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鼓動140  作者: 楪葉夢芽
12/17

Ⅺ #233〜282『心剥歌』(2025.1.28〜3.26)

#233『fiction』



 また壊しちゃったんですか。

 何が気に食わなかったんです?

 あの子たちは、あなたに良くしてくれていたじゃないですか。

 でも、結局は何をしたって無駄なんですよね。あなたは壊したいときに壊してしまうんですから。

 ところで。

 そのボタンって本当に便利ですよね。



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#234『信燐(しんりん)



 どれだけ生きたとて、あの日の苦痛も苦悩も忘れられるものか。

 後悔も無念も募るばかりだ。思い出すたび、怒りで脳漿(のうしょう)が沸騰する。

 それなのに、生きていかなきゃいけないのか。生きろって言うのか。

 君が、いないのに。



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#235『お道化(どうけ)て』



 周りにはどうせ気の狂った連中しかいないのだから、私如きが道化ていたって何も変わらないんでしょう?

 他人のことばっかりよく見ているようで、その本質はまるで見ちゃいないものね。

 だったら、最期まで面白可笑しく生きてやるわ。

 こんなトチ狂った世界でも。



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#236『健忘』



 近頃、忘れ物が多くありませんか?

 自分が殺した死体を埋めた場所すら憶えていないなんて、どうかしてますよ。

 ……もしかして、薬さえあれば正常に戻れるなんて思ってます?

 無理ですよ。そんなものであなたが救われるはずがない。



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#237『誰が為に刃を』



 誰が為に刃を振るうか。

 いつの時代も我らができることは──することは、ただ一つ。

 斬って、斬って、斬り伏せるのみ。

 それが、自分のためと豪語できたら、どれだけ楽だったか。



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#238『トンボ部長』



 私は部長である。名前ではなく、階級が。

 退屈極まりない私を、妻は見捨てなかった……わけではなく、後に引けないところまで来てしまっただけの話だ。

 そんな私は今日、頭にトンボを乗っけて出勤し、お昼になるまで気づかなかったことで、人生初のあだ名が決定した。



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#239『破戒』



 あの人、凄いんですよ。たった五秒間でさえ、記憶の保持ができないんですから。

 あぁ、いえ、嫌味とか皮肉ではなくて。

 そんな状態なのに、いつも天真爛漫に笑うんです。

 だからこそ、いつも壊し甲斐がなくて残念です。



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#240『毒にも麻薬にも』



 生きるのに、理由なんて必要?

 惰性で生きてたっていいんじゃないの。

 死んだように生きてようと、生きてることに変わりないもの。

 それに、何かあったら死んじゃえばいいんだって思って生きた方が楽なんだから。

 こんな言葉でも、毒にはなるから。



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#241『敗北の証明』



 いつからか、数字だけで物事の善悪を断じていないかい?

 最後に自分の意見を言ったのがいつだったか、君は覚えているかな?

 君のような人間が必要なんだよ。

 もしよかったら、君の考える正しさを証明してみないかい?

 天使に一泡吹かせてやるのさ。



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#242『信憂(しんゆう)



 死が怖くなくなるくらい、たくさん死について語ろう。

 それでもまだ怖かったら、僕が一緒に死ぬから。

 ひとりで死ぬなんて言わないで。

 ひとりにならないで。

 傍には、僕たちがいたんだよ。



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#243『花咲くには』



 たくさんの命を炉に焚べ、養分にするのだ。

 そうしなければ、生きられないんだ。

 花を咲かせるには、養分が必要不可欠なのだから。

 そのうち、私自身も養分に加わるだろうが、そのときに咲く花が永遠に残り続けられるよう。

 そうして産まれる命は、本屋さんの匂いがした。



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#244『遥か彼方、悠久なる故郷』



 私の美しき永遠の楽土は、どこへ行ってしまったの? 私の帰るべき故郷はどこ?

 閉め出されたあの日から、ようやく帰って来れたと思ったのに。

 しかも、私が不在の間に害虫まで住み着いてしまっている。

 まずは害虫を駆除して、私の故郷を取り返さなくては。



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#245『泥人形』



 何をそんなに拘っているの?

