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第59話 マルコの思い

俺は自分の部屋のベットに寝転がっていた。身体は疲れていて眠いのに、マルコの声が頭から離れないせいで、なかなか眠ることができずにいる。

「義理の兄に殺されかけるか…」

俺は前世では母さんのことは思い出せないが、父さんとの仲は良かった。それにこっちで再会できた。兄弟こそいなかったが、家族仲は良かった。そんな家族に殺されそうになる。


「ウッ!」

俺は吐きそうになる。マルコの経験したことはあまりにも残酷だ。そして、俺はなんて声をかけるべきだったんだろうか。そんなことを考えていると、いつの間にか眠りについていた。


「おっはよう!ヒサメ!久しぶりに走りに行くで!」

俺は師匠に起こされて、朝のランニングに出かけた。師匠の有り得ない速さで走るランニングで少し気もまぎれた。しかし、顔に出ていたようだ。走り終わった後に質問される。

「で、どうしたんや?」

「いや、友達に相談されたんですが、何も答えてあげられなくて」

「マルコフニウスのことか?」

「どうしてそれを?」

「なんや気分悪そうにしてたからな」

「それだけで」

師匠の観察眼にはいつも驚かされる。見習いたいものだ。


「そうやな、詳しいことは知らんからはっきりとは言えやんけど。マルコは相談に乗って欲しかったんやろ?それはなんでや。ただ聞いて欲しかったんか、共感してほしかったんか、解決策を一緒に探して欲しかったんか。それとも一歩踏み出す背中を押して欲しかったんか?ライバルのヒサメならわかるやろ」


師匠はにっこりと笑う。

「さて戻ろか。お腹すいたわ」

師匠はいつも相談に乗ってくれる。そして俺にヒントや励ましをくれる。それにいつも救われている。マルコはどうだったんだろうか?


俺は朝飯を食べると、マルコのところに冒険者の仕事に誘う。

「マルコ、依頼を受けに行こう!」

マルコはそれについて来てくれた。依頼内容はゴブリンの巣の駆除だ。本来なら4人以上が理想なのだが、俺たちなら大丈夫だろう。


巣がある洞窟に着くと、まず戦場を整える。逃げ場の確保や不意を突かれそうな所の確認、などなど。あとは慎重に洞窟の中に入る。できるだけ、騒がれないようにゴブリンを見つけたらすぐに首をはねる。俺たちは順調に奥に進む。すると、巣の中心部にたどり着く。ここまでくると、あとはゴリ押しだ。マルコの広範囲の風魔術を合図に前に出る。


一匹、また一匹と狩っていく。スキルで作った剣が血脂で切れ味が落ちる。俺は一瞬スキルを解除し、即座に作り出す。そうすることで常に切れ味を保つ。集団戦は久しぶりだが、スキルとの相性はいい。俺は地面に手を着くと、魔力をゴブリンの集団に流したと同時にスキルで地面を針のように隆起(りゅうき)させ、一気に倒す。


戦闘の最中、俺はマルコに聞く。

「なあ、マルコはどうして冒険者になったんだ?」

「それしかなかったからだ」

「魔術が使えるなら、冒険者以外に色々選択肢はあっただろ」

「…」

マルコは黙り込む。

「マルコが冒険者を選んだのは、お兄さん達の言葉だろう?」

「…」

「お兄さんに会いたくないのか?」

「でも…カルガ兄さんはルーカス兄さんを殺して、俺まで殺そうとした」

「何か事情があったのかも知れないだろう!」

「そんなこともう考えたさ!でも、何か事情があったとしてもだ!兄さんを殺すほどの事情って一体何なんだよ!もう、分からないよ」

最後の一体を倒すと、マルコは膝から崩れ落ちる。疲労からではないことは明白だ。


「僕はどうしたらいい?冒険者をしていても、この気持ちはどうにもならない。もう、どうしたらいいか分からない」

俺は以前の自分がマルコに重ねて見える。俺は父さんが捕まった後から、どう暮らせばいいのか分からなかった。偏見の目で見られ、嫌がらせを受けた。本当かどうか聞きたくても父さんはもう、いない。毎日が地獄のように苦しくて、どうすればいいのか、答えが欲しかった。自分で探し出すしかないとわかっていても。


「マルコはどうしたいんだ?お兄さんのことを綺麗サッパリ忘れて、このまま生きていく?それともお兄さんに会って、過去を清算するか?後者は危険が伴い、現状が悪化するかもしれない。前者は楽だが、ずっと苦しいぞ」


全て忘れて生きる。そんなことは出来ない。心のどこかでずっと残っている。

「僕は…このままは嫌だ。兄さんと話したい」

マルコは泣きながらそう言う。


会ってもいい方向にいくとは限らない。むしろ、自分を殺そうとした相手だ。また殺そうとしてくる可能性が高く、悪い方に進むことの方が可能性は高いだろう。でも、このまま止まっていても何も始まらない。動かないと進むことは有り得ない。過去の自分ができなかったことだ。後退するのが怖くて勇気が出なかった。マルコはそれをしようとしている。友達としてできる限りのことをしてやろう。

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