夜這いをしましょ!
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「あーっ、疲れたぁ!!」
眞彦の馬鹿野郎のせいで家に帰り着いたのはすっかり日が落ちてもれなくテレビのゴールデンタイムがすっかり始まってる時間帯。
各々が疲れ切っていたので本日の夕食もブリ大根ではなく、コンビニ弁当で済ませる事になった。
やよいはコンビニ弁当を初めて食べたらしく、『これは……主婦にとっては敵になる存在ですね』と訳の分からん事を言っていた。
そして、現在、俺が大好きな所であるベッドにてくつろいでいるところだ。
やはり、ベッドでゴロゴロするのが俺にとってのゴールデンタイム!!
『一二三さん、いらっしゃいますか?』
ノック音と共にやよいが俺の名前が呼ばれた。
さらば、俺のゴールデンタイム……。
「こんな時間になんだよ、夜は修行をしない約束だろ? 後、出来れば明日の修行も休みにしてくれ」
「いいえ、修行に休みなんかありませんので365日休みなく行う予定です。それよりも今日は修行より大事な話です」
やよいが修行よりも大事な話があるっていうのも珍しいな。
「……何時になりましたら私を一二三さんの妻として認めてくれるのですか?」
うん、結構ややこしい話だね。
「何時も言っているけど、俺はまだ結婚するつもりはないってば」
「なら、一二三さんは何時私と結婚して頂けるのでしょうか?」
やよいは何時にも増して真剣な表情である。
これは冗談で済む話ではなさそうだな。
「私は人と妖が共存できる社会を作る為に生まれてきました。それと同時に一二三さんの妻になるべく今日まで頑張ってきました。……お爺様やたかしさん達は私が一二三さんの妻である事を承認してもらっています。しかし、肝心の一二三さんだけは頑なに私が妻になる事を拒んでおります。もしかして、私は知らないうちに一二三さんに嫌われる事をしてしまいましたか?」
やりたくない修行をさせられると考えれば嫌われている事をしていると言っても過言じゃないかな?
しかし、真剣な表情のやよいを見たらそんな冗談を言える空気ではないな。
「別に嫌われる様な事はしてないけどな」
「なら、何故私を拒むのですか? やはり私が妖で化け物だから妻にしたくないと仰るところですか!?」
「いや、妖を恋愛対象と見た事がないから何とも言えないけど、やよいが妖だから拒んでいる訳ではないぞ」
「……私の体の殆どが人間と同じ様に作られています。母様が私の為に他の妖が真似できないぐらいの技法のおかげなのです。勿論、人間の女性と同じで月に1回訪れるアレもあって、当然一二三さんの子ども授かることも出来ます」
何かさらっと凄い事を言いませんでしたかね?
「勿論、一二三さんが望むのならどんなえっちな事でも受け入れるつもりです。ただ、最初だけは優しくしてくれたら嬉しいです」
「ちょっと、待てやよい。別に俺はそんな事は望んでないぞ!」
いや、DTを捨てたい気持ちはあるが、何かそんな義務感的な感じで事を起こしたくはない。
「そんな私に魅力がありませんか? 私は一二三さんの為ならなんでも出来るつもりです。あの時初めて会った日からずっとずっと一二三さんの妻になる事だけを夢みていましたから」
「は? 俺とやよいが会った事がある?」
「一二三さんが覚えていないのも無理ないです。かなり昔の事でしたので、そこで人の温かさを知り、自ら人と共存したいと思えたのです。けっして、母様の願いや千里様の意思とは関係ありません」
記憶を遡ってもやよいとあった記憶は無い。
会ったとしたらやよい程の妖なら忘れるはずが無いはずだ。
「愛しています。私は妖で一二三さんは人で種族間の壁は確かにあるとは思います。けれど、昔も今も貴方をお慕いしております」
正直生まれてこの方女の子にこんな好意を当てられた事はない。
初めは小さい女の子だったやよいが俺の為に急成長し、俺の事を愛していると言ってくれている。
見た目も俺のタイプで料理や掃除などの家事も完璧。
性格が中々厳しい時もあるが基本は優しい。
まさに理想の女の子だ。
「……こんなグータラな男が夫で大丈夫か?」
「ーーーーっ!! 大丈夫です!! 一二三さんがグータラしている分は私が引っ張っていってみせますよ!!」
えー、尻に敷かれる事確定ではないか。
「まぁ、こんな俺でよかったらやよいの夫になってみるよ」
「一二三さんっ!! 大好きです!!」
自分で言うのもなんだが、何かロマンチックのかけらも無い返事だよな。
ぎゅっと抱きついてくるやよいの頭を撫でながらそう思っていた。
俺の元に贈られてきたのは推しが強い可愛い嫁さんだったみたいだな。




