第65話 VS巨大魔物
遺跡の道中、俺たちの前に二体の魔物が現れる。一体はサルの魔物で剣を装備している。もう一体は象のような大きさの犬だ。両者とも漂う雰囲気が尋常じゃない。恐らく今まで見てきた魔物の中で最上位であろう。
「こいつらは強そうやな~。手貸したろか?」
師匠が魔物を見て俺らに聞いてくる。俺はチヒロに目をやり決める。
「いえ、俺とチヒロでやります」
「そうか。見といたるから存分にやり」
「はい、ありがとうございます」
俺とチヒロは二体の魔物と向かい合う。
「どっちを担当する?」
「じゃあ、サルの方を」
「じゃあ俺は犬だな」
すると魔物は『話は終わったのか?』とでもいう風に構えを取る。
先に動いたのは俺だ。俺は犬の魔物に近づくと、剣も持っていないうちに、剣を振りかぶるような動きをする。そして相手に当たる瞬間にスキルで剣を作り、武装強化する。
「おらぁ!」
魔物はいきなり現れた武器に反応できずに右の前足を失うこととなった。
「ガァルル~」
魔物は怒声を叫びながらバランスを崩す。
俺はこの隙を逃さないように、相手に詰め寄る。だが、相手も直ぐに対応してくる。
「ガオォ」
犬の魔物が叫ぶと土塊が俺をめがけて飛んでくる。俺は足を止めて、それを躱し近くの岩の陰に飛び込む。
「クソ。なんて威力だ」
横目に見ると相手の魔術は地面を抉っていた。俺がいつもやっている地面に手を触れて壁を作る防御では簡単に貫かれてしまうだろう。
俺は相手の魔術のタイミングを感じ取る。これは前にシズク師匠が教えてくれた対魔術師との戦い方だ。高レベルの戦いでは自身の目視できない速度の魔術が飛んでくる。そのための対処法だ。
「よし」
俺は隙を見て飛び出す。俺は魔術をかいくぐりながら、近づく。そのまま横一文字に斬ろうとする。しかし、驚くことに相手の斬ったはずの脚があったのだ。
俺は一瞬動揺してしまった。相手が土塊を飛ばしてくる。
「チィ」
俺は何とかミスリルの腕を体の前に入れるが、衝撃は止めきれず、吹き飛ばされてしまう。
「グゥ」
俺は受け身を取り、すぐさま構える。
「なるほどね」
相手の脚は復活したわけではなかった。土の魔術で義足を作っていたのだ。そのせいか奴の動きは鈍い。恐らく機動力は大幅に失っただろう。だが、魔術がある。決して油断できる状況ではない。
俺は再度、特攻する。またもや魔術が飛んでくるが、もうタイミングはつかんでいる。
「当たるかー」
相手の目線、魔術が発生する時にわずかに生じる魔力と空気の歪み、タイミング。それらを感じ取り、躱す。だが俺はまだ慣れていない。土塊が時々、俺の身体を掠めていく。
だが、俺は構うことなく突っ込み、剣を降った。相手が後ろに飛んで逃げるも俺の振りの方が速く、魔物の顔に大きな傷をつける。俺は再度突っ込もうとするも、脚が上がらなかった。俺の足元が泥濘になっていて動けなくなった。
「クソ、こんな魔術もあるのか」
俺が抜け出そうとすると土塊が飛んでくる。俺はそれを剣で弾き飛ばすも二撃、三撃と数が増えていくと対処しきれず、体中ボロボロになる。
「やられる」
俺が対処法を考えていると攻撃が止んだ。相手も息が絶え絶えで辛そうだ。
「そうか。魔力切れか」
俺はこの隙に泥濘から抜け出そうとする。しかし、相手が俺めがけて突進してくる。
「クソ。一騎打ちになってしまった」
相手の速度は脚のせいか遅い。俺は落ち着いて雷魔術を使い、スキルで剣を作った。
「界雷剣」
そして奴が俺の間合いに入った。だが相手の牙が俺に届くよりも速く俺は首を斬った。
犬の魔物は力を失い、バタリと倒れた。
「何とか勝てたか」
途中までは俺のペースで攻撃できていたが、相手の泥濘によってギリギリの戦いになってしまった。相手の魔力がもっと多かったら危なかっただろう。反省の多い戦いとなった。




