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生物につき、ご注意を!


――――


「というわけで、俺の小遣いで代引きしたんだけど……」


 配達屋の兄ちゃんが持ってきたのは中ぐらいのダンボールである。

 しかし、見た目の割に結構重かったな。


「これは一体なんなのだ?」


「分からん!送り先の名前も書いてないからな、もしや開けたら爆発するやつか?」


「ふむ、だがダンボールによく分からないモノが貼られているぞ」


「何々……【生物につき注意を】。なるほどと言いたいが、これでは何が入っているのが分からんからな」


「生物って事は何か生な物でも入っているのか?」


「確かにそれしかあり得ないな。とりあえず中身を確認してみるか」


「そうするしかないよね。まさか、爆弾とか送られて来たりして……」


「一二三殿、そんな不吉な事を言うでない」


 たかしもその強面なガタイでビビるなよ。


「えーと、ガムテープを剥がしてダンボールの中身はっと……」


「ど、どうしたのだ?やはり爆弾が入っていたのか?それとも呪われた何かが入っていたか?」


 妖が呪物にビビっている事にツッコミを入れたかったが、それどころじゃなかった。


「お、女の子が……入ってた」


 ダンボールの中には小さく可愛らしい女の子が入っていた。


――――


「さて、とりあえず布団に寝かせてはみたがこれからどうするべきかな?」


 意識を失っている女の子をダンボールから取り出し、布団に寝かせた。

 見た感じ外傷はなく、多分意識を失っている訳なのだが……。


「うむ、この子も妖であるからな。一重に警察に通報する訳にもいかんな」


 そう、ダンボールに入っていた子は頭頂部付近に耳があり、そして尻尾も付いている。

 おそらく人ではなく妖で間違いないだろうな。


「しかも、耳や尻尾がついているって事は妖獣(ようじゅう)に間違いないだろうな」


 東西南北に居る妖たちはそれぞれ個性がある。

 例えば東野が収めていたこの地域には妖人(ようじん)と呼ばれるほぼ人間に近い妖たちが住んでいる。


 妖獣はというと西条が収めている地域に多く住んでいる。

 つまり、この町には妖獣は滅多にいない。


「そうだな。我がこの町に来てから妖獣を見るのは初めてだな」


 数百年前からこの町に住んでいるたかしが言うのだから相当なものなんだろう。


「うーん、大変面倒な事になったなぁ……」


 別にこの町に妖獣が来てはいけない訳では無い。

 問題であるのはここと西条が非常に仲が悪いのだ。


 ここに妖獣が居る事を西条が知れば……うん、非常に厄介だな。


「たかし、郵便物の差出人が分からない時はどうやって返送するんだ?」


「うむ、妖の我に聞かんでくれ」


 悩んでいる間に妖獣の子が目を覚ましてしまった。


「母様っ!!!!」


「うおっ、いきなりどうした?」


 女の子は目を開けたかと思えばすぐに飛び起きた。


「え、ここは……あなたは誰ですか?」


「それよりもお前、誰だよ?」


「こら、一二三殿!小さい子にそんな言葉遣いをしたらダメだぞ!」


「私は……すみません。母様に自分の正体は明かしてはいけないって言われてまして。差し出がましいと思いますが、ここは何処なのですか?」


「ここは人妖町にある俺の家だ」


「人妖町っ!!!!それなら、東野家をご存知ですか?」


「知っているも何も俺の名前は東野一二三でここが東野さんの自宅だけど」


「何て幸運……母様、私東野家に辿り着きましたよ」


 女の子は天を仰ぎながら歓喜していた。


「ふむ、しかし妙だな。我ら妖は人間の様に夫婦の様な関係を結ぶ事も稀にあるが、妖同士では子をなす事はできないはずなのに何故親がいるのだ?」


 基本的に妖は群れを作ったり、夫婦になる事はあるが、基本単独で行動する事が多く、妖同士では子どもを作ることも出来ないから親子の概念も乏しい。

 だから、この子がさっきから言っている母様と呼んでいる関係というのは相当珍しい事例だ。


「……こほん、そういえば自己紹介がまだですね。私は西からやって来ました妖狐【十六夜乃御子(いざよいのみこ)】により生み出されました妖です。だいぶ遅くなりましたが東野家の意向に賛同し、あなたの伴侶として共に歩む為に生まれてきました」


 女の子は正座し両手を両膝の前に軽くついた状態でお辞儀をした。

 うん、小さい子とは思えないぐらい行儀が良いな。

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