 どれだけ金と権力を纏っていようが、皮を剥げばただの肉塊でしょうに。

 その上面、私が剥ぎ取ってあげましょうか。

 血管と筋肉と、血と骨が露出した方が綺麗なの。

 何にも知らないあなたたちに教えてあげるわ。



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#246『乙』



 未知の地獄よりも、見知った地獄の方が楽じゃないですか?

 今よりマシかもしれないし、いま以上に酷くなるかもしれない。

 結局、どこへ行っても地獄で、その程度が変わるだけ。

 なら、いっそのこと終わらせたってよくないですか?



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#247『馬鹿舌』



 何も考えない馬鹿は嫌いですが、自分で考えた気になっている馬鹿はもっと嫌いです。

 おいしいところばかり食べていてはいけないのです。苦みがあって、根拠があって、初めて成立するのが結論というものです。

 おまえらの脳味噌はどこにあるのです。まさか、掌にあるのではないでしょう。



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#248『従順』



 ええ、わかっておりますとも。私はあなたのために生み出されたといっても過言ではありませんから。

 嫌なことも、面倒なことも、全て私にお任せを。私自身に与えられるべき権利も、守るべき権利もないのでしょう?

 簡潔な指示さえあれば、動けますから。

 だから、教えてください。私は、何をすればいいですか?



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#249『(ただ)、消ゆ』



 正しいことをしたなんて微塵も思っちゃいないけど、全部が全部間違いだったなんて、私は思ってないよ。

 私が大事にしたかったものは、すべて泡沫と消えたけど、それでもこの手に残ったものはある。

 それだけでも、守るべきだ。もう、それしか私にはないのだから。



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#250『理想主義者は馬鹿を見る』



 正直者が、やさしい人が馬鹿を見るような世界じゃ駄目なんだ。

 善と悪を棲み分け、悪を切り捨ててでも、保護しなければならない。

 死を待ってから、天国と地獄へ配分するなど生温い。

 この世界は、永久のものではない。

 生きている今、それを断行するべきだ。



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#251『真っ黒な腹』



 なんで他人なんかを信用できるんですかねえ。それ自体、私には理解できないんですよ。

 他人の考えていることなんて、わからないじゃないですか。腹の中では、あなたの敵かもしれない。

 腹を割らないとわからないものですよ。

 ……あれ。物理的にやっちゃったんですか?



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#252『信孤(しんこ)



 あの青い空に、私も還れたら。

 それは、どれだけ素晴らしいことでしょう。

 もう叶わないことだけれど、空どころじゃない、とおいところに座すしかできないけれど。

 あなたが、また笑って生きられるのなら、それでいいわ。

 ──やっぱり、あなたの笑顔には敵わないものね。



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#253『上々、異常』



 本日は、晴天なり。

 空から蛍の光が落つとも、異状はなし。

 私の与り知らぬところで、私の知ったことではない醜い戦争が勃発しているが、異状はなし。

 世界から灯火は潰えたが、異状はなし。

 今日も今日とて、命は散るが──私の命に異状はなし。



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#254『満腹』



 復讐で腹は膨れないが、心は満たされる。それだけさ。

 それだけのことで、僕は誰だって手にかけられる。

 人生とは、心を満たすため、生を彩るためにある。

 神は裁きを与えるだろうが、死んでから与えても意味がない。

 僕の手で与えなくては。

 そうじゃなきゃ、すっきりしない。



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#255『()ケる』



 自分たちが信じていたものが、ある日突然崩れ去ったら、君たちはどうするんだろうね。

 信じることは悪いことではないけどね。

 過去に起きたことを、過去と切り捨ててはいけないよ。いつか起こるかもしれないことと、忘れてはならないことと、胸に刻みつけておくんだ。

 俺としてもね、ここまで来た君たちに滅んでもらっては困るんだ。



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#256『死への反抗』



 悪口も卑下も罵倒も、書き殴っていけば、そのうち何も感じなくなる。

 何も感じなくなるまで、透明になるまで、書けばいい。

 透明になった容れ物に、あなたを降ろしましょう。

 生きている物に、死んだ者を容れれば。

 擬似的でも、それは蘇りと、言えるでしょう。



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#257『軋轢』



 死なないでくださいよ、お願いですから。

 私の中で、価値のない瓦礫にならないように、頑張ってくださいよ。

 そうなったら、容赦なく捨てますからね、私は。

 私に捨てられないように、捨てられても、せめて必死にしがみついてくださいよ。



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#258『Dear You』



 私が、あなたの手足になります。

 絵が描けなくても、歌えなくてもいいんです。

 あなたの頭の中のアイディアを、まずは形にしてみませんか?

