閑話 不死身のクリス
これは私クリスが神樹様ではなく不死身と言われるまでの話である。
私は幼い頃から古人と呼ばれる神より使命を与えられていると呼ばれる種族のパテックとイシューラと共に遊び、学び育った。また私たちも大人に近づいた頃にヒト族のステレンという青年と出会い、それからは四人で行動することが増えた。
パテックはどんな人にも優しく接する青年だった。イシューラは人に厳しい分自分にはそれ以上に厳しい真面目な青年だった。ステレンは言葉こそ荒々しいが、その行動からは育ちの良さが垣間見れた。私は負けず嫌いだとよく言われていたっけか。
私はそんな三人のことが大好きだった。四人で過ごす時間がこの上なく幸せに感じていた。そのまま、ずっとこんな時間だけが続くと思っていた。しかし、終わりは突然だった。
「武神ザウスが…神界を追放された」
古人の長のガーゼルさんがそう報告してきた。
正直なところ私には遠いことの話のように思えた。しかし、使命を与えられて真面目な性格なイシューラは違った。見たこともないくらいに同様していた。反対にパテックはすぐに腹をくくっていた。すぐに長に従うと言っていた。いつもの雰囲気とはまるで違う。やはり古人は私たちの知らない所で日々、覚悟しながら生活してたのだろう。
イシューラに自分はどうするべきか聞かれた時も、私ははっきりと答えることができなかった。しかし、この時、私はどうにかなると甘く考えていた。いや、信じ込もうとしてた。イシューラの厳しく真面目な性格を知っていたのに。
私は騒々しい物音で目が覚める。外に出てみるとステレンがいた。
「ステレン!一体どうしたんだ?」
「クリスか。イシューラがこの村を出て行ったらしい。それでパテックが怪我したらしい」
「何!村を」
私はそれをすぐに信じることができなかった。だが、傷を負ったパテックやどこにも見当たらないイシューラの姿が嫌でも現実ということを認識させてくる。
「そんな、イシューラ」
私はイシューラがいなくなってしまった事実にただ涙を流した。
ただ悲しみに明け暮れている時間はそんなに長くはなかった。すぐに戦争が始まった。古人を筆頭にエルフやドライアド、その他に武勇に自身のある種族たちで武神を止めようとした。中には武神派閥の人もいた。私は出来れば殺したくはない、だが戦争だ。甘いことを言っているとこちらが死ぬ。既に両方に数多くの死傷者が出ている。
そして、私たちはついに武神ザウスを見つけ出した。そこでは武神ザウスと古人の長ガーゼルが激しく戦った。目に追うことがやっとの速度で移動しながら剣劇を行っている。長は魔術も放つが武神ザウスはそれを剣で切り捨てている。武神ザウスの拳が長を捉えるが、長は自身の身体を火に変え拳を燃やそうとする。武神ザウスはそれに気付き掌底に変え、触れることなく風圧で吹き飛ばす。
「器用だね。そこまでそれを使いこなすとは。一歩間違えれば死ぬよ」
「ワシは歴代の中でも才能がないからのう。命をかけることしかできんのじゃよ」
「そうか、称賛しよう」
互角のように思っていた。しかし、武神ザウスが多くを相手にけがが多くなり始めた時だった。
「流石にこれ以上は危ないか。魔力の消費が激しいけど仕方ないよね」
武神のオーラが変わった。そこからはすぐに長が致命傷を受けた。私はこれ以上は危ないと思い、樹木を操り武神の攻撃を防ぐ。だが、盾になったのも一瞬だけすぐに樹木はへし折られる。長が倒れたら武神に勝てる人がいなくなる。そう思った私は身体を盾にする。次の瞬間、右腕が胸の辺りからなくなっていた。
「あ゛あ゛ああぁあああぁ~」
私はあまりの激痛に叫ぶ。
その後、パテックが来てくれて私と長は救出された。長は自分では武神ザウスに勝てないと悟り自ら死を受け入れパテックに魔法と意志を受け継いだ。私はいつ死んでもおかしくない状態で、苦肉の策で神樹の回復の実を食べることになった。それを食べると私の身体は一瞬で元に戻った。
「やった」
だが、喜んだのも束の間であった。
「ぐっ。うあぁーーーー」
全身に魔力が暴れまわっている。身体中に激痛が走る。そこから半日くらい痛みに苦しんだと思ったら、今度は全身が痺れて動かなくなってしまった。
それから一月。私は動けるくらいには回復した。しかし、魔力が自分のものではないみたいにいうことが聞かなくなり魔術が使えなくなった。また、けがをしてもすぐに再生するようになった。回復の実の効果がまだ続いているようだ。
魔術が使えない私は前線に復帰することなく、村で過ごしていた。その中で魔術の訓練だけでなく体術と剣術も練習した。実の効果か体力が無尽蔵と思えるくらいあったから朝から夜まで行った。度々この村には襲撃をしてくるやからがいたが全て追い払った。傷を負っても魔術を使うことなく回復する私のことを恐れられて不死身のクリスと呼ばれるようになった。
そんなある日、村に襲撃者が現れた。いつものように相手をしようと行くと、襲撃者はなんとイシューラだった。私は一瞬戻って来てくれたのかと思ったが、そんな淡い希望はすぐに打ち砕かれた。イシューラの狙いは神樹の実だ。パテックが武神ザウスを追い込んだという情報が入ったから、きっと回復の実が必要になったのだろう。
イシューラは強かった。襲いかかった人はほとんどが殺され、私も何度も致命傷を負った。だが、その度に再生し戦った。イシューラは徐々に傷を負い、ついには封印術で封印することに成功した。
その後、パテックたちが神との協力の結果、武神ザウスを封印することに成功し事無きを得た。イシューラについても封印を強化するため封印の実を使うことにした。神樹の近くは危険という考えにより距離をとり封印された。そこを結界で覆う予定だったが、私が門番をすることを申し出た。イシューラを独りにさせるのが嫌だったからだ。だが、予想外にも多くのドライアドやエルフがついてきてくれた。また封印が完了された後は霧により辺りから里の姿を見れなくしてもらった。回復の実の効果で寿命がなくなったみたいで現在にいたる。
このようにして、不死身のクリスという二つ名や長寿を手に入れ、また森の民の里ができたのだった。
閑話って一話でまとめようとして長くなっちゃうよね。これで三章は本当に終了です。ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。次からは第四章です。




