第69話 ガウス
夢の中、誰かが呼んでいる気がする。体の感覚がない。前にも同じようなことがあったような…。
「起きよ」
俺は薄っすらと意識が覚醒していく。
眼が覚めると、辺りが真っ白に輝いた空間にいた。
(ここは前にも、転生する前に神様に会ったところだ。するとまた、神様が呼んだのかな)
「起きたか」
俺は辺りを見る。ぼんやりと人の形をしたものがある。父さんとシズク師匠、チヒロだ。直感的に分かった。なぜかは分からない。でも間違いはないと確信がある。そして俺たちの目の前にいるのは、異様ともいえるほどのオーラを放つ人だ。これが神様だろうか。
「私の名はガウス。人の世では魔神とも創造神とも呼ばれている者だ」
ガウス。この世界に来てから何度も名前を聞いた、神の名ではないか。どうして、いきなり。
「やってくれたな。いや、あいつの企みに気付かなかった私にも責任がある。なんにせよ、やってしまったものは仕様がないな」
企み?一体どういうことなんだよ。
「そうだな。説明が必要だな。簡潔に言おう。お前たちが昨日、砕いた魔石は私の弟であるザウスを封印していたものだ。つまりザウスは今、封印が解かれたということだ」
あれが…ザウスの封印?。どういうことだ。
「ザウスがお前たちを異世界から呼び出し、自らの封印を解かせたのだろう。封印され、体も動かないにもかかわらず1万年という時間を経て復活したのだ」
じゃあ、俺たちを転生させたのはザウスで、誘導されていたのか…。
「ああ、そして時間がない。お前たちを覚醒させる。目を覚ましたら早く逃げるのだ」
時間がない?
「ああ、アカリとやらが封印を解かれたザウスを迎えに行き、大量の魔物を率いて戻って来ている。お前たちを殺すためにな」
俺たちを殺す?
「そうだ。封印を解いた今、お前たちは用済みとなる。そうであるならば、殺してしまった方が安全だ。この世界で今、ザウスを倒せるのはお前たちだけだだろうからな。同様の理由で、お前たちが殺されるのは私が困る。だから、逃げろ。もう時間がない。詳細は後だ」
その言葉を最後に俺は目を覚ました。父さんたちも同じだ。
「父さん」
「ヒサメ、逃げるぞ!」
父さんは目が覚めるとすぐに逃げる準備をする。だが、師匠は遠くを見ている。
「あかん、もう遅かったみたいやわ」
師匠の瞳には丸い模様が浮かんでいた。
師匠の言葉の意味は俺にはすぐに分かった。すぐそこまで来ている。魔物の大群だ。俺たちだけではどうしようもない。
「父さん、転移の魔術だ」
だが、父さんは下を向く。
「早く!」
「転移は…俺を含めて3人までしか飛ばせない」
「そん…な」
今、この場にいるのは俺に父さん、師匠にチヒロだ。一人足りない。走って逃げるか?無理だほぼ全方向から来ている。ダメだ。逃げられない。
そんな時だった。
「何してるん?はよ3人で逃げな」
「え?師匠は?師匠はどうするんですか?」
「うちは自力で逃げるよ。この中でやったら一番可能性が高いからな」
「そんな。なら俺も残る」
「何言ってるん?ヒサメが残ったらチヒロもリョージさんも残るって言うで」
俺は後ろを振り返る。
「ヒサメくん」
どうしたら?無理なのか?ああ、何も分からない。どうしようもない。
俺は頭を抱える。
「リョージ義兄さん。お願いします」
「シズク。でも…でも、零に続いて君まで…」
「やっとヒサメに会えたんやろ?」
「グッ。行くぞヒサメ」
強く噛んだのだろう。父さんの唇からは血が流れていた。声も震えていた。
「でも、師匠が!」
「あいつなら大丈夫だ。早くしろ。シズクの気持ちも考えてやれ」
俺は父さんに強引に引きずられる。
「チヒロも」
「は、はい」
チヒロは俯きながらついていく。
「またな、シズク。…すまね」
「うん、またね。ありがとう、義兄さん。こんな役してもうて。ヒサメ、あんたの師匠になれて楽しかったよ。チヒロ、ヒサメのこと頼んだで。さぁ、行きな」
父さんは無言で転移の魔術を使った。
「行ったか。生き残れるかな?無理っぽいかな?最後に言うといたらよかったな。ヒサメに大好きやって。でも、ちょっと恥ずかしいかったからな~」
どんどんと近づく。もう、見える位置だ。
「もうやな。簡単には死なへん。うちを相手したこと後悔させたるわ。さぁ、足掻こうやないか!」
ついに書きたかったところかけた。多分4章はあと1話になるかな。




