第56話 チヒロ対シズク
「勝負って。チヒロはまだこっち来たところやろ?戦えるんか?」
「はい。中国拳法を少し学んでいたので」
師匠はチヒロをよく観察する。
「確かに、それらしき感じはある。スキルや魔術は?」
「魔術は全くですが、スキルがあるので大丈夫です」
チヒロはサンドラの方を見る。
「ああ、チヒロのスキルは肉体を強化される。身体強化よりも強力で治癒も速い」
「なるほど。せやったらええな。やろか」
「ありがとうございます」
そうやって2人が戦うことが決まった。
チヒロはもちろん師匠も剣を持たずに構える。
「剣はいいんですか?」
「素手が相手には素手でっていうのがうちの流儀やねん」
「そうですか。では、いきます」
「どこからでも」
先に動いたのはやはりチヒロだ。チヒロは力強い踏み込みで師匠との距離をつめる。
「はやっ!」
チヒロはそのまま掌底を放つ。師匠は寸でのところで腕を入れてガードするも、数メートル後ろに動かされる。
「なんて威力や。それにあの速さ。ちょっと本気でいこうかな!」
師匠はチヒロに攻撃を仕掛ける。師匠の攻撃は一撃一撃が重く、一発入ればかなりのダメージになる。チヒロもそれを分かってか、全てさばく。
『このままでは、反撃に移れない。リスクは高いがカウンター狙いしか』
チヒロは師匠の攻撃の隙をついて前に出る。
『このタイミングで前に出るとか。一歩間違えればクリーンヒットやで。しかも前に出すぎや。拳を振り上げる余裕もない。』
師匠はチヒロの攻撃がくる前に仕留めるつもりだった。しかし、予想外にもチヒロの拳はすでに師匠の腹のすぐ前にある。
『これは、なんや?あかん、ヤバい』
「ハァア!」
チヒロの放った拳はノーガードの師匠の腹に入った。
「ぐふっ」
師匠は吹き飛ばされるも受身をとり、綺麗に立つ。
「えっぐいパンチやな。バックステップ遅れてたらヤバかったわ」
師匠は殴られる直前に後ろに飛んでいた。それでダメージを軽減していた。
「初手から寸勁に反応できるなんて、すごいんですね」
「あれ寸勁って言うんか。前世ではこういうことに関わりなかったから知らんかったわ」
「そう…ですか」
チヒロはまた攻撃に移る。師匠は攻撃を受け止めながら話し始めた。
「そういえば。チヒロのスキルだけ説明して、うちのスキルのこと言ってなかったな。不公平になるから説明するな。うちのスキルは天眼、技の理が分かる。つまりどういう技か理解できる」
「強いスキルですね」
「そうでもないんよ。技を最後まで見やなあかん。けどな理解できて、うちの能力の範囲内なら真似もできる。こうやってな!」
師匠はチヒロの拳を受け、チヒロの腕を弾き飛ばす。
「こうやるんか。ハァア!」
チヒロはそれをくらい、吹き飛ぶ。
「ごはっ、ぐふっ」
チヒロはなんとか起き上がろうとするも、すでに師匠が腕を拘束していた。
「降参です」
すると、師匠は立ち上がりチヒロに手を差し出す。
「強かったな。それに見たところまだスキルを使いこなせてないやろ?もっと強くなれるよ」
「ありがとうございます。次は勝ちます」
チヒロは負けたことが相当悔しかったらしい。顔をゆがませていた。
俺はチヒロに歩みよる。
「すごいよチヒロ!師匠にまともに攻撃を当てるなんて」
「いや、あれは知らなかったら避けるのが不可能くらいなカウンターだったし、そもそも反応されたし」
「けど、そのカウンターの形に持って行ったのがすごいよ。あの状況で前に出るとかできないよ」
「あ、ありがとう」
そんな時だった。
「あら~随分と騒がしいわね」
現れたのは白い肌にピンクの髪の女性だ。




