第60話 旅に山賊は付き物
兄に会うために聖国に行くことを決心したマルコと共に家に帰った。中入るとシズク師匠がいた。
「どうやら問題は解決したようやね」
「はい、とりあえずは。ありがとうございます、師匠!」
「ヒサメはなんでも一人で解決しようとしてまうからな。もっとうちとかサンドラ…良治義兄さんを頼りな」
「その時は力を貸してもらいます」
「おう!可愛い弟子の頼みならいくらでも聞いたるわ!」
その日の夜に出発は三日後であると伝えられた。それまでに各自、旅の準備をしておくようにとのことだ。しかし、今回の旅は馬車や魔道具などをアカリが用意してくれるので楽ができそうだ。
装備の点検に買い出しをしていたら、すぐに三日後になっていた。いつもは長期間街に滞在しているが、今回は五日間だけなので寂しさなどは感じなかった。
アカリの馬車は凄かった。いつものに比べて揺れが少なく、中には冷蔵庫や魔物除けなどの魔道具が積まれている。また、機動力も馬ではなく魔道具であるため、馬車自体が大きな魔道具と言えるだろう。操縦しているのはハデスである。
キシケゴードン国とアリスクー聖国の国境にはクリマー山脈という大きな山脈がある。そこは近道ではあるが、険しい道が続くため普通の馬車での移動は困難である。しかし、流石アカリの馬車である。山道を造作もなく走り抜けている。だが、そんな魔道具は珍しく高価であることは一目で分かってしまう。更に、人気のない山道だ。つまりは山賊に狙われやすいということだ。
ハデスが馬車を止めた。俺たちも外で気配を感じ何かがあったことを感じとる。
「おい、お前ら!その魔道具を俺たちによこせ!」
「あら~盗賊かしら?始めて会ったわ。盗賊も欲しがるようなものを作れてよかったわ」
「余裕ですね」
のほほんとしたアカリにマルコが聞く。
「そりゃあね。この魔道具に乗っている人たちだけで、国の一つや二つ落とせるものね」
師匠と父さんがいれば確かにできそうだ。それに戦ったところを見たことないが、ハデスも実力者であろう。強さの想像が全くできない。
俺たちは魔道具から降りていく。見ると、相手の盗賊は50人はいるだろうか。かなりの大所帯だ。引き換え、俺たちは八人だ。しかし、全くもって負ける気がしない。
「ずっと座ってて疲れてもうたから、軽く運動でもしよか」
師匠が剣を抜く。
「馬鹿か。この人数差だぞ。おとなしくしとけばいいものを。お前ら、やっちまえ!」
相手が動くと同時にこっちも動く。
俺は不意を突かれないように周囲を常に警戒しながら戦っていく。多対一の経験が少なく、手こずってしまう。そんな時にマルコが助けに入ってくれる。
「ありがとう。助かったよ」
「いいさ。向こうではサンドラさんとシズクさんは単独で戦っている。反対ではチヒロとムツキが一緒に戦っている。アカリさんとハデスさんは魔道具のところだ」
「分かった。師匠たちに全て取られないように頑張ろうか」
「そうだな」
俺が前に出て接近戦で戦い、マルコが周辺を魔術で攻撃する。そうして徐々に目の前の敵を減らしていく。
「クソ!なんだこいつら全員Bランク越えの実力者じゃねーか。お前ら逃げるぞ~」
敵の頭のようなやつがそう叫ぶと、相手の魔術師が光魔術で目くらましをした。俺は咄嗟に目をふさぐ。明かりがなくなったことを確認して、恐る恐る目を開けると、生き残っていた盗賊が一人もいなくなっていた。師匠はすでに剣をしまい。馬車に戻ろうとしていた。師匠なら目くらましなど効かないが、逃げる相手を追うまではしないのだろう。
すると、アカリがハデスに言う。
「ハデス、逃げたものを全員殺してきて」
「分かった」
ハデスは目で追うのがやっとの速度で走り去ってしまった。
「速い!師匠と同じか、もしかしたらそれ以上か」
だが、それよりもアカリが言ったことだ。
「逃げたものまで殺さなくてもいいんじゃないですか」
すると、アカリが言う。
「でも、こんな所で盗賊を放置したら次の人が被害者になっちゃうわよ?私たちは力があるんだから、後始末くらいしなきゃ」
「この世界においてはアカリの方が正しい。冒険者ギルドでも盗賊の殺しは黙認されてるしな」
「師匠…分かりました」
師匠が言うので引き下がる。だが殺人の濡れ衣を着せられた俺としては、やはり人を殺すことにためらいがある。それからしばらくするとハデスが帰ってきた。
「じゃあ、行きましょうか」
俺たちは旅を再開した。




