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厄災の子 ~運命に負けて異世界に行く~  作者: 香川寿太郎
第一章 始まりの街 ビギン
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第4話 スキル発動

翌朝、冒険者ギルドが所有する訓練場にやって来た。

氷雨(ヒサメ)、まずは俺たち新人(あらびと)の種族特性(とくせい)を教えよう。

俺たちの体は転生時に、この世界の空気中の魔力から作られた。だから、魔術適正が(きわ)めて高い。

しかし、空気中の希薄(きはく)な魔力から作られるせいか知らんが魔力量が少ない」


「なんか残念(ざんねん)な種族だな」


「まあな、俺の場合はスキルがあったから魔術も使えるがな」


「? サンドラはどんなスキルを(もら)ったんだ?」


「俺のスキルは全魔力的(ぜんまりょくてき)能力(のうりょく)上昇(じょうしょう)だ。

このスキルを使えば、少ない魔力量で強力(きょうりょく)な魔術を使える。それに魔力操作(まりょくそうさ)精度(せいど)も上がるし、魔力回復速度も速い」


サンドラの説明を聞いて不思議(ふしぎ)に思ったことがあった。いくら、そのスキルがあったとしても、そのスキルで魔力を消費してしまうのではないか?、と。

「でも、スキルも魔力を使うんだろ?」


「そうだ。だが、スキルは体外に出さずに触媒(しょくばい)として使うから、魔力消費はないんだ」


「なるほどな、魔力は必要だが消費はないっと」


「で、ヒサメはどんなスキルをもらったんだ?」


千変万化(せんぺんばんか)の腕だ」


「おおう!…おお…う?なんだそりゃ?」

サンドラが見当もつかないといった顔で首を(かし)げる。


「俺の腕と、腕からの魔力を手に()れた物質(ぶっしつ)に変えられる、って能力だ」

そうして、俺はサンドラに説明をする。


「何となく…分かった」


絶対に分かってないなこれ。

「実際にやった方がいいかな?ええっと、スキルってどうやって使うんだ?」


「そうだな。まず初めに魔力を感じ取るところだな」


すると、サンドラは俺の胸に手を置いた。

「何しーーグッ、うぁ!?」

胸が、身体が熱い、力が(あふ)れるみたいだ。


「今、ヒサメの魔力を無理やりに循環(じゅんかん)させている。

運動している時に心臓がどっくん、どっくんとするのを感じるだろう?

それの魔力バージョンだ。どうだ、理解できたか?」


「ああ、分かった。何かが身体中を()(めぐ)っているのをかんじるよ」

俺は石を拾って、まだ安定はしないがなんとか手に魔力を集中させる。すると、手から腕にかけて、石に変化していく。

「できた」


「おう、よくできたな。そして、俺もやっとスキルが理解できた」

サンドラが満足そうな顔をしている。


「あ、やっぱり分かってなかったんだ」


俺がそう言うと、サンドラは顔を(そむ)けた。

「う、うるさい。それよりも、それは石を手から離してもいいのか?」


「いや、腕から離すと元に戻る」

石を離し、腕を戻す。


「なるほど。少し検証(けんしょう)が必要だな」


再度(さいど)石を持って魔力を肘、肩、胸まで広げても、変化があったのは肩までだった。

「肩から先はかわりそうにない」


「まあ、千変万化(せんぺんばんか)の腕だからな。確か、腕から出した魔力も変えられるんだったな」


「やってみる」

俺は魔力を伸ばすと、石棒(せきぼう)となった。


「確か、ヒサメのスキルは水や炎とか形のないやつでも出来るんだよな?