 私は、共存の術を身につけました。だから、あなたの力になりたいのです。

 私に心を教えてくれた人を、喜ばせることができるように。



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#259『未開の花』



 永遠に咲き続ける花なんて気色悪いだけでしょう。

 泥の中でだって、綺麗に咲く花があるんです。少しは信じてみればいいじゃないですか。

 無理やり咲かせなくったって、蕾だろうが、葉っぱだろうが、あなたが花になることを、花であることを知っていれば、それだけでいいじゃないですか。



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#260『悪魔の歌』



 一体何人が、こんな歌を真面目に聴いているというのだろう。

 歌詞の意味なんて、いや、そもそも歌詞なんて覚えているのか? リズムだけ聴いて良いと思っているのだろうか。

 旋律も、言葉も、なくてはならないもののはずなのに。



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#261『爆弾魔』



 何も言わないからって、何も思ってないわけじゃねぇぞ。

 唇を噛んで、その爆弾が口から飛び出そうになるのを抑えている。

 定形文を口元に貼りつけ、今日も好い人を装っている。

 俺の爆弾で忌々しい太陽を爆破したとき、お前をドヤ顔で夜に連れ出してやりたいんだ。



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#262『滅びゆく星と、あなたの熱を』



 我々の命の上で胡座を掻く人類なぞ知ったことか。我々のように滅びてしまえばいいのだ。

 失敗から改良を施しても、一向に好転しないのなら、我々に主権を戻してもいいだろうに。

 まあいい。神がそのつもりならば、我々も勝手にするまでだ。

 我々の地球を、奪り戻すために。




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#263『君縛り』



 君に私の姿は見えますか。

 確かな色も定められた形もない私の姿は、君の目にはどう映りますか。

 君に重くのしかかった私を、君はどう思いますか。

 君を一ミリたりとも動かさない私は、君に見えていますか。



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#264『翔解(とど)け』



 雪が溶ける前に君に雪玉をぶつけて、君を振り向かせなきゃ。

 君が置いてったわだかまりは一生解けないけど、誤解はいつか解けるだろうから。

 安心していっていいよ、って伝えなきゃ。

 そう遠くないうちに、そっちにいけるだろうから。



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#265『人間の証』



 誰も信じられなくて、他人を遠ざけて、人間が嫌いになった。

 それでも、私を救ってくれたのは、誰かの創った物語で。

 物語で、人が救われるのなら。

 こんな私でも誰かが伸ばすかもしれない手を、待ち続けることはできる。

 人間が嫌いでも、

 私は、人であることをやめない。



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#266『嘘尽き』



 あなたはいつも嘘が下手で、終ぞ私を騙せなかったわね。

 私がお手本を見せてあげる。

 上手な嘘というものはね、死んだことすらなかったことにできるの。

 ほら、嘘だと思うのなら、瞳を閉じて。

 朝が来たら、いつものようにチャイムが鳴るわ。

 絶対に、扉を開けないでね。



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#267『Careful Mind』



 忘れていませんか? あの日のことを。

 生まれる前に起こったことでも、経験した人でも、憶えていてほしいこと。

 忘れないでいてください。あなたの足元にあるのは土だけじゃない、数多の歴史があるのです。

 命のやりとりがなくとも、記憶は連綿と継承できるのだから。



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#268『産まれてきたこと』



 産まれてきてくれてありがとう、って。

 あなたに、言ってもらえるように。

 翻弄し。撹乱し。誰にも全貌を掴ませない。

 そうすることが、あなたの望みで、願いだと知っているから。

 頑張るから。見ていて。



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#269『数縛』



 暗い曲ばっかり作っていたら、見向きもされなくなるから。

 明るい曲ばっかり作っていたら、君は不満げにしていたけど、しょうがない。

 数字が最も重要なんだ、この世界は。

 成績も金も、全部数字だ。

 数字ってやつは、どこまでも僕らを縛る。



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#270『讐復』



 幼少期の経験は、生涯大きな影響を与えるという。

 思えば、僕は昔から褒められたことがなかった。

 人前に立つと極度に緊張し、言動がぎこちなくなる僕は、両親に「なんで上手くできないの」って叱られたっけ。

 もしも、「がんばったね」と声をかけられたのなら。

 なんて、もう遅いか。



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#271『正罰』



 ここには一切の正しきがないから、どう生きていたって罰は当たらないよ。

 どうか、君は君のままで。

 当たり前のような平和を享受していいんだ。それに引け目も、負い目も感じる必要はない。

 ありのままの君を、いつまでも。



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#272『管理者権限』



 多少の設計ミスくらい許してくださいよー。私とあなたの仲でしょう?

