第2話 馴れ馴れしい男
「おい、起きろ」
「ん、ん~」
「ん~じゃない、さっさと起きろ。こんなとこで寝てたら死んじまうぞ」
「ん~。はっ!?」
俺は男の声で目が覚める。辺りは草原であった。
「やっと起きたか」
「ここはどこだ?確か俺は死んで…ここが異世界か?あなたがサンドラさんですか?」
「なんだ知ってんのか?神様から聞いたのか。そうだ俺がサンドラだ」
そう言ってきたのは、灰色のローブに身を包んだ、濃緑色の髪の20代前半くらいの体格のいい男だった。
「ハックション!」
肌寒い。体を見てみると俺は全裸だった。
「あれ?俺、服着てない」
「クックック、ようやく気付いたか」
「サンドラさん、早く教えてくださいよ」
「いや、すまん。いつ気付くかなと思ってな」
そうして、サンドラは服を一式渡してくれた。準備がいい人である。
しかし、サンドラの予備の服だからなのか俺には少しでかい。
「ありがとうございます」
「少し民族衣装感はあるが、すぐになれる」
渡されて着た服は日本のものとは随分と違う。
「確かに、サンドラさんのその髪色は」
日本人らしくない髪色について聞く。
「ああ、俺の転生場所が森の奥深くだったからな。その影響かもな」
「神様が言っていたな。じゃあ、俺も?後、背も低い感じがする」
「ああ、ちょっと待ってな」
サンドラは手を前に出すと、水の姿見を出した。
「うわ!?これが魔法?」
「ああ、そうだ。けど、魔術って言っておけ。お偉いさんから怒られる」
サンドラは面倒くさそうにため息をつく。
こっちにも色々あるらしい。
気を取り直して、自分の姿を見る。
「顔も結構違うし、背も低い。髪色は黒髪…いや、少し赤み気がある」
自分の身体を確かめていると、
「そういや、お前名前は?」
そういえば、まだ言っていなかった。
「すいません。忘れてました。俺の名前は春風氷雨です。サンドラさんの名前は?」
そう聞くと男は慌てて答える。
「…ああっと、サンドラは俺の師匠からもらった名前なんだ。まあ、そんな気にすることはねぇ。それにこっちの方がカッコイイだろ?」
ふむ、そういうものか。高校デビューならぬ、異世界デビューと言うのか。
「ヒサメはそのままにするのか?」
「はい、結構気に入ってますから」
「そうか。あとヒサメ、俺に敬語は必要ない」
「分かりま。いや、分かった。ところで、俺はこれからどうしたらいいんだ?」
俺はこの世界については何も知らない。生きていく術も力も仕事も。
しかし、ここに先人がいる。俺は人に頼るのは極端に苦手だが、なぜだかサンドラは頼っていいように思う。この馴れ馴れしい態度のせいか?
「そうだな、俺は冒険者をしながら、旅をしている。良かったらヒサメも冒険者になって、俺と一緒に来ないか?」
この世界を知らない俺にとっては、かなりいい条件のように思える。
「お願いする」
「じゃ、とりあえず街に行って冒険者登録するか。後、最低限の強さも必要か」
そうして、サンドラは今後の予定を教えてくれた。
少し楽しみにしている自分に驚く。
(ああ、頼れる人がいるってこんな感じだったな)
そう感じながらサンドラの背について行く。




