第57話 新人の集合
「おう!アカリ。もう帰って来たんか?」
「ええ。それよりもサンドラたちはもう来たのね」
「ああ、遅くなってすまないな」
「こっちこそ急に呼んでごめんね。色々話したいことがあるから、家に向かいましょう」
師匠たちがアカリと呼ばれた人物と話している時に、アカリの後ろに異様な気配の男がいることに気が付いた。男は白髪で冷たい眼をしていた。俺はその男の雰囲気にのまれてしまった。
マルコに声をかけられてハッとする。
「おい、ヒサメ!行かないのか?」
「え?どこに」
「どこって。さっきの家だよ。模擬戦で疲れたのか?」
「いや、何でもない」
俺たちは来た道を戻り、先ほどの家に着いた。
「さて、はじめましての人が多いから自己紹介から始めましょうか。その前にマルコ君だっけ?サンドラに聞いたけど、あなただけはヒト族つまり、異世界人じゃないのよね?」
「そうです。席を外しましょうか?」
「いえ、サンドラの仲間ですからいいわよ。でも、口外はしないでね」
「分かりました」
「では、私からね。私の名前は小山灯莉。新人よ。普段は研究者として色々やっているわ」
彼女の自己紹介が終わるとさっきの男が前に出る。
「俺はハデスという。新人だ。アカリのボディーガード兼雑用係だ。よろしく」
「俺は右代無月。新人で冒険者。よろしく~」
「うちは武田雫。同じく新人や。冒険者やってる。そんでヒサメの師匠や」
「俺は春風良治だ。こっちでは師匠からもらったサンドラと名乗っている。ヒサメの父だ」
「ええっと。私は不知火智洋です。新人です。ヒサメ君には前世で助けてもらいました」
「僕はマルコフニウス。マルコと呼んでください。ヒト族でヒサメのライバルです」
なぜ皆、俺との関係を言っていくのだろうか?父さんは分かるけど。ムツキも「俺言い忘れた」みたいな顔してるし。
「俺は春風氷雨。新人です。よろしく」
全員が自己紹介を終えたところでアカリが話し始める。
「各々話したいことはたくさんあるでしょうけど、それはまた後でね。まずは集まってもらってありがとうね。本題なんだけど実は研究のために行きたい場所があるの。そこで皆に調査を手伝ってもらえないかなと思って」
調査か。素人の俺たちに務まるのだろうか?
「冒険者の仕事の一環やと思えばええよ。うちとサンドラは何回かやってるけど、珍しいもの見れて案外面白いよ」
師匠がそう言うなら行ってみようかな。
「俺は行きたいです」
すると全員が賛成した。
「わぁ、ありがとうね。で、行き先なんだけどアリスクー聖国の遺跡なの」
アカリが地図を取り出して説明する。思えば広範囲の地図を見たのは始めてだ。見ると、今までの旅路を思い出す。イシダーンバナ国と今いるキシケゴードン国、そしてさっきの話にでたアリスクー国は三国が全てそれぞれ接している。アカリの指さす遺跡の場所は三国が一点で交わっている所から少しアリスクー聖国よりの場所にある。
すると、マルコがポツリと言う。それを聞こえたのは、隣にいた俺だけだろう。
「行けない。僕はそこに行けない」
「どうしたんだ?」
俺は聞くがマルコは答えない。仕方なく、この場で聞くことを諦めた。
「じゃあ、詳しい話は後日にするとして今日は皆が集まったことだし、豪華に外食しましょうか」
「ええやん、ええやん。行こうや」
俺たちはアカリが世話なっているという店に行くことになった。
「アカリなんですけど8人なんだけど大丈夫かしら」
「アカリ様!ええ、すぐにご用意いたします」
店の給仕は慌てた様子で店の中に入っていった。
「アカリさんはこの店の人と知り合いなんですか?」
「ええ。食品の鮮度を保つ方法はないかと相談されて、冷蔵庫を作ったの。そしたら料理長がとっても喜んでくれてね。店に行ったらよくサービスしてくれるのよ」
冷蔵庫を作っていたとは凄いものだ。話によると、魔石を使って構造を簡略化しているため、魔道具職人なら、設計図があれば作れるくらいの品らしい。
しばらくすると、先ほどの人が現れ、席に案内された。見るからに高そうな部屋だ。お金は大丈夫だろうかとも思ったが、高ランクの冒険者に凄い研究者だ。大丈夫なのだろう。俺は無駄遣いがほとんどないから、貯金はある方だ。なんとかなるだろう。…最悪、父さんになんとかしてもらおう。
出された料理は最高に美味しかった。旅中は簡単なものが多いから余計にそう感じるのだろう。皆が話しながら料理を食べる。作法も別段気にする必要はないのだろう。だが、やはり先ほどのマルコの発言が気になってしまう。今は美味しそうに食べているが。
そして程なくして解散となった。部屋が余っているらしく、アカリの家に泊まらせてもらうことになった。師匠とムツキも泊っているらしい。
部屋のベットに寝転がると、疲れからか睡魔が襲ってくる。
「いけない」
俺は気合いで起き、マルコに部屋に向かった。
部屋をノックする。
「マルコ、起きてるか?」
「ヒサメか?入ってくれ」
俺は言われるまま中に入る。
「さっきのことだろう?僕は聖国には行けない」
「どうして」
「聖国は僕の故郷なんだ」
「それなら余計に行けばいいじゃないか」
「僕は、その国で兄さんに殺されかけたんだ」
「え⁉」




