第61話 夜の番
内容重めかも。
日も暮れ始め、俺たちは馬車を停め寝泊りの準備を行った。と言っても、魔道具の中で寝ることもできる。見張り用の火も魔術で起こせるし、魔物除けの薬を撒いて終わりだ。魔道具を常に運転してくれたハデスは皆の意見で見張りをしないことになった。俺は先に寝る番だった。
「おい、ヒサメ。交代だ」
俺はマルコに起こされる。
「そうか。ありがとう。ゆっくり休んでくれ」
俺は魔道具を降りて、伸びをしながら火に近づく。先に見張りをしていたのは父さんだった。
「よお、ヒサメ。眠たくないか」
「眠たいけど、これくらいなら大丈夫。慣れてるから」
「そうか。魔物除けのおかげで魔物の気配すら感じない。まぁ、恐らくは大丈夫だろうが、念のためにな」
「昼みたいに盗賊が現れないとも限らないしね」
「そうだな」
俺は昼のことを思い出す。盗賊が現れた時に逃げ出した人すら殺した。
「父さんは人を殺せる?」
「昼のことか?そうだな。依頼で殺したことはある」
俺はそれを聞いて、やっぱりなと思うと同時にショックを受けた。
「俺は人殺しの冤罪で死刑になった。父さんもそうだろう?なのに、この世界で人を殺したら前世の罪も認めたことのように感じてしまうんだ」
前世で人を殺した疑いをかけられた。いくら違うと言っても誰も信じてくれない。悔しかったのを覚えている。それなのに、今人を殺してしまえば、「ああ、やっぱり殺したのか」と肯定する行為のように感じてしまう。
「ヒサメの言っていることは分かった。ヒサメは俺が死んでからも苦労をかけたからな。そう考えてしまうってのも理解できる。でもな、この世界にお前を人殺しと罵るやつがいたか?」
「いないけど」
「確かに簡単に人を殺すのはよくねぇ。日本ではだから罪を犯した奴には司法で裁かれる。まれに俺たちのような冤罪が出るけどな。だが、この世界にはそれがねぇ。人を殺す奴は捕まるが、簡単に逃げられる。盗賊が出るくらい治安が悪い。それを正す警察なんてものもない。だから、冒険者が犯罪者を見つけたら殺すことが推奨されている。実際にその方が治安が維持される。当然、無実の人を殺す冒険者も出てくるが、少数だ」
「それはそうかも知れないけど」
俺はそれを聞いて理解はできる。けど、納得は出来ない。
「まぁ、それは一般的な考え方だ。これからは俺の考え方だ。殺したきゃ殺せ。殺したくないなら殺すな。もちろん普通の人を殺せってことじゃない。社会に害となるなら自分の判断で殺せばいい。そういう世界だ。アカリも言ってたがな、被害者が出ないようにする人助けだと思えばいいい。それでも抵抗感があるなら殺すな。お前の精神を削ってまで他人のことを考えなくてもいい。俺にとってお前が一番大切なんだからな。俺がいたら俺を頼れ。息子の代わりに血をかぶってやるさ」
「ありがとう。父さん」
父さんに大切にされている。それだけで涙が出るほど嬉しいことだった。




