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第44話 怪物の魔法

「ちっ!浅かったか」

イシューラによって俺は胸を斬られたが、寸でのところで後ろに下がりダメージを最小限に抑えていた。しかし、何なんだいきなり。裏切り者?意味が分からない。だが、考える間もなくイシューラの攻撃がくる。


一撃が重い。それに、なんて正確な剣筋なんだろうか。


俺はじりじりと押され始める。

「ヒサメばかり見すぎ。周りにはあなたの敵ばかりだよ」

ネヴィーが矢を射る。それをイシューラはちらりと確認したと思ったらすぐに視線を俺に戻した。矢はイシューラに当たるもはじかれてしまう。

「むっ!さっきからなにこれ?」


そこにブルーとチヒロが駆けつけた。ブルーは背にある大きな(おの)を手に持ち、振りかざす。

「おら!真っ二つになれや」

イシューラはそれをサイドステップでかわす。

「ハッ!」

イシューラが着地した瞬間をチヒロが狙う。


上手い。これは流石に(かわ)せないだろう。


イシューラは腕で防御するも、チヒロの拳の威力を殺しきれずに吹き飛んだ。

「なに!この力は」

その隙を逃さず、その場にいたものたちが襲いかかった。

「邪魔だ!」

それをイシューラはものともせず切り捨てる。


「おい、そこの女!お前の魔法はなんだ?」

「ま、魔法?スキルのこと?何で教えないといけないの?」

「そうか、やはり魔法を使っているのか」

「あっ!」


イシューラはチヒロもスキルを使っていると確信を持つ。

「どういうことだ?なぜ二人も…」

イシューラは突然考えこむ。


「よくもやりやがったな」

俺が振った剣をイシューラは受け流し、そのまま斬り合いになる。

「お前の魔法とやらは矢や魔術のような離れた一定以下の威力の攻撃を無効化することか?」

イシューラのスキルを考察する。イシューラは顔をしかめながらも話す。

「大体正解と言ってもいいか?私の魔法は私から離れれば離れるほど攻撃の威力を減少させるものだ。あんなに遠くから放っても私には傷一つもつけられない」


「なるほど、強力な魔法だな」

「そうでもないさ。接近戦ではほとんど役に立たないから、このざまだ」


イシューラは先ほどから何度も動きづらそうにしている。それもそのはずだ。イシューラの右肩から胸にかけて大きく斬られている。おそらくは封印前のものだろう。


「それに、この魔法をもろともしない化け物もいる」

「俺からしたらお前も化け物だよ。何でそのケガで動けるんだ?」

「身体強化で無理やり動かしている」

「なるほどね」


「では、今度はこちらから問おう、裏切り者。お前たちは何人いる?」

俺は質問の意味が理解できなかった。


その時、斬り合いの隙をつきブルーが攻撃する。

「おら!」

「ちっ話の邪魔を」

イシューラは斧を最小限の動きでよける。

「遅い。それではただ斧を振り回しているだけだぞ」

イシューラは剣をブルーに突き刺した。

「ぐふっ!」

ブルーが吐血(とけつ)する。


「隊長!」

周りの人が叫ぶ。


「こんなものじゃ…やられねぇ」

ブルーは木を生やしてイシューラを拘束する。

「こんなものすぐに…」

「ハァァ!」

イシューラが拘束を解こうとする隙をチヒロが殴りこむ。それは木を(くだ)き、イシューラを吹き飛ばす。


「ぐふっ。はぁ、はぁ」

相手の消耗は激しいようだ。しかし、俺たちは攻撃の手を緩めることはない。すぐさまイシューラを囲んだ。


「流石にこの傷でこの相手はまずい。それに、それなりの強者も何人かいる。それに…まだあいつが出てきていない」

イシューラはちらりと神樹様を見る。

「使いたくない手だったが」


そして六人の剣士たちがイシューラに斬りかかる。

「うおおぉぉぉー」

イシューラはよけることもなく、六本の剣が全てイシューラを貫いた。


「やったか」

誰もがそう思ったことだろう。その時だった、マルコが叫ぶ。

「お前ら全員引け!」

しかし、時すでに遅し。突然イシューラの身体中から赤黒い何かが四方八方に弾丸のように飛び散った。

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