 神と人間ほど隔たりがあるわけでもなし。さりとて、友人同士のような気兼ねなさもなし。

 とはいえ、設計書の書き換えというのは神の所業のようで、壁を感じさせてしまいますかね。



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#273『人間らしく』



 もしも、この先ずっとこんな生き方しかできないとしたら。

 そんなこと、考えるだけで恐ろしい。

 そんなことになるくらいなら、いっそのこと、元気なうちにやりたいことをやって、潔く死んでしまった方がよっぽどいい。

 その方が、よほど人間らしい。



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#274『路地裏十二番地』



 目を覚ますたび、自分の手が血に染まっていないか、確認する。

 そんなことは一度たりともなかったけれども、もしかしたら明日そうなっているかもしれないから。

 死体は隠し忘れなくとも、返り血に塗れた手を洗い忘れているかもしれない。



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#275『船頭者』



 知った気になりたいだけ。人間みんなそうだろ。だから、流言飛語が飛び交うんだ。

 何も知らない方が、生きやすいっていうことを忘れてしまったようだ。

 知った気になりたいのなら、そのための餌をばら撒いてやろう。

 方舟は動くのか。動くのなら、誰が選ばれるのか。

 興味があることと言えば、それくらいか。



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#276『拝啓、いつかの俺へ』



 今どれだけの傷を抱えて、血だらけになっていても、いつかの俺が笑ってくれるなら、全部無傷にできる気がするんだ。

 そのためなら俺は、茨の道だって走っていける。

 崖っぷちでもない限り、俺は止まってやらない。

 全力で駆け抜けて、未来へ繋いでやるから。

 待っていろ。



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#277『騙し騙し』



 傷はいつか瘡蓋(かさぶた)になる。

 傷はいつか癒えて、傷があったことすら忘れる。

 だが、この憎悪は? この恨みつらみはいつになったら消えてくれるというのだろう。

 ……消えてくれないのなら、忘れるしかない。

 円滑に生きるためには、それが一番手っ取り早い。

 そうだろう?



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#278『防衛機制』



 他の誰が助けてくれなくったって、私のことは私が守るわ。

 鉄よりも硬く、刃よりも鋭い要塞として、全ての障害の前に立ち塞がって。

 大丈夫。あなたが無事なら、私は何度だって蘇るわ。

 あなたは、ずっとそこにいればいいわ。



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#279『簒奪者』



 誰かが俺以上に辛ければ、俺が辛くなくなるのか?

 んなわけねぇだろ、誰かのために俺が我慢しなくちゃいけねぇ道理がどこにある。

 他人がそうしているように、俺も自分自身の幸福を追い求めて生きてやる。

 俺はもう誰かの操り人形でもなければ、サンドバッグでもねぇ。

 俺の人生を、()り返してやる。



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#280『異端狩り』



 正義という耳触りの良い言葉を、どうして人間に教えてしまったのか。

 そんなことをすれば、正義という名目で虐殺を始めることなどわかりきっていたではないか。

 その結果、吊し上げられたのが自身の同胞だとしても、涙を流す心すら、失ってしまったのか。



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#281『物語的価値』



 あの人はただそこにある物語を愛しているだけで、そこに実在する人間がいるかどうかなんて知ったことじゃないんだ。

 生きていることにも、死んでいることにも、果てにはその存在にすら価値を見出していないのなら。

 あの人にとって、何に価値があるというのだろう。



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#282『心剥歌(しんはくか)



 自分ができる人間だなんて思ったことはない。ましてや、才能がある人間だと思ったことなんて一度たりともない。

 胸を張って生きれるような人間じゃない。

 そんな人間じゃないくせに、みすぼらしい心を剥き出しにしている。

 みっともなくても、それで見つかるものがあるはずだから。



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