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厄災の子 ~運命に負けて異世界に行く~  作者: 香川寿太郎
第二章 冒険者の街 イーハル
28/80

第25話 お別れ

なんