第50話 サンドラの怒り
「おい、てめぇ。ヒサメに俺の息子に何してやがる」
サンドラ?息子?どういう…。
俺はそのまま意識を失った。
サンドラの身体は魔人化により緑色に淡く光る。
「マルコ!ヒサメの治療を頼む!」
魔術が効かない相手に攻め手を失っていたマルコにサンドラが声をかける。
「分かりました」
チヒロがマルコの元までヒサメを運ぶ。その際にイシューラが攻撃を仕掛けることはなかった。イシューラの眼にはサンドラしか写っていない。
「これほどまでの闘気。怒りがトリガーとなるタイプか。お前のトリガーがそこの小僧だったというわけか。だが、私に魔術の効果が薄いことは変わらない」
「うるせぇ」
イシューラの足元に樹木が生え、拘束しにくる。
「遅いわ!」
イシューラはそれを回避する。しかし、回避した先にはサンドラが突っ込んできた。
「読まれていたか。だが、それっ。ぶはぁ!」
サンドラは拳を硬めイシューラを殴った。
「魔術師が殴るだと!」
サンドラはそのまま至近距離からアクアキャノンを放つ。
「ぐっ!」
イシューラは防御結界を張るも破られ、傷を負っている肩に当たる。
「どんな威力をしている!肩が砕けたぞ」
イシューラは血を飛ばす。
「魔力干渉」
だが、サンドラはその血を操りイシューラに飛ばす。
「何!」
イシューラはギリギリでよける。
サンドラがまた魔術を発動する態勢に入る。
「なめるなよ!」
イシューラはそれを防ぐためサンドラに突進する。イシューラが剣を振るうも空を斬る。
「何?どこに行った?」
すると、イシューラの背中にコツンと何かが当たる。
「死ね」
それはサンドラの杖だ。杖から樹木が槍のように伸びイシューラを完全に捉える。
「上手い。あのタイミングで転移魔術か。イシューラからは理解できないだろう。それにしてもサンドラはここまで強いのか。いや怒りでリミッターが壊れているな。もはやイシューラよりも化け物だ」
神樹様が呟く。
イシューラは樹木に突き刺されながら吹き飛ぶ。そして、木に激突した。
「ぐはぁ」
だが、それで終わらない。樹木はイシューラを完全に拘束し自由を奪う。
「また封印でもするつもりか?」
「するわけないだろう。言っただろう?殺すと」
サンドラは最大限に魔力を杖に込める。今にも暴発しそうなくらいだ。しかし、サンドラは完全な魔力制御でコントロールしている。それを杖を通して樹木に注ぐ。
「魔力干渉・爆破」
それを一気に爆発させた。あまりの威力に大地が揺れる。サンドラは防御結界を展開し、自身や仲間を守る。
爆発の煙が徐々に収まる。煙の中から男が出てくる。
「よくもやってくれたな。防御結界が意味をなさないとは」
男、イシューラは片腕がなく、全身ボロボロだった。
「生きていたか」
サンドラが歩み寄ろうとした時だった。
「がはっ」
サンドラが血を吐いた。そして、身体から血や魔力が噴き出す。
「まずい!限界だ。魔力がサンドラの身体の中で暴れている。サンドラ!魔人化を解け!魔力回路がボロボロになるぞ」
危機を察知した神樹様が呼びかける。
「まだだ。あいつは生きている」
だが、サンドラはそれを無視する。
「どうやら、お前のその力は相当無理をしているようだな。ならば、あと少し耐え抜けばいいだけだ」
イシューラは剣を振るう。サンドラはそれを防御結界で守る。間に風の刃を飛ばす。
しかし、サンドラの動きは一秒ごとに悪くなる。
「やめろ!サンドラ!死ぬぞ!」
サンドラがついに膝をつく。サンドラの緑の光もなくなっている。
「限界か?てこずらせやがって。死ね」
だが、神樹様が樹木を操り防いだ。
「ヤァ!」
間髪入れずにチヒロが攻撃し、ネヴィーが援護に回る。イシューラが弱っているためか二人だけにもかかわらず圧倒出来ていない。
「大丈夫か?」
「今度は氷雨を守るって誓ったんだ。簡単に…死ねるか」
「分かっている。死なせない」
神樹様が回復魔術をサンドラに行う。目に見える傷は回復していくが、魔力回路は回復しない。
「魔力回路の修復はすぐには無理だ。お前のスキルで徐々に回復するが、今回はリタイヤだ」
言い終わる前にサンドラも気を失ってしまう。
「かなり数が減ったな。残ったのは私とネヴィー、チヒロだけか。だが、皆がここまで追い込んでくれたんだ。絶対に負けはしない!」
神樹様が前線に戻って行く。




