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第38話 サンドラとヒサメ

「サンドラはこの秘術を身につけてもらう」

「いや、二度言われてもな」


神樹様は俺に杖を生み出す秘術を身につけるように言っている。しかし、それは神樹様が五千年もかけて作りだしたものだ。10日足らずで身に付けられるものではない。


「無理を言っているのは分かっている。しかし、戦力はいくらあっても足りない」

「それほどなのか?イシューラとやらは?」

「ああ、正直に言って封印の実がない今では倒せるかどうかも怪しい」


イシューラ、神樹様にここまで言わせるとは。シズクを連れてきたいほどだ。


「分かった、やってみよう。でも俺は実なんてもってないぞ」

「それは大丈夫だ。サンドラにはこれを与えよう」

そうして出してきたのは黄金の林檎(りんご)だった。


「これは回復の実か」

「そうだ。大戦が終わった時に貰ったものでな」


この実をまた見ることになるとはな。


「その秘術はどうすればいいんだ?」

「基本的にはいつもの木を生やす秘術と変わらない。この実には神樹の魔力が宿っている。そこに自分の魔力を混ぜて、オリジナルの神樹の杖を作る」


「簡単そうに聞こえるが?」

「これが簡単じゃないんだな。まずは神樹の魔力に負けない魔力が必要になってくる。それに劣化版とはいえ魔法…スキルの再現だ。繊細な魔力操作が必要なんだが…お前はこれに関しては問題ないだろう」


「つまり、強い魔力が必要というわけだな」

「そうなるな」

「了解した」

早速、修行を始めようとしたが魔人化の反動で今日は諦めることにした。


飯を食べて宿に戻ったらヒサメだけだった。

「ヒサメだけか?」

「ああ、マルコはまだ修行中でチヒロは瞑想(めいそう)してくるって」

「そうか」


ヒサメと二人か…本当に懐かしい気分だ。前にもこうしていたな。


「サンドラ?どうしたんだ?」

「ん?いや、少し疲れているだけだ」

すると、ヒサメは下を向いてしまった。

「ごめんな、サンドラ。いつも頼りきりで。俺がもっと強ければ」


ヒサメはいつもそんなことを思っていたのか。俺の方こそお前に何も出来なくて申し訳ないと思っていたのだがな。


「ヒサメが気にすることじゃない。お前は…子供なんだから」

「む!確かにこっちでは16歳くらいの見た目だけど、元の世界では自立した大人だったんだ!大体この世界は16で成人つまり、大人なんだ」


「そうか、大人だったのか。それは見たいものだ」

「信じてないな!」


「ふっ、はっはは。悪かった。信じているよ」

ヒサメが驚いたような顔でこっちを見る。

「なんだよ?」

「いや、サンドラが笑うのってあんまりないからさ」

「そうか?」

「そうだよ」


自覚していなかったが、俺は笑えていなかったのか。


「話が変わるがヒサメのスキルってどうゆう風に使ってるんだ?」

「千変万化の腕か?どうして急に?」

「少し修行の参考にと思ってな」

「修行?」


俺は神樹様から聞いたことをヒサメに教えた。

「スキルが魔法と呼ばれていたとは。それで、俺のスキルを魔術化したものを習得しようとしているわけか」

「そうだ」

「スキルの使い方と言ってもよく分からないから抽象的な説明になるけどいいか?」

「教えてくれるのか、ありがとうな」

「いいよ、サンドラには世話になっているしな」

「お互い様ってことか」


「使い方は、何かを手に持ってスキルを使おうとすると、その物質をなんとなく理解できるんだ。例えば、このアダマンタイトの指輪は堅そうとか、ミスリルは魔力をよく通すなとか。俺が頭で理解できるのはこれだけなんだけど、多分その物質に関してスキルが完璧に理解しているんだと思う。そこから腕や腕からの魔力をその物質にしているんだと思う」


「つまり、スキルが全自動で物質を解析(かいせき)してヒサメの考えているように物質化する。そして、その解析のごく一部の情報を得ていると」


「俺の予想だけどね」

「いや、参考になった。ありがとう。確かにスキルがないとできそうにない技だ」

「そうだな。それを実行する神樹様もヤバイけどな。武装強化よりも物質の理解度が求められているよな」

「そうだな」


物体の理解度か。俺は回復の実を食べたことがある。もしかしたら有利に働くかもしれない。


「サンドラ。もしよかったら俺の魔力制御の練習にも付き合ってくれよ」

「ああ、いいぞ」


そんな話をしていると、チヒロとマルコも帰ってきた。皆疲れているし、明日もあるため少し早いが眠ることにしたのだった。

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