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第30話 勝負を挑まれる

怪物イシューラの封印が解けるまで、後10日。

「よし、色々あって混乱しているだろうが、俺たちはできることをしよう」

サンドラがいつも通りリーダーとして指揮をとる。

「まずはチヒロ、君の能力を教えてほしい。さっきの弓矢のことでそれなりに動けることが分かったが、スキルはなんだ?」

「ええっと、全肉体的能力向上です」

「ふむ、名前から俺のスキルのフィジカルバージョンってとこかな。まあ、なんにせよ魔力を感じることができないと話にならないな。これから魔力について説明する」

「はい、よろしくお願いします」

「魔力ってのは、この世界のどこにでも存在する物質で、俺たちの肉体の中にも存在する。その魔力を使って魔術やスキルを発動する。まずは魔力を感じとるところから始めよう」


「なあ、魔力を知らなかったことについては何も言わないが、今から魔力を感じ取るところからやって十日でスキルを使えるようになるのか?」

サンドラとチヒロの様子を見てマルコが疑問に思ったようだ。しかし、俺たち新人(あらびと)は魔術適正がずば抜けている。

「まあ、多分なんとかなるだろう」

「ヒサメがそう言うならきっとなんとかなるんだろう」


「サンドラさん、魔力ってさっきから身体を動かそうとすると変な感じがするやつですか?」

「なに!何の説明もなく、感じ取ることができたのか?試しにそれを意識して見てくれ。マルコ、すまないがスキルでチヒロの魔力を見てやってくれ」

「分かりました」

サンドラに頼られたのが嬉しかったのか笑顔で向かっていくマルコはスキル魔視を有していて魔力を見ることができる。

「よし、チヒロ始めてくれ」

サンドラの合図とともにチヒロは目を閉じて精神を落ち着かせて、魔力を感じ取る。

「魔力の流れが変わりました。恐らく魔力を感じ取れています」

「よし、チヒロ、それを動かせるか?」

「はい、分かりました」

「これは…凄い。綺麗に魔力が流れています」


まさか一発で出来るなんて。俺よりも確実に才能があるな。

「これほど早く魔力を感じ取るとはな」

サンドラも驚いたようだ。

「ええっと、多分それは私が中国拳法をやっていたからだと」

そういえば、そんなこと言ってたな。早口で大量に言われたからすっかり忘れていた。

「その中国拳法ってのと魔力なんの関係があるんだ?」

マルコが聞く。

「ええっと、中国拳法は身体の外だけでなくて中も鍛えるの」

「身体の中を鍛える?精神的な?」

「精神的なことも鍛えるけど、この場合は違って気って言って、身体の中にどういう力が働いているか、どういう力を発するべきかのことで」

地球出身の俺とサンドラはなんとなく理解しているが、マルコは理解できていないみたいだ。


「ええっと、今からマルコさんを転がしてもいいですか?」

「うん?それで理解できるんならいいけど」

するとチヒロはマルコの手首を握る、次の瞬間にはマルコは地面に転がっていた。

「な、何が?別に力で転ばされたわけじゃなかった」

「ええと、最小の力で最大の攻撃をするために身体の中にも意識しているんです。それで、いつもみたいに中に意識すると、気とは違う何かが気と重なってあることに気づいて。ずっと違和感があったんです」

この説明で少しマルコも納得したようだ。それにしても気か、同じ武闘家としては少し試してみたいものだ。


「それで、その魔力を使ってスキルは発動できそうか?」

これはサンドラだ。

「ええっと、まだスキルっていうのをよく理解出来なくて。すいません」

「いや、身体全体で発現させるスキルは部分的なものよりも難易度が高い焦ることはないだろう」


それから数時間によるサンドラのスキル口座によってチヒロはスキルを発言できるようになった。しかし、スキル全肉体的能力向上の効果が高くて身体に振り回されてしまっていた。

