第8話 VSマルコ
剣を貰った翌日、師匠と共にギルドに向かっていた。
「体術と剣術は合格した。今日は卒業試験や」
「卒業試験ですか?」
「うん、これからヒサメには一つの依頼を受けて貰う。それが達成出来たら一旦うちの修業はお終いや」
「もう、お終いですか?俺はまだ師匠よりもかなり弱いですよ」
「Bランク冒険者くらいには強いから大丈夫よ。そもそもヒサメが強くなったのはサンドラと一緒に旅するっていう目的のためやからな。強さはあくまでも手段や。手段と目的をはき違えたらあかんで」
「そうでしたね。今日は頑張ります」
俺たちは冒険者ギルドに着き、さっそくカウンターに向かう。
「この依頼を受けたいんやけど」
「承知いたしました。って鬼…」
有名冒険者には二つ名がつく。しかし、写真などがないこの世界では似顔絵がたまに出るくらいだ。だから二つ名ばかりが有名で顔が知られていない冒険者もいる。しかし、Sランク冒険者が長期にわたって一つの街にとどまると、その街の人には顔を覚えられる。受付の女の人が師匠の顔を覚えているのはそのせいだ。
「し、失礼しました。冒険者カードをお願いします」
「はい、分かりました」
俺はカードを出した。
「えっと…受けるのはヒサメさんだけですか?シズクさんは?」
「うち?受けへんよ。ヒサメだけ」
「こちらはCランク依頼でして、Dランクのヒサメさんだけでは少々難しいと思うのですが」
「大丈夫よ。うちが育てたから」
「そうは言いましても…」
「ん~分かった。ヒサメに実力があるって分かればいいんやろ?」
すると師匠はギルドを見渡して言った。
「この街で一番の実力者は誰や?」
それに返したのは見たことのある、小柄で緑髪の魔術師だった。
「僕だ」
それは最初に森で助けてくれたマルコフニウスだった。
「あなたはマルコさん」
「あんたか!ちょっと悪いけど、うちの弟子と戦ってくれへん?」
「こいつと、ふむ。いいだろう」
噂を聞きつけたのか5,6人くらいの冒険者が集まった。中には俺が以前戦ったことのある奴もいる。
「どっちが勝つと思う?俺はヒサメだな。あいつは強かった。背中がゾクッとするくらいにな。それにマルコはCランクだろ?」
「いや、マルコの奴も相当だ。なんの意地でソロ冒険者やってるのか知らんが、本当はAランクくらいには強いだろうに」
「あいつってそんなに凄かったのか」
「ああ、あいつは若くして数種類の魔術を同時に扱う」
そうこうしているうちに戦いが始まった。
俺が師匠に貰った剣を抜いて構えているとマルコが先に動く。マルコの周りにいくつかの火の玉が現れると一斉にこっちに向かってきた。俺はそれをサイドステップで避ける。目の前にはすでに雷の玉があった。どうやら火球の後ろに隠していたようだ。俺はすぐに上へ飛んで逃げる。
攻撃が多い。距離を詰めないとどうしようもないな。空中で考えていると、もう岩球が飛んでくる。俺は冷静にそれを断ち切った。俺は着地すると同時に地面を思いっきり強く蹴って、マルコとの距離を詰める。しかし、マルコはそうはさせまいと水壁を作り出していた。俺は走りながら、それを斬る。水しぶきが舞い、俺にかかる。マルコはまたもや火球を放ってきた。
火…俺の手はさっきの水で濡れている。だったら、俺は左手を「千変万化の腕」のスキルで水に変える。そしてそのまま、火球を握り消した。
マルコは魔術も剣も使わずに魔術をレジストされていたことに驚いていたが、すぐに魔術を放とうと手を振り上げようとする。しかし、もうマルコとの距離はかなり縮まっている。魔術を発動させる時間はない。俺は走ったままの勢いで剣をマルコの首目がけて振るう。
「参った」
そう宣言したのはマルコだ。俺の剣はマルコの首を皮一枚切っていた。
「す、すいません。寸止めするつもりだったんですが」
「それは別にいい。お前は確かヒサメだったか?」
「はい、そうですけど」
「少し前まではウルフに逃げ回わっていた奴がこんなに…凄いもんだな」
「あ、ありがとうございます」
「お前は俺に勝ったんだ敬語はなくていい」
「分かった」
「次は負けない」
試合が終わり、受付から了解を得た俺たちは依頼場所に向かった。
で、着いたのはダンジョンだった。
「あの、師匠?ダンジョンは魔物に囲まれる可能性があるからソロはお勧めしないと指南書に書いてありましたけど?」
「本のいう事を鵜吞みにしたらあかんで。うちも通った道や。行って来い」
師匠が方針を変える気がないことが分かったので大人しくダンジョンに向かう。
「あ、そうや。この卒業試験を合格出来たらヒサメのスキル専用の装備を送るからな」
師匠はやる気を出させるのが上手い。絶対にクリアしてやる!




