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贈りモノはアヤカシな許嫁!?  作者: 吉本優
東のうつけ殿

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13/206

激おこですよ!


「まったく、あの方は一二三さんの事をまるで分かっていないですね!」


 散歩が終わり家路に着いてもまだやよいは怒っていた。


「そんなにイライラするなよ。別に俺は気にしていないぞ」


「一二三さんがよくても、私がよくないんですよ! もう、夫が馬鹿にされて怒らない妻がどこにいるんですか!?」


「いや、まだやよいと結婚した訳じゃないんだがな」


「一二三殿もこんだけ美人に愛されているのに気持ちを受け止めんとは罪な男だのう」


「茶化すなよ! それで爺ちゃん、やよい件はどうなったんだ?」


「おぉ、東山がぶつぶつ喧しかったが無理やり認めさせたわい。やよいちゃんよ、今日から東野やよいと名乗りうちで暮らすがよい」


「ーーーーっ!! ありがとうございます!! 私、東野やよいは東野家の者として恥をかかないよう全力で東野家に尽くしていきます!!」


「もうやよいの苗字が東野なのは決定なのな。もう色々面倒だからスルーするわ」


「後、最近やっかいな話題が上がっておってな。それは東山家の跡取り問題じゃ」


「東山家っ!? 一二三さんの天敵ですね!」


「違う違う。別に俺は東山の人たちと敵対してないからね?」


「どうやら近いうちに東山家の当主が変わる予定らしいの。なんせ、東山家の現当主が昨日の夜に誰かに襲われたらしい。犯人はまだ見つかっていないが、現当主はこの一件で後遺症が残る程の重症らしい。そこで、東山家が現在跡目争いが勃発しているとの事じゃ」


「へー、東山家の当主だった人はまだ妖と人間共存に関して特に反対はしてないのにな。こりゃ大変なこったい」


「何を呑気にお茶を啜っているのですか! これは一大事ですよ! 人間と妖の共存の危機ですよ!」


 やよいが俺の方に詰め寄ってくる。


「だって、仕方がないだろ。東山のじっちゃんも結構いい歳だったんだしいつ世代交代が起きても不思議じゃないしな」


「だが、一二三殿よ。もしも東山家の次期当主が過激な思想を持っていたら平和に暮らしたいと思っているこの町の妖たちは一体どうなるのか分かるだろ?」


「まぁ、退治される対象になって本来あるべきであるこの街の形が変わってしまうだろうな」


 東山家に限らず、ここら辺の一部の退魔の一族で妖の事を憎んでいる奴は少なからずいる。

 勿論、人間と同様で悪事を働く妖も存在しているからな。


「ふむ、それならどうするのだ一二三よ。このまま黙って妖たちが退治されていく事を見てるだけか?」


「別に妖との共存を他の退魔士たちに押し付ける気はねーよ。でも、ただ平和に暮らしたい妖たちに危害を加えようとするならーーーー俺は容赦はしない」


「おぉ、流石は一二三殿だな。普段はやる気がないようだが、ここぞという時はやはり頼りになる男だ!」


 やる気がないは余計だぞ。


「やっぱり一二三さんは優しいお方ですね。さらに惚れ直しましたよ」


「おいこらー、抱きついてくるな、すりすりするなー!」


 やよいは爺ちゃんたちがいるにも関わらず俺の体にくっつきすりすりしてくる。

 

「ほっほっほ、実にらぶらぶなところを見せつけてくれるのう。死んだ婆さんの事を思い出すわい」


 勝手に思い出に浸らないでくれ!

 やよいのたわわなお胸が当たってなんかムラムラしてくるぞ……。



『たのもぉーーーっ!!!!』


 玄関の方から道場破りのような大声が響き渡った。


「はーい、どちら様ですかー?」


 たかしが玄関に向かった。


「あぁ、お主であったか。一二三殿と数男殿なら茶の間におるぞ」


 たかしの声がするのと同時にドタドタと乱暴な足跡が近づいてきた。


「兄さーんっ!! 許嫁ってどういう事ですか!!?」


「あ、貴女は先ほどの一二三さんに失礼な事を言った方ではないですか! ま、まさか、夜襲を仕掛けてきたのですか?!」


「いやいや、落ち着けやよい。今は夜じゃないから夜襲じゃないぞ。さっきぶりだな伊吹、ここに来るのも久しぶりだなー」


「久しぶりだなーっじゃないですよ! 私という心に決めた女の子がいながら妖の女の子と婚姻関係を結ぶなんて話聞いてないですよ!!」


「心に決めた女の子?」


 やよいの表情が固まった。


「そうですよ。兄さんみたいな大うつけ者には私みたいなしっかりした妹系の女の子がお似合いなんですよ。さぁ、そうと決まればさっそく役所に婚姻届を提出しに行きましょう!」


「待て待て、俺は伊吹と結婚する気は無いし、しかも俺たちは結婚できる歳でも無いだろ」


「愛の力があれば大丈夫です!」


 いや、無理だろ。


「あー、一二三よ、やよいちゃんが混乱しているようだからとりあえず伊吹の紹介をしたらどうだ?」


「確かにそうだな。コイツは東山伊吹で東山家の人間で跡継ぎ候補の1人だな」


「そして、兄さんの将来の嫁です!」


「いや、ただの妹分だな」


「むぅー、兄さんのいけずー」


「え、えっと……現状を上手く把握できないのですが、伊吹さんは先ほど会った方と同一人物ですよね?」


「その通りです。やよいさんが兄さんの隣にいるのを見て、いてもたってもいられず声をかけてしまいましたよ。あまつさえ、東野の名前まで名乗るなんて……嫉妬で飢 気が狂いそうになりますよ!」


「……………」


「あー、やよい? 一応こんなのでも跡継ぎ候補って事で公では凛っとした態度をとっているんだけど、素の伊吹はアホの子だぞ」


「アホって言うなーっ!!」


「おほんっ! やよいちゃんや、伊吹はアホの子だが東山家の中では最も妖に対しての理解があって、わしらと同じで共存に賛成派なんじゃ。いうなら数少ない味方といってもよいだろうな」


「すみません、数男様。たった今から反共存派に寝返る事にしました」


「な、なんじゃとっ!!?」


「だって、私の計画である東野家の兄さんと東山家の私が結婚するのが人妖町の今後の為にも最善の策なのです。それをやよいさんが邪魔をするというのなら……私はやよいさんをーーー」


「俺の目が届く場所で妖の討伐は許さんぞー」


「……デコピンします」


「??? デコピン……ですか?」


「くっ、今日はここまでにしておきますね! 覚えてろー!!」


 伊吹は捨て台詞を吐いて去って行った。

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