家事担当のたかし。
――――
「あー、やっと学校が終わった」
つい最近3年に進級したばかりで、周囲の話題は進路のことばかり。
普通科の高校に通っている為、ほとんどが大学進学や専門学校への進学を希望。
俺はというと大学や専門学校に進学するつもりはないというか俺の成績じゃ何処の学校も難しい。
では就職するかといえば、まだまだ俺も遊びたい盛りなので働くと負けと考えている。
「一二三は進路どうするんだ?」
「うーん、俺は進路浪人になって今後の事をゆっくり考えていこうかな」
「何じゃそりゃ……」
隣の席のやんちゃな格好しているこいつは橋木大輔。
親父のせいで周囲から距離を取られている俺に対して好意的に接してくれるいわゆる悪友って奴だ。
「お前の場合は家業を継ぐって方法があるだろ」
「絶対にそれはお断りだ。何が好んであんなブラック企業に勤めるか!」
「そんなもんなのか?俺はお前のとこの神社に助けられたから立派な仕事だと思うぞ」
「それは綺麗事だぞ。じゃ、学校も終わったしさっさと帰るわ」
因みに俺は学校ってモノが大っ嫌いだ。
理由は簡単、妖と呼ばれている奴らは学校に通う事が出来ないからだ。
それで共存しているってよく言うぜ。
「お前ならこの町もなんならこの国も変えてくれると思うんだけどな……」
――――
「ただいま帰りましたよー」
「お帰り、夕食はまだ出来てないからちょっと待っててくれ」
帰ってくると迎えてくれるのは鬼のたかし
頭からツノ生えてるし、バカでかいから帰ってきて最初に見るのがたかしだと中々のインパクトだな。
さらにビッグサイズの私服とエプロンも付けてるし。
家庭的な鬼だよなぁ。
「あれ、爺ちゃんは家にいないの?」
「あぁ、数男殿は会合があるみたいで今日の帰りは遅いみたいだぞ」
「よっしゃ、修行修行うるさい爺ちゃんが居ないから今日は静かな夜を過ごせるぞ!」
「一二三殿よ、少しは数男殿の言う事に耳を傾けてみたらどうだ?」
「嫌じゃ、耳を傾けたら俺の就職先が決まってしまうだろ。俺は楽してまったりと日々を暮らしていきたいんだよ」
「でもそれでは、一二三殿が無職かニートになってしまう。穀潰しを東野家の末裔から生み出してしまったら、我の面子が立たん!」
「俺、散々な言われようだな……」
しかも、無職とニートはほとんど同じ意味じゃないか?
「でも、俺は働かんぞ!!働いたら負けだ!!」
「お主は一体何と戦っているのだ?」
たかしは呆れたような表情で台所に戻った。
「さて、俺はテレビでも見て夕飯ができるのを待つ事にするかね」
俺の祝福な時であるソファでゴロゴロしようとした時に自宅のチャイムが鳴る。
「一二三殿ーっ、すまないが出てくれるか?我は料理中で手が離せぬので」
「えー、面倒くさいし居留守を使おうぜ。どうせN○Kやよく分からん勧誘かなんかだろー」
「そうかもしれぬが、居留守は相手方に失礼だと思うぞ。待たせるのも申し訳ないから早く出てくれ」
「くそっ、なんて律儀な鬼なんだ」
顔に似合わず真面目なたけしに悪態つき、重い腰を上げて玄関の方へと足を進めた。
――――
少し待たせていたら2回目のチャイムが鳴った。
「はいはい、今出ますよーっと」
玄関の引き戸を開けると、そこに立っていたのは配達屋の兄ちゃんだった。
『お届けモノを持ってまいりました。サインと印鑑をお願いします』
「えーと、これで大丈夫っすか?」
『いえ、この荷物は代引きとなっております。金額は2980円となります』
「……ちょっと待ててくださいねー」
俺は一旦台所にいるたけしの元に向かった。
「たけし、代引きで何か買ったか?」
「いや、最近は買っていないなぁ。最後にネットショップで買ったのも特売の洗濯洗剤ぐらいだぞ」
特売品をネットで購入する鬼。
最近スマホを持っている妖は多いからな。
「そうか、因みに宅配便の兄ちゃんは姿を変えているけど多分妖だぞ。随分分かりにくい様に擬態しているけど」
「流石に腐っていても由緒正しい退魔士の家系に生まれた男だな。ここから離れている我は全然気が付かなかったぞ」
「腐ってもって言うな!まだ俺はフレッシュな17歳だ。まぁ、敵意はなさそうだし、とりあえず荷物は受け取っておくわ。後、代引きで2980円だってよ」
「すまんが、今一万円札しか持ってないから一二三殿が立て替えてくれぬか?」
「えー、その一万円で払えばいいだろ?」
「相手方がお釣りを持っていない可能性があるし、迷惑になるかもしれんから、つべこべ言わず払ってきてくれ」
「くそっ、今日はなんで日だ……」
回収する時に利子でも払ってもらおうかな?