第27話 新たな転生者
『遥か昔の話、邪神ザリウスが人々を恐怖に落した。そこで立ち上がった者がいた。ザリウスによる世界への攻撃が始まってすぐに英雄は人々に姿を現した。彼の者はすぐに邪神ザリウスと闘った。彼の者は人間離れした身体能力に魔術を有していて、彼の者にかかれば魔物さえも味方につけ、自身に翼を生やした。しかし、それでも邪神ザリウスを倒すことは出来なかった。
彼の者は回復すると、またすぐにザリウスに立ち向かおうとした。それを止めたのは天仙リテツ=カイであった。リテツの助言により彼の者はザリウスと対抗する手段を模索した。彼の者はそのカリスマで古来の人々を味方につけ、神々にも協力を求めた。それにより、多くの犠牲を払いながらも邪神ザリウスを封印することに成功した。
しかし、彼の者が何者でどこから現れたのかも、種族さえも分からない。人間離れした能力から神が遣わした使徒ではないのかなどの様々な学説がある。だが、詳細が全くの不明であることから、皆は彼の者を名も無き英雄と呼んだ。
神界大戦~名も無き英雄~ 』
俺が本を読み終えると、マルコフニウスが声をかけてきた。
「ヒサメ、見張りの交代だ」
イハールの街を出てから一週間が経過していた。俺は魔物や盗賊対策に夜の見張り番をしていた。ここはかなり辺境の地なので盗賊などが滅多にいないために眠気覚ましに本を読んでいた。この本はイーハルの街でラードーンの話を聞いて気になったので、購入したものだ。
「分かった。よろしくなマルコ」
そうして俺は眠りについた。薄れていく意識の中で少し声が聞こえてきた。
「ふむ、なぜこんなところに人が?迷い込んできたか?いや、そんなことは今までに一度も…まさか!古人か?いや、そんなはずはないか。とりあえず元の場所に戻してやろう」
俺は再び意識が遠のいていった。
「ヒサメ、起きろ。もう朝だ」
俺はマルコの声に起こされる。マルコはそのまま朝食の準備に向かう。
「もう朝か、何か変な夢を見た気がするんだけどな」
「ヒサメもか。実は俺もなんだけども。全く思い出せない」
「サンドラもか」
すると、そんなことがなんでもよくなる出来事が起きる。
『新しい転生者が来るよ。三時の方向に二キロぐらいかな。あ、魔物が近くにいるから急いでね』
いきなり、声が聞こえてきた。聞いたことのある声、神様だ。
「聞いたか、サンドラ?」
「何が?」
「新しい転生者だ。魔物が近いらしい。三時方向に二キロだ。先に向かう。マルコにも言っておいてくれ」
サンドラ達よりも足の速い俺は先に走っていく。
「何!?こいつら」
走っていくと女の子の声が聞こえてきた。女性の前にはゴリラのような魔物がいた。
「マズい」
俺はミスリルの剣を最長に伸ばして魔物を切り裂く。ゴリラは寸でのところで避け、俺の攻撃は空を切る。俺はその隙にゴリラと女性の間に入る。
俺はゴリラに向かっていく。俺の攻撃をゴリラは避ける。
「デカい割には速いな、こいつ」
俺は先ずは機動力の脚に狙いを決める。俺はバックステップでゴリラとの距離を取ると同時に地面に手をつきスキルを発動して、ゴリラの足元の地面を針状にする。しかし、ゴリラは俺の魔力を感知したのか避けようとする。しかし、俺の攻撃の方が速く、ゴリラの片脚を貫いた。
「これでさっきみたいに動けないだろう」
俺はゴリラに詰め寄る。負傷したゴリラはカンカンに怒っていた。俺に向かってフルスイングする。しかし、怒りのあまりに攻撃は単調だ。躱すのは簡単だ。俺はタイミングを見極めて拳の射線から外れる。そして、そのままカウンターの斬撃を与える。ゴリラはそれを殴った方とは反対の腕でガードする。だが、武装強化された剣はゴリラの腕ごと首を斬り飛ばした。
俺はスキルを発動すると、女の子の方を振り返る。すると、ありのままの女の子がそこにいた。
え!?…あ!そうだった。転生された時は服がないんだった。
俺は慌てて自分のカバンから俺の予備の服をとりだして出来るだけ直視しないように女の子に差し出した。
「俺の悪いけど、これを来てくれ」
「え?…あ!?」
女の子は今、気が付いたようで顔を真っ赤にして受け取った。女の子が着替え終わるまで待つ。
「ええっと、着替え終わりました。その、色々とありがとうございました」
「いや、困った時はお互い様だから。ええっと、名前聞いてもいいかな?」
「あっと、私の名前は不知火智洋です」
この女の子が俺たちと同じ異世界人であると分かった。すると、サンドラとマルコがようやく到着した。
「おーい、ヒサメ」
「マルコ。こっちだ」
全員が揃ったところで皆に色々と説明した。
「この娘は俺とサンドラの同郷でチヒロ。チヒロ、こっちはサンドラにマルコフニウス、皆はマルコって呼んでる」
そして、俺はチヒロにだけ聞こえる声で話す。
「こっちの世界では基本的に苗字がないから名前で呼ぶことになる。そして、サンドラや俺たちと同じ異世界人だ。君のことは神様から聞いた」
「なるほど、分かりました。ところで、あなたの名前は何て言うんですか?」
「あぁ、名乗り忘れてたな。俺の名前は春風氷雨だ」
すると、彼女の顔色が変わった。
「え!?春風君?そんな…」
「どうしたの?」
俺が彼女の異変に気付き近づくと、いきなり飛びついてきた。
「春風君、ずっと会いたかった」
俺は受け止め尻餅をついてしまった。
彼女の正体はいかに!




