アットホームな素敵な職場です!(終)
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「以上、回想終わりです!」
「回想長くないか?」
やよいに言われて思い出した、こいつは新城太一だ。
悪ガキとして近所で有名で施設を転々としてるんだよな。
「んな事より、飯はまだかよ。俺腹が減っちまったよ。ただでさえ、こんなボロっちいとこに住む事になったのに飯も食えないとかありえないぞ!」
「やよい、早くコイツを摘み出せ。うちは生意気なガキンチョを預かるとこじゃないぞ」
「まぁまぁ、一二三さん、ただでさえここには働き手が居ないから太一くんでも戦力に数えないと駄目ですよ」
「戦力? 何の話をしてるんだ?」
「本日より太一くんは東野家で退魔士見習いとして働いてます。あれ、言ってませんでしたか?」
「そんな話聞いてねぇよ!!」
首を傾げるやよいであるが、多分ワザと言ってないんだろうな。
「という訳で本日より太一くんは一二三さんの一番弟子となりましたので、一二三さん、色々と教えてあげてくださいね!」
「待てや、俺に弟子なんていらないぞ」
「俺もこんな覇気の無い目をした奴の弟子なんかになりたくねぇ!!」
「確かに一二三さんは東野家次期当主とは思えないぐらい目に覇気が宿っていませんが」
やよいも俺が覇気の無い目をしているのは同意してるみたいだ。
「退魔士としての実力は特級品です。まだ、世間は一二三さんの事を理解されていない人が多く居ますが、いずれはこの国の人と妖の頂点に立つお方なのですよ!」
盛るな盛るなぁーっ!!
俺はそんな事は全然望んで無い!!
「……こいつが凄い奴なのかは置いておいて、俺はまだ10歳だから働くのはまだ早い!!」
「退魔士に年齢は関係ありませんし、母様が生きた時代では太一くんぐらいの年齢の子もしっかり働いている子も沢山居ましたよ!」
「やよいの母ちゃんが生きた時代は今から何百年も前だから時代錯誤もいいとこなんだけどな」
「もしかして、太一くんは退魔士になるのが怖いのですか? それなら致し方ないのですが……」
こらこら、太一を煽るな!
「何だと!! そんぐらい怖くねーよ!! だったらなってやるよ!!」
乗るな乗るな!
お前が退魔士なるって言ったら俺が面倒な事になるだろ!
「それでは今日は一二三さんに初めてのお弟子さん出来たという事で、夕飯は奮発しましょう!」
やよいは満面の笑みを浮かべて、トコトコと台所に向かった。
「….………」
「…………」
やよいが居なくなった事で茶の間には俺と太一が取り残された。
うん、何だか気まずいな。
「……おい」
「おいじゃない、俺の名前は太一って名前があるんだ」
「じゃあ、太一。お前本当に退魔士になるのか?」
「当たり前だ!! やよいに舐められてたまるか!!」
負けず嫌いな性格、何か俺と会わなそうだわ。
「早速だけど、退魔士ってどんなことすればなれるんだ?」
「えーっと、それはだな……」
俺の話を遮るように玄関のチャイムが鳴った。
『一二三さーん、私は今手が離せないので出てくださーい!!』
「出番だぞ弟子1号」
「一二三が頼まれたんだからお前が行けよ」
今日から俺の弟子になる奴が言う言葉遣いじゃないよな……。
―――――
『お届け物です。ここにサインをお願いします』
「はいはい、了解ですよ」
宅配の人が差し出した伝票にサインをしたのだが、依頼主の欄がが書いてないのだが?
「ところで依頼主が書いてないんだけど……」
『ありがとうございました!』
宅配の人は俺の言葉を無視して去って行った。
これは後でクレームを言っておかないとな。
「って、これは……」
デジャヴと言えばいいのかな。
前にもこういう段ボールに【生物】と書かれた贈り物が届いた気がするのだが……。
「……よし、今から郵便局に行って返送してもらおう」
『ちょっと待ってくださーい!!』
段ボールから飛び出して来たのは、ついこの間まで行動を共にしていたかすみであった。
「中身も確かめないまま、返送したら駄目ですよ!」
「いや、だいたい中身が予想できたから返送しようと思ったんだよ」
実はというと宅配の人が来る前からかすみがこっちに近づいているのは知っていた。
しかし、やよいと全く同じ方法でうちに来る事は予想していなかったな。
「一二三さん、今かすみの妖力を感じたのですが……って、かすみ!?」
「やよい様! ご無沙汰してます。この度人と妖の共存の為に日々奮闘されている一二三さんとやよい様の手助けをする為に今日からこの東野家にお世話になる事にしました! 以後よろしくお願い致します」
……えーと、まさかの修学旅行から帰って来たら、うちに同居人が2人増える事になった。
はぁ、憂鬱だな……。




