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第33話 器

短め

ブルーバラがお婆様のところに行った後のことだ。俺とサンドラ、チヒロ、ネヴィースキが先ほどの戦いの感想を言っていた。

「それにしてもチヒロ強かったな!」

「あ、ありがとう、ヒサメ君。けど、ブルーさんは多分、普段は武器を持っているから、私に合わせてくれたんだと思うよ」

「え、そうなの?」

「うん、チヒロは正しい。師匠は(おの)をもって戦う」

「あいつは頭がキレるのに基本的に脳筋で解決するからな」

サンドラはブルーのことをよく知っているようだ。

「師匠が本気出したら、この里でも二番目に強い」

「へ~じゃあ一番目は神樹様。あの人だけは別格」


神樹様か。確かに貫禄(かんろく)を感じたけど、そんなに強いのか。サンドラの師匠だしな。


「話をしてたら神樹様だ」

チヒロが目をやる方向には神樹様、クリスが歩いてきていた。

「いや~遠くから見ていたが、ヒサメもチヒロも強かったな。嬉しい誤算だ」

見られていたのか。そんな気配は感じなかったが。

「ええっと、どこから見てたんですか?」

チヒロも見られていたことに驚いているようだ。

「あそこからだ」

指の先にあったのは、この里でも一際目立つ樹木、世界樹だった。

「あんな距離からですか?」

「ああ、目はいいほうでな」

チヒロが驚いたのは無理もない。世界樹はここからかなり離れている。向こうからこっちを見ると、人は豆粒ほどの大きさにしか見えないだろう。


「チヒロはかなり変わった技を使っていたな。ブルーがあんなに吹き飛ばされるとはな」

「は、はい。あれが私の流派ですので」

『見たことのない流派だな。新たにできたか?いや、もしくは…』

神樹様がぼそぼそつぶやいている。

「どうかしましたか?」

「いや、面白い流派だと思ってな。だが、器の完成にはまだまだかかりそうだ」

「器?」

「ああ、人にはそれぞれ生まれ持った才がある。ゆえに人それぞれ強さに限界が存在する。その限界を私は器と言っている。つまりチヒロの器は大きくて、まだまだ伸びしろがあるってことだ」


器か。人の伸びしろが分かるってことは、神樹様は目利きにも()けているってことか。

「そして君だ、ヒサメ。君の伸びしろは全然分からない」

いや、そうでもないのか?

「分からないとは?」

「そのままの意味だ。たまにいるんだ。器が存在しないんじゃないかって奴が」

「それはいくらでも強くなれるってことですか?」

「そうとは限らない。私が分からないだけで必ず限界はある。それが遅いか、早いかはわからんが。それにそういう奴は必ずといっていいほど、壁に激突する。だが、壁を破った者は化けるぞ。私は一人知っているからな」


壁…か。俺の剣術や体術はそれなりに成長していると思う。やはり、伸び悩んでいるのは魔力制御だ。結局、武装強化はスキルで作った剣にしか使えないから、師匠から貰った剣、緋色(ヒイロ)はあまり使えていない。それに魔術を使った剣術も一振りで暴発してしまうから、連撃ができない。魔力量が少ないから鍛錬の時間が少ないというのもあるが。


「その壁を破る方法は知っていますか」

「それは人それぞれだろう。私の知っている奴はただひたすらに自分を追い込んでいた」

「そうですか。では、これからも頑張りますね」

「うむ」

「ところで神樹様はどうしてここに?」

「そうだった。少しサンドラを借りていくぞ」

「俺に何かようか?」

「弟子として、出ていった後の話をしてもらうだけだ」

「なんだそりゃ」

「と、言うわけだ。またな」

そういうと二人は去っていく。


「ヒサメ。何か壁にぶつかっている?」

ネヴィーが聞く。思ったよりも人の顔を見ているようだ。

「ああ、魔力制御が上手くいかなくてな」

「魔力制御は魔術の基本。それゆえに難しい」

ネヴィーはうーんっと顔を傾ける。

「考えてくれているのか?ありがとうな」

「私は優しい。もっと褒めるといい」

ネヴィーは胸を張っている。表情があまり動かないが言葉遣いと身振り手振りで感情が表れている。

「ええっと、私もまだ魔力制御が上手く出来なくて、スキルもなかなか上手く使えてないから。一緒に頑張ろう」

チヒロからも応援が入る。神樹様もひたすら頑張るしかないって言ってたしな。頑張るしかないだろう。

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