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第31話 VSエルフ

一人のエルフに対戦を挑まれた俺は模擬戦用の木剣を借りて、向かい合う。

「そういえば、名前は?」

「名乗る必要、ない」

「じゃあ、俺が勝ったら教えてくれ」

「いいよ」

それだけ言うと、二人とも剣を構える。


先に動いたのは俺だった。剣の間合いまで相手との距離を詰め寄る。

「え、速い」

エルフが声を漏らす。俺は相手に攻撃の隙を与えないように攻めたてる。

「調子に乗り過ぎ」

そう彼女が呟いた次の瞬間、俺の足元が揺れる。

「な、なんだ」

俺は咄嗟(とっさ)に後ろに回避する。すると俺がさっきまでいた場所には一本の木が生える。

「これは植物の魔術か?」

「そう。森の民に代々伝わっている秘術」


女性はそう言いながらも木の枝で俺を捕えようとしてくる。枝を切り捨てようとするも木剣であり、武装強化もできていないために斬ることができない。

「これをかいくぐっていかないとな」

再び接近戦に持ち込むために俺は距離を詰めようとし、目の前の木を受け流す。しかし、少し彼女から視線を切った瞬間に彼女はいなくなっていた。

「あれ?どこ行った?」

すると、木の枝の陰からいきなり彼女が出てきた。

「別に接近戦は苦手とは言ってない」

俺は彼女の斬撃に木剣を滑りこませて防ぐ。


なんとか距離をとるが、態勢を崩してしまい片手が地面についてしまう。

「悪いけど、地面からの攻撃は俺の十八番(おはこ)なんだ」

俺はいつものように地面に魔力を流し、地面を針のようにして攻撃する。

「秘術は地面に魔力を流す、地面の魔力には敏感」

彼女はまるで予知していたかのように(かわ)す。流れるように彼女は弓を射る。俺はそれを打ち落とすが一本左腕に当たる。

里に入った時も思ったが、矢が精確すぎる。

「やっぱりこの程度か」

矢を防ぐために、俺は木の陰に隠れて体勢を整える。


少しずつ矢を射ってくるタイミングが分かってきた。俺はタイミングをみて木の陰から飛び出る。その間にも矢が飛んでくる。しかし、俺は()けたり、剣で撃ち落としたりして防ぐ。

「むっ!」

彼女は矢を諦めて素早く木剣を持つ。そのまま接近戦に流れ込む。接近戦ならこっちに分がある。じりじりと詰め寄る。すると、彼女は体勢を崩す。

「わっ!」

俺はその隙を逃さず、彼女に向かって剣を振り落とす。しかし、彼女には植物の魔術がある。俺の剣が樹木によって(さえぎ)られ、しかもそのまま俺の剣を掴んでしまった。俺は片腕が負傷しているために木を振りほどけない。木をスキルで伸ばそうと考えるも、俺のスキルの速さよりも彼女の魔術の方が速いため恐らく成功しないだろう。


俺は木剣を手放すと木の間をすり抜けて、彼女の胴体に向けて蹴りを放つ。彼女はそれにも超反応で剣を間に入れる。

「木剣なんかで俺の蹴りが止められるか!」

俺は木剣ごと彼女を蹴り飛ばした。


「ゲホッゲホッ!」

彼女は咳き込みながらも立ち上がった。

「あれでも立つのか」

俺は拳を前にして構える。しかし、彼女は両手を挙げる。

「参った。これは命の取り合いでも心身を鍛える修業でもない。ただの手合わせ。もう、この辺で充分。私はあなたを認める」


それもそうか。

「とりあえず認められたってことかな。ええっと結構思いっきり蹴ったけど大丈夫?」

「平気、これでも鍛えている。それに私もヒサメの腕を射った。ごめん」

「勝負だし、気にしてないよ。魔術をかけてもらったら治るから」

「ん、任せて」

彼女は俺の腕を触ると治癒魔術をかけてくれた。

「治癒魔術もできるんだ」

「うん、少しだけだけど」

そこから少し無言の時が流れる。魔術をかけ終わったのか彼女は手を止める。腕を伸ばして確かめるも痛みはない。

「ありがとう。治ったよ」

「ネヴィースキ」

「え?」

「私の名前。皆はネヴィーって呼ぶ」

「そうか、ありがとう。ネヴィー」

「うん、これからよろしく。ヒサメ」


ネヴィースキは俺に背を向けると、チヒロとブルーバラの方へと歩いて行った。

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