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第52話 父と子

俺は目が覚めた。

「ここは…?」

頭がぼーとする。顔に触れると包帯が巻いてあった。

「起きたか。ヒサメ」

「マルコ?」

「四日も寝ていたんだ、心配したぞ」

「四日?そうか!イシューラは?」

「安心しろ。神樹様がやっつけてくれたよ」

神樹様が!良かった。

「他の人たちは?」

「チヒロは無事だ。しかし、サンドラさんはまだ目を覚ましていない」

「サンドラが!うっ」

その時、頭が割れるような痛みが走る。

「命に別条はないらしいから安心しろ」

「そうか」

俺は言われるままに寝ることにした。しかし、サンドラについて何か忘れているような?何だっけ?



それから三日経った。俺は動けるレベルにまで回復した。サンドラを除くほとんどの人も回復している。治癒魔術のすごさを思い出させてくれる。亡くなった者たちの葬儀(そうぎ)も終え、今は復興作業だ。森の民の復興作業は見ごたえがあった。折れた樹木は秘術で新たに生やしていた。


「ヒサメ君。ごめんなさい。私のせいで大けがを」

チヒロは俺がかばって怪我をしたことを気にしているらしい。

「大丈夫だ。こうして生きている。それに前に言ったろ?仲間として守るって」

「うん、ごめんなさい」

すぐに元通りって訳にはいかないらしい。

「俺たちはこの先ずっと仲間なんだ。守る守られるは当たり前だ。だから、もし俺が困っていたら助けてくれ」

「ヒサメ君、ありがとう」


その時だった。ブルーが走ってきた。

「お~い、ヒサメ、チヒロ、マルコ!サンドラが目覚めたぞ」

俺たちは急いでサンドラの元に向かった。


「おう!元気そうだな!」

サンドラは俺たちを見るとそう声をかける。

「それはこっちのセリフだよ。一週間も寝ておいて」

「そうらしいな。魔力回路がやられてな。もうしばらく安静にする必要があるんだ」

「元気そうで良かったよ」

二人もサンドラと話し合っていた。そこでふと思い出す。

「なあ。俺がやられた時のことなんだけど」

「ああ、そうだな。話す必要があるな。すまないが、ヒサメと二人にしてくれ」


チヒロとマルコが部屋を出ていく。

「最初にこれだけは言っておこう。俺はお前の父の春風良治(りょうじ)だ」

「父さん?本当に?」

「ああ、本当だ」

「どうして…どうして今まで言ってくれなかったんだよ!」

「どの面下げて氷雨(ヒサメ)に父親と名乗ればいいか分からなかったんだ。すまない」

「そんなこと…」

「俺はお前を捨てたも同然の扱いをした!だから、お前に会った時に父と名乗れなかった」

「あの時は何があったの?どうして父さんは家を出て行ったの?」


父さんは俺が中学生の時にいきなり家を出た。たまに帰って来るが必要なことを少し話すだけだった。そんな中で父さんが殺人で捕まってしまった。あの時は父さんのことを疑ってしまった。しかし、時間が経つにつれ父さんが人を殺す訳がないと信じられるようになった。もしかしたら、俺自身が殺人鬼の息子というレッテルが嫌だったから、そう考えるようになったのかもしれないが。


「氷雨は知らないだろうが、お前の母の家の武田家は古くから力を持つ名家だった。つまり母の武田(れい)はお嬢様という訳だ。そして、氷雨の祖父である武田雷斗(らいと)と母である春風零はほぼ同時に事故で亡くなった。俺は初め、泣くだけだった。しかし、氷雨をしっかりと育てようと考えていた。だがある日、武田家の方から妙な噂を聞いたんだ」


「噂?」


「ああ、2人は事故死ではなく他殺だと。俺はそれを聞くと怒りが湧いてきた。そして、それについて調べまくっていた。武田家のつながりから情報屋も知っていたからな。だが、半ばで俺は濡れ衣を着せられたって訳だ」


俺は反応できなかった。俺が生まれてすぐに亡くなった母や祖父のことを始めて知った。父さんがいなくなった理由が分かった。なにより、父さんが人を殺していないと分かった。それだけで俺は救われた気がした。


「ごめんな、氷雨。一人にして、殺人鬼の息子にして。辛かったよな。苦しかったよ。俺のことを恨んだよな。本当にごめんなさい」


サンドラが、父さんが泣きながら謝る。


「いいんだよ、父さん。俺は父さんに会えたことがなにより嬉しい。確かに前は辛かったけど、今一緒に居られている。それが何よりも嬉しい」


俺も感極まって泣きながら父さんと抱き合った。

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