しかし、もう日も暮れてきたので切り上げることとなった。初日にスキルの発動までできたのだ上等だろう。そのことをマルコに言うと、

「君たちといると自分に才能がないと思ってしまうよ」

と言われた。どうやら魔力を感じ取るのはそれなりの難易度で一般的に1ヶ月はかかるらしい。改めて新人(あらびと)のスペックの高さを感じた。

「しかし、チヒロも君と同じく魔力量が少ない。魔術師になることはないだろう」

そして、チヒロも転生初日から色々ありすぎたせいで疲れたのだろう、直ぐに眠ってしまった。


次の日、チヒロはスキルを使っている時の自身の意識と身体のずれを直すための訓練をしていた。

「その動きは?」

「あ、ヒサメ君。これは中国拳法の型の一つで」


そういえば、俺も最初の時はずっと型の繰り返しだったな。最近はスキルの技の練習ばっかりになってしまっていた。少し初心に戻って俺も型の練習でもするか。


俺はチヒロの隣で全極拳の型を繰り返す。

「ヒサメ君は剣だけでなくて体術もできるの?」

「うん、師匠に教えてもらってね」

「師匠?」

「チヒロと違って、この世界に来てからの師匠だけどね。武田雫っていうんだけど、凄く強いんだ」

『女の名前』

チヒロが何か言ったが、よく聞き取れなかった。

「何か言った?」

「い、いや何も。私もその人にあってみたいなって」

「次の目的地が師匠のところだからまた会えると思うよ」

「そう…なんだ」

チヒロが少し落ち込んでしまった。師匠の話で前世を思い出してしまったのだろうか。俺は全く前世に未練はないが、それでも時々思い出してしまうからな。ここはなんとか(はげ)まさないと。


「チヒロ、もうスキルの使い方を結構できてきているじゃないか」

「うん、少し慣れてきた。でも実際に相手がいないと分かりにくいところもあって」

「じゃあ、俺が相手してもいいか?」

「え?ヒサメ君を相手になんてできないよ」

チヒロは俺を相手にすることを嫌がる。おそらく過去に俺がいじめをかばったことが原因だろうが。

すると、背後から二人のエルフが現れる。

「なら、俺の相手をしてくれや」

「ええっと、あなたは?」

「俺はブルーバラだ。ブルーって呼んでくれや。それで、そっちの嬢ちゃんは相手が欲しいんだろ!だったら俺が相手になるよ」

ブルーは背も高く体格のいいエルフだった。

「それはありがたいですけど」

「だったら決まりだ」

そうして二人のエルフに連れてこられたのはエルフの訓練場だった。

「よし、じゃあ始めようや」

そう言って二人の戦いが始まった。


少し見ていたい気持ちもあるが俺はもう一人のエルフに少し用があった。彼女は先日、俺たちを案内してくれたエルフだ。彼女は何故かずっと俺のことを見下した目で見てくる。前世でよく感じた視線だ。慣れているので無視してもよいのだが、この後に共同で戦うことを考えれば信頼関係があった方がいい。

「ええっと、君は確か昨日案内してくれた…俺何かしましたか?」

「お前、小さい女の子の陰に隠れる卑怯者(ひきょうもの)。私、嫌い」

「何のこと?」

「森の民の里に入った時、あの女の子の陰に隠れてた」

彼女は俺たちに矢を射った一人らしく、その時にチヒロが俺をかばってくれたところを見てそう思ったらしい。確かにそう見えるかも知れないので、完全な誤解とは言いにくい。

「別に自分から彼女にお願いしたわけでは…」

「なら私と勝負しろ!」

「勝負?」

「そして、私が勝ったらサンドラ様とお話しさせろ」

「サンドラ…様?」

「そうだ。お前はサンドラ様に相応しくない」

どうやら彼女はサンドラのファンなようだ。あいつのファンそこら辺にいるな。それで、サンドラと一緒にいる俺が女の子の陰に隠れていたことが許せなかったらしい。まあ、俺も相手が欲しかったところだからちょうどいい。


チヒロとブルーが戦っている隣で俺とエルフの女性との勝負が始まった。

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