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贈りモノはアヤカシな許嫁!?  作者: 吉本優
東のうつけ殿

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東野と妖狐


「そうじゃな、どこから話すべきかのぅ」


 とりあえず割られた窓をダンボールで応急措置をし、現在お茶の間にて全員が爺ちゃんの話を聞く姿勢であり。

 ……俺は早く部屋に戻ってくつろぎたいのだがな。


「数男殿、お茶をお持ちしました」


「あぁ、ありがとうたかし。まずはやよい……でよいのかの? 長旅ご苦労であったの」


「いえいえ、私はただダンボールに詰められて、ここまで配達されただけですので……。それよりも今の東野家は一体どうなっているのですか? 一応母様から東野家に関する記憶は引き継いでいるのですが、私たちが知る東野家と今の東野家は全然違う気がします」


「そう思うのも無理はない。東野家はわしの馬鹿息子が当主だった時に一気に権威を失ってしまったのじゃ。愚かにも金に目が眩み、金策に走った結果が今の東野家じゃ」


「まぁ、簡単に言えば親父がギャンブルに走って、多額の借金を作り、あまつさえその借金の返済にうちの財産のほとんどを使ってしまったんだよね。だから、うちはビンボーな退魔一家てことだな。因みに親父は現場行方になっている」


「あぁ……それは何て事を……」


 やよいは頭を抱えてしまう。

 それもそうだよな、うちを頼りにして西から東にやって来たのに肝心のうちがこんな状況になっているなんて思いもしなかっただろうな。


「それが原因で他の退魔士を養うお金も無く、殆どが分家である東山家に引き抜かれてしまったのじゃ。今はわしと一二三しか東野家に退魔士はおらんのじゃ」


「因みに我は昔から東野家に世話になっていて、家事と事務処理をボランティアで手伝っているのだ」


「まぁ、昔はもっと妖がうちに居たんだけどな。流石に無給で働くのはキツイって事でたかし以外はうちを出てひっそりと仕事している奴が多いな」


 東の妖である妖人は他の妖と違って、見た目が人間そっくりな奴も多いので、人間社会に溶け込んで仕事をしている奴らがいる。逆に見た目が目立つ奴らは山などの自然の中で静かに過ごしている奴らもいる。


「ちょっと待ってください。人妖町は人間と妖が共存している地域なんですよね? 今の話を聞けば妖の皆さんは堂々と人間社会で生活をしていないんですか?」


「やよいは鋭いな。これが今の人妖町の闇って奴だな」


「うむ、我ら妖は昔こそ堂々と人前で妖たちが姿を見せていたのだが、今の人妖町はそうもいかぬのだ」


 たかしは眉をひそめながら話す。


「東野家が権威を失った後に台頭してきた東山家の考えじゃ、東山家は妖たちを快く思っておらんのじゃ。討伐はせんが、妖たちに差別を行っておるのじゃ」


 差別というのは妖たちが働ける仕事は限られていたり、住む所も決められた場所にしか住めなかったりする。


「こんな状況でも妖たちから文句を言わずに従っているって事はそれだけ争いを避けたい妖が居るってことだな。こんなのが共存だなんて反吐が出るな」


 これだから、退魔士の事が……いや、人間そのものが嫌いなんだよな。


「それに加えてこの一二三が実力もあるのにも関わらず、やる気が無く直系であるのに庚等級止まりであるから、沢山の退魔士を抱えている東山家が事実上この地をら収めているのじゃ」


「今、しれっと俺がやる気がないから東野家が落ちぶれた感じになっているて言ったよな」


「まぁ、それは数男殿の言うことに一理あるな」


 「たかし、追い打ちをかけるなよ! まぁ、俺もやる気は微塵も起きないんだけどな」


「それでも、私は東野家を信じております。私の母様が千里様の事を信じていた様に私も一二三様を信じておりますので」


「かぁー、一二三も悪よのぅ。こんな小さな子にここまで信じて貰えるなんて、この愚孫には勿体ないぐらいに良い子じゃわい」


「いや、流石に俺はロリ娘を許嫁っていうのはなぁ……」


「では、もっと大きくなれば私を許嫁と認めてくれるんですね?」


「そうだなぁ、もっと大きくなって巨乳のお姉ちゃんになったら考えてあげてもいいかな?」


 残念ながら俺のタイプは年上で甘やかしてくれるお姉さん的な人がタイプだ。

 和装ロリ妖狐娘は俺のストライクゾーンには入っていない。

 ま、後何年も先の事だと思うから、その頃にはやよいの考えも変わるだろうな。


「さて、話を戻すが、人間と妖の共存が東野家の悲願なのは間違いない。じゃが、昔も今も人間と妖の間で対立が起きておりそれが実現出来ない事もまた事実。ご先祖の千里様もそれはそれは色々考えたそうじゃ。そこで当時の十六夜乃御子をこてんぱんにした千里様は天啓を閃いたそうなのじゃ」


 確か十六夜乃御子ってめっちゃ強いって本に書いてあった気がするのだが……。

 それをこてんぱんにするご先祖様すげぇな。


『そもそも、人間と妖が共存出来ないのはお互いの事を理解していないのが原因ではないのか。お互いを理解するにはまず共に暮らすことから始めるべきである。そう、千里様は仰いました』


 急にやよいの口調が変わった感じで話し始めた。


「お前、やよいじゃないな。一体何者だ?」


『挨拶が遅くなりました。私は十六夜乃御子。この子の……いえ、今はやよいという名前ですよね。やよいの母となる妖です』


「ほう、やよいの体に十六夜乃御子の意思が入ったのか」


『その通りです。あなたは今はたかしと名乗っているですね? 随分久しいです』


「え、たかしは十六夜乃御子と会った事あるのか?」


「まぁな。昔は我も十六夜乃御子もやんちゃだったもので色々いざこざがあったものだ」


『ふふふっ、どっちが強い妖なのかよく争ったものです』


 たかしと十六夜乃御子は久しぶりに会った昔の友人の様に昔あった事を感慨深く話した。


「ところでやよいから聞いたんだけど、あんたは西の退魔士に追いかけてられたんじゃなかったのか?」


『その通りです。残念ながら私の体はもうこの世には存在しておりません。私が死んでしまった時に備えて、この子に私の意思を残しています。少しの間だけでも東野家の人とお話をしたくて』


「そうか、やはりもう十六夜乃御子はこの世にはおらんのか」


『何も悲しむことはないですよ。どの道この子を東野家に送り届けたら消える予定でしたので』


「……何でやよいを送り届けたら消えるんだ?」


『私は人と共存する為に長い時間をかけて人について学んできました。その中でとても長い年月をかけて極めて人間に近いこの子を生み出すことに成功しました。全ては愛する千里様の為に』


「愛する千里殿が人間と妖の共存を望んでいたから、お主は尽力を尽くしたというのか?」


『その通りです。やよい……良い名前を貰いましたね。一二三様、どうかやよいの事をよろしくお願いします。この子には私の全てを託しておりますので、きっと貴方の力になると思います』


「え、俺は……」


「一二三っ、余計なことは言わなくてよい!!」


『ようやく貴方の元に逝くことが出来ます。千里様、彼方では貴方の側にーーーー』


 こうして西の妖の主人である十六夜乃御子はこの世に別れを告げた。


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