第37話 神樹の杖
神樹様が神々しいまでのオーラを放つ杖を持つ。
「なんだ、それは?」
「これは秘術の一つだ」
「秘術とは植物魔術だけじゃないのか」
「そうだ」
それだけいうと神樹様が動く。植物魔術で俺を捕えようとする。
俺は火の魔術でそれを燃やそうとするも、燃え尽きる前に木が再生していく。
「噓だろ?」
とっさに転移魔術により脱出し、神樹様の背後をとる。魔人化しているうえに魔力回路に負担のかかる転移魔術を使った。もう俺に余力は残っていない。これがラストチャンスだ。
「オラ!ロックキャノン」
俺は最大威力の岩の魔術を神樹様にたたきこむ。しかし、神樹様のもつ杖のひとふりで魔術が消えてしまったのだ。
俺は魔術を使った反動で完全に動けなくなってしまった。その隙に神樹様は杖を俺の目の前に向ける。
「勝負ありだな」
こうして俺と神樹様の戦いは終わった。
俺は大の字に寝転がる。
「いって~。体中ヤバイ」
「どうした。前はそこまでじゃなかっただろ?」
「今回は魔人化だけじゃなくて転移魔術を使ったからな。魔力回路の負担が」
「それほどまでにか。そういや転移魔術は発動が遅くて戦闘中には使えないって言ってなかったか?」
「今回は転移先が近かったうえに魔人化してたからな。しかし、反動が大きいな。もうやらないでおくとするかな」
スキルの影響か、もう痛みは和らいできている。今まで、痛みに気を取られていて気付かなかったが、杖のオーラが消えていた。
「杖はどこにいったんだ?」
「もう戻したよ」
神樹様は小さな木の実を見せる。
「これがさっきのやつか?」
「これはその実だな」
「そういや秘術って言ってたな。どういうことだ?」
「そうだな。サンドラには話しておくか。なに、少し前の太古の話さ」
神樹様は語り始めた。
約1万年前に神界大戦という世界を揺るがす大きな出来事があった。詳しいことは私は里の守りを任されて戦争の前線にいなかったから知らない。しかし、ここ森の民の里にも戦争の火種が飛んできた。
神ザリウスの使者を名乗る者、イシューラが攻め込んできたのだ。それもたった一人でな。しかし、その男は強かった。主戦力が戦争に行っていたというのもあるが、一人に里を壊滅状態にさせられたからな。しかし、何とか簡易的にだが封印することができた。
そして大戦が終了した後に、この男の処分をどうするかについて話あった。我らがした封印などすぐに破られるのは目に見えているし、大戦後でこちらの戦力も大幅に削られていた。戦うことなど無理であった。そこで神樹という不思議な果実をつける木の存在に目を付けた。
その神樹も大戦によりほとんどの実を失ってしまい、今は強力な回復効果のある金の実しかできないようだがな。サンドラも見たんだろ?ある男の使い魔が守っている木だよ。
だが、当時は少し実が残っていてね。そのうちの一つ封印の実を貰ったんだ。そうして封印してできたのがあの世界樹ってわけだ。実をくれた男の話によると、神ザリウスもその実によって封印していて、この世界のどこかにあるとか。
だが、イシューラを封印した実は戦争で傷んだ神樹の実を使ったからかな?その封印がとけようとしている。
俺はいきなりのことばかりで驚いている。ラードーンが守っていた木が神樹で、この世界樹はその封印の実からできたと。
「しかし、それと杖の秘術とはどうつながるんだ?」
「まぁまぁ、そう焦るな。神樹はハッキリ言ってもう回復の実以外はつかないであろう状態であった。そして、その貴重な実の管理を私が任された。それがさっきの実だ。まぁ私が神樹様と呼ばれる理由だな」
「なるほどな。この実を秘術を使って大きくしたってわけだ」
「ああ。そして、その秘術はこの実と私の魔力を元に神樹の木を作りだす。それを杖として使っているわけだ。私は神樹の杖と言っている」
「実と魔力をもとに木を作りだす?ヒサメのスキルみたいだな」
「スキル?ああ、今はそう言われているんだったな」
「どういうことだ?」
「ふむ、この際だ。もう少し教えておこう。神樹は色んな実をつけると言ったろ?ではこの実は何の実だと思う?」
俺が知っている実は回復の実とさっきの話に出た封印の実だ。どちらも人智を超越したものだ。これも、凄い実なのだろう。
「さぁな」
「これはな魔法の実だ」
「魔法?」
それは魔術研究者が嫌っている魔術の別の言い方だったはずだが。
「そうだ。君らがスキルと言っているものだな」
「何?昔はスキルを魔法って言っていたのか」
それを一部の知識人が知っていたというわけか。それは研究者が嫌うわけだ。理解できないスキルを嫌うやつらだしな。そのことを何世代も伝わっていったのだろう。
「そう。この実を食べると魔法、スキルを身につけることができる。能力は食べるまで不明だけどな」
な!…スキルを後天的に身につけるだと。なんてものだ。
「魔法はそれこそ世界の始まりからあり、魔法が使えない者から尊敬と畏怖の目で見られていた。しかし、ヒトは誰しもが魔力をもつことが知り、自分も魔法が使えないか研究した。そうしてできたのが魔術だ。魔法の模倣と言っていいだろう。しかし、この魔術も全ての魔法を模倣できたわけではない。おまけに魔力も消費する。まぁ要するに魔術は魔法の下位互換ってことだ」
「魔術とスキル…魔法にそんな関係があったとは」
「チヒロといったか?そいつのスキルは皆がよく使う身体強化の魔術のもとだ。性能は違うがな」
「確かに似ていると思っていたが。じゃあ、杖の秘術はヒサメのスキルがもとか?」
「そうだな。だが、これも実による助けが大きい。他のものでは使えない。完全な劣化版だ」
「実による助け?」
「ああ、これは神樹の魔法の実だからな。力が眠っているわけだ。私はほんの少し力を解放しているだけだ」
それであれか。
「俺の魔術を消したのは?」
「あの杖の能力だな。魔術の能力向上と魔術の乗っ取りだ。つまり、消したわけだ」
「ふむ、これは俺のスキルに似ているか?」
「ああ、この杖があるから出来ることだがな。それでも杖創造の秘術の開発は五千年くらいかかったがな」
それほどの時間が。
「それよりも、おれらのようなスキルを持った奴が昔にいたんだな。どの文献にも載ってなかったが」
「いたよ。それもたった一人でな」
「一人で複数のスキルを?」
考えただけでも恐ろしい。もはや戦闘においてできないことはないくらいだ。
「そいつは私の友だった。前線で戦い。そして散っていった。あほな奴だ」
神樹様にそんな過去が。
「まあ私もあいつからそう言われていたな。私が前線にいなかったのも大戦が始まってすぐに前線で大けがをして神樹の回復の実を食べて反動で動けなかったからだし。否定はできないか」
反動?
「ああ、回復の実はな。私のような適性がない者が食べると、その回復量に体がついていかなくなる。すぐに化け物となるだろう。まぁ私は気合いで何とかしたがな。しかし、それでも凄い回復量だった。私はしばらくの間、傷ついてもすぐに回復したからな。そのせいで不死身のクリスと呼ばれたからな」
俺も食べたが特になんともないが…適性があったのか。
「あれ?なんの話だっけか?まぁいい。サンドラには戦力アップとしてこの秘術を身につけてもらうぞ」
「はぁ?」
神樹様が五千年かかった秘術を俺が?いや…無理だろ。
ヤバイ、主人公が最近出てない
てかサンドラの技多すぎる。もうサンドラが主人公やん




