第51話 クリスの決意
チヒロ、ネヴィー、神樹様はイシューラと向かい合う。そのイシューラも左腕が肩から失い、全身に切り傷や火傷を負っている。
「クソ!想定外だ。なんだあの化け物は」
イシューラもこの深手は予想外のようでいらだっている。
「ここまでのようだな。諦めろ」
「クリス、君は私が素直に諦めると思っているのか?」
チヒロとイシューラの接近戦の途中で援護をしようとしたネヴィーに対して、イシューラが血の弾丸を飛ばす。
「ぐっ!腕が」
それがネヴィーの利き腕に当たる。これで複雑な戦闘が難しくなる。イシューラとサンドラが戦闘中に体力の回復をしていたチヒロも既に息が上がってきている。
その状況を冷静に神樹様が分析する。
(まずいな。このままではチヒロとネヴィーが死ぬ)
その時、サンドラの瀕死の姿を思い出す。
(覚悟を決めろ!もうやるしかない)
神樹様が深呼吸をする。
「チヒロ、ネヴィー下がっていろ!ここからは私がやる」
神樹様がイシューラに突っ込み殴りかかる。
「ふん、やっとやる気になったか」
「1万年前にお前が我々の元から離れて今まで、ずっと考えていた。いつかまた仲間に戻ってくるのではないか?共に語り合えるのではないか?と。しかし、それはもう無理だ。分かっていた。理解していた。なのにそんな願望にすがりついていた。その私の弱さのせいで多くの者が傷つき、死んでいった。だからもう…望まない。お前を…殺す!」
「私は1万年前にとっくにその決心はしていた」
そこからは二人の戦いとなった。血の弾丸を樹木で防ぎ、樹木や魔術を防御結界で防ぐ。お互いに矛よりも盾のほうが強く決定打がない。レベルの高い戦いの割には地味なものであろう。しかし、時間が経つにつれてどちらが優勢か目に見えるようになってくる。
「ぐはっ!」
サンドラとの戦いの負傷があまりにも大きすぎたようだ。普通ならば出血死していてもおかしくない。それを身体強化で無理やり動かしているだけだ。イシューラは繊細さを欠き、押されている。
「竜巻」
そこに神樹様が一点集中の魔術を至近距離で放つ。
「うご!」
イシューラは吐血しながらついに倒れた。
「ここまでか」
イシューラを見下ろす神樹様の顔や体にも多くの傷が見えることからもイシューラの強さがうかがえる。
「最後に聞こう。本当に戻っては来ないのか?」
「何を今さら。分かっているだろう?私はもう戻れないとこまできてしまった。それにザウス様のお考えが間違っているとは今でも思っていない。私たちの道はあの日に分かれたのだ」
「だが私はまた…皆と」
「クリスも言っていただろう。叶わぬ願いなのだ。だからそんな顔するな」
神樹様、クリスの瞳には涙が浮かんでいた。
「ああ、先にあの世でパテックによろしく言っておいてくれ」
「それはどうかな。俺はパテックと違う場所、地獄に行くことになるだろうからな」
「それでは待っていてくれ。私が必ず会いに行くから」
「そうか、楽しみにしておこう」
「それではな。愛していたよ」
「俺もだ。クリス」
クリスは樹木を剣のように鋭くし、イシューラの首を斬った。
イシューラ一人に対してヒサメやサンドラの他、多くの森の民が重傷を負い、亡くなっていった者も少なくない。だが、多くの犠牲を払いながらも打ち取った。
「クッ!馬鹿…」
神樹様はイシューラの死体を見ながら涙をこぼす。
長かったイシューラ戦も決着しましたね。3章はあと少し続きます。
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