代はあれらが正しい命になる。

 もう、皆が海に潜った。誰一人として浮上しようとしない、深海へ。

 ここに、もう人間はいない。

 ここで、私は眠りに就くのだ。



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#307『被幸福者』



 誰かを幸福にできる者というのは、そういう星の許に生まれてきているのさ。少なくとも君じゃあない。

 そういう運命なんだ。諦めた方が楽だぞ?

 まあ、そんなわけで。

 そこを退いてくれるかな?

 そこで足掻いていたって虚しいだけだろう?

 真の幸せ者のお通りだからさ。



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#308『不完全完成体』



 あなたが死んで、みんないなくなって、私は空っぽになったのに、どういうわけか憎悪だけは湧いてきたの。

 憎くて憎くて、気が狂ってしまいそう!

 だからね、せめてもの餞として、あなたがやりたかったことをやろうと思って。

 私たちに由縁する者を皆殺しにしよう。

 天国で、あなたも少しは溜飲が下がると思うから。



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#309『忘れてしまえ』



 他人に僕のことを忘れてほしいし、僕にも僕自身のことを忘れてほしい。

 僕のことは忘れて、何にも捕らわれずに生きてほしい。

 僕なんて名乗らなくてもいいし、好きな音楽も、好きな食べ物も、自分で新しく決めたっていい。

 お願いだから、僕のことは忘れてしまえ。



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#310『死の輪舞曲(ロンド)



 目まぐるしく世界は回るんですから、私たちだって廻っていましょう?

 いつか、泰平の世が訪れることを信じて。

 今は、ここで死合いましょう。

 死が私たちを分かつまで。

 分たれても、すぐに会えますけどね?

 巡り会えたら、今度こそは。

 あの言葉の続きをきかせて。



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#311『救信』



 僕は、他の誰でもない、僕を救ける言葉を紡いでいる。

 あの日の僕の伸ばした手を、取り零さないように。

 もしも、僕が。

 僕が救われたように、僕も誰かを救えるだろうか。

 なんて、傲慢だろうか。

 傲慢だったとしても、僕は僕の信じる道を歩みたいんだ。



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#312『人外の助言』



 人間(私たち)人間(他人)を裁く権利も資格もないわ。

 私たちは大人しく、神の裁きを待つのがいいのよ。

 どうせ何もできやしないし、できたとしても的外れの見当違い。

 一つたりとも正しいことができないのなら、せめて判決を震えて待ちましょうね。



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#313『星見る日々、』



 ずっとずっと、歩き続けた。

 時にはがむしゃらに走り、時には休憩しながらも、歩むことをやめなかった。

 それでも星は遥か遠く、その輝きすらも見えない。

 歩くのをやめたくもなるけれど。

 別の星が瞬くのを見て、立ち止まってはいられない。

 だから、まだ歩く。



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#314『不変不動』



 何が変わった? どこが変わった?

 昔の僕とは何が違う?

 僕は変わった気も、変えた気もないけれど、

 「昔の方が良かった」って言うなら、言えるだろ?

 なあ。

 …………変わったのは、君の方じゃないか。

 それでも。

 僕は変わらず、君の親友だ。



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#315『お気をつけて』



 花が枯れる現場に居合わせただけで犯人扱いですか。

 そんなことを言い出したら、この世界は犯罪者で満ちるでしょうね。

 ありもしない罪をでっちあげて、処刑台に上げるのは自由ですけどね。

 いつまでも裁く側にいられると思ったら大間違いですよ。

 簡単に被害者と加害者は入れ替わるんですから。



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#316『天才になる方法』



 才能のあるなしなんてぶっちゃけ自意識の問題だからさ、自分で才能あるって言っちゃえばそれだけのことなんだ。

 あとは、才能があるように見せていけばいい。

 虚勢を自信に変えて、自身を天才に仕立て上げるんだ。

 気張っていけよ。



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#317『ずっと、』



 ほんっとうにひとを頼るってことを知らないんだなあ。

 荷物がありすぎて立てなくなってるじゃん。

 ほら、まだ私は背負えるよ。

 どっちに進めばいいかわからくなったら、どっちも行っちゃえばいいんだよ。

 間違えたってまた戻ってくればいいだけなんだし。



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#318『(つづ)め』



 自らを誇り、大事に愛していくように。

 けれど、決して驕らないように。

 あなたはひとりだけしかいないけれど、その上位互換はたくさんいるから、替えの効く人間になっては駄目。

 そして、誰からも恨まれていい人間にならないように。

 天使()との約束よ?



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#319『旧命題』



 誰にも見られていないこんな文字列、この海に漂わせておく必要があるの?

 それなら、なくても同じじゃないの。

 ただでさえ濁ってしまっているのだから、こんなものどんどん消していかないと。

 私が終わる前に、せめて透明な海に回帰させないといけないから。



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#320『物語化』



 私はこれっぽっちも誇れる人間じゃないのに、私はほとんど諦めていたのに、こうして私を見捨てないで、待っていてくれるみんながいて。

 ちょっとだけ、あの頃に戻って、なんて。

 できないことだと、わかってはいるけど。

 せめてあの頃のみんなを、書き留めておこう。

 みんなは知らない、確かにあった大切な思い出を。


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#321『古馴染み』



 くだらないことを「くだらない」と。

 つまらないことを「つまらない」と。

 苛烈に果断に切り捨てる。

 そんな君が好きだったんだぜ、私は。

 今が嫌いなわけじゃないけどさ。

 その口が真一文字に結ばれたままなんて、全然似合わないよ。

 だから。

 私がこじ開けてやるよ。



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#322『明日は、きっと。』



 明日の私は、朝五時に起きて散歩に行って、家族の朝ごはんを作るの。

 そのあとに掃除、洗濯。それが終わり次第、読書をして、今度はお昼ご飯を作って。

 そうしてまた洗濯機がぐるぐる回るのを見て、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。

 理想通りに上手くいかない、できない自分に眩暈がして。

 ああ、私ってどうしようもない人間だなって。

 死にたくなるんです。



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#323『前人未到のハッピーエンドへ。』



 ありとあらゆる世界で、ありたけの不幸を得たのだ。

 ならば、あとはとことん幸福になる以外ないだろう。

 そのために、私たちは何度だって命を散らしてきたのだ。

 すべてを繋げ、結びつける。

 私たちの手のひらが、そうであったように。

 この手を、絶対に離さない。



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