でも、手に触れてもすぐに落ちたり消えたりするから使えないんじゃないか?」


「それなら多分大丈夫だ。水をくれないか?」


「ああ」

するとサンドラは水の入った竹筒(たけづつ)を渡してくれた。

俺は中の水を手に少し出してスキルを発動すると、俺の腕が水になった。


「ほら、スキルを使っている時は対象と手が一体化させてるから俺がスキルを解除(かいじょ)しない限り大丈夫みたいだ」

そして、俺はスキルを発動して分かったことがある。

「サンドラ、ナイフを()してくれないか」


「ああ、どうして?」

「まあまあ、いいからさ」

サンドラは戸惑(とまど)いながらも(ふところ)から小さいナイフを取り出して渡してくれた。


「よし」

俺はナイフを水状態の腕に()した。


「おいヒサメ、何してんだ!?」

サンドラはいきなりのことで(おどろ)いた顔をする。

だが、俺はナイフを()く。すると、ナイフが()さっていた場所に水が()たされ、腕の形が元の状態に戻る。スキル解除後(かいじょご)傷一(きずひと)つもなかった。


「どうなっている?切ったはずなのにそのままだ」


「切られて、()けた部分を魔力で(おぎな)えば治る、らしい」

やはり、自分の身体のことだからか、なんとなくスキルのことも理解できる。


「それは、何というか、ズルい気もするな」


「だが、魔法のような直接的(ちょくせつてき)戦闘能力(せんとうのうりょく)はないからな。俺はサンドラのスキルの方がいいな」


「ま、それはこれからに期待だな」


一度、昼食を食べてから色々と実験をした。

そうして分かったことは、火をする時に火傷(やけど)するかと思ったが、それはなかった。

耐性(たいせい)がつくのだろう。毒とかにも有効ならかなり有能(ゆうのう)だな。


そして、魔力で作れるものは自由自在(じゆうじざい)で剣にも盾にもなった。

また、左右(さゆう)の手で水や火と別々ものに変化も可能だ。





そうして、一通り試すとサンドラは腕を組んで考える。

「それじゃ、お前は遠距離タイプじゃなくて、近距離タイプだな。

魔力量も少ないだろうから、魔術もそんなに使えないだろうしな」


その言葉にショックを受ける。

「え!?俺魔法使えないのか?」


「いや、ヒサメに使える魔術がある。それは身体強化だ。剣士などからは闘気(とうき)と呼ばれる魔術だ。効果は筋力や防御力が上がる」


「中々実用的だな。けど、なんでその魔法は使えるんだ?」


「それはな、普通の魔術とは違い、魔力を体外に放出しないからだ。身体強化は肉体に魔力を循環(じゅんかん)浸透(しんとう)させて発動する。だから、魔力消費量がほとんどない。

まあ、全魔術(ぜんまじゅつ)基礎(きそ)の基礎である魔力操作の一つだな」


「魔力の循環(じゅんかん)か」

そうして俺は、さっきサンドラにしてもらった魔力の循環(じゅんかん)をして、その速度をあげる。

すると、身体がズッシリと力強く、それでいて重いとも感じない、不思議(ふしぎ)感覚(かんかく)になる。


試しに、ジャンプすると1メートル近く跳躍(ちょうやく)した。特に(きた)えていないのにこれだ。結構すごい魔法だ。だが、

「なんとなく出来たが、これをずっとか。はぁはぁ、しんどいな」

すぐに息が切れてしまった。


「それは慣れだ、慣れ。そのうち、無意識にできるようになるさ。

さて、もうすぐ日も()れる。宿(やど)にもどるぞ」





宿に戻り、夕食を終えた後はサンドラに

「文字は覚えた方がいいぞ。(さいわ)い、この世界には共通語があるから、それさえ覚えれば大体(だいたい)どこでも大丈夫だ」

と、言って数冊(すうさつ)の本を渡された。

この世界の言語は日本語に()ていて、(さら)にこの転生体の記憶力がいいため、すぐに簡単な単語は覚えた。


勉強をしている最中、コンコンっとドアを鳴らす音がした。

「ヒサメ、いまいいか?」

「サンドラ?いいぞ」


サンドラが入ってくると、顔を(ゆが)めながら、ため息をつきながら言う。

「今日のことでヒサメが近距離タイプ、剣術や体術の方が(てき)していると分かっただろ?

だが、俺は魔術師だ。接近戦といったら、前世でケンカしたことぐらいだからな。だから、(まこと)遺憾(いかん)ながらお前に師匠(ししょう)になってくれる…だろう人を呼んでくる」


「何でそんな反応?」

俺は疑問に思って聞く。


「個人的にちょっと苦手なんだよ。(すご)くグイグイくる」


サンドラにグイグイくると言わせる人は何者だろうか?

「で、どんな人なの」


「ああ、俺たちと同じ異世界人だ。剣術、体術などの接近戦において、あいつの右に出るものはいないからな」


これまたサンドラにそこまで言わせるとは。

「その人は近くにいるのか?」


「いや、結構遠くにいるって聞いている」


「じゃあ、結構時間かかるのか?」


「いや、俺は転移魔術(てんいまじゅつ)を使えるからな。2,3日くらいで戻って来れる」


「転移魔術って、また(すご)い魔法だな」


「いや、この魔術は複雑(ふくざつ)で魔力操作に集中しないといけないし、魔力消費量も多くって一日一回が限度だ。それに最大転移人数も俺を含めて3人までだしな」


「それでも、充分(じゅうぶん)便利だと思うけどな」


「それは、否定しない。

とりあえず、そういうことだから、その間に勉強やら、魔術の練習やら、冒険者の依頼やら好きに過ごせ。

この辺りはまだ大丈夫だが、森の(おく)には強い魔物とかいるから気をつけろ」


「りょーかい」


「じゃあ行ってくる」

サンドラはそう言うと俺の目の前から姿を消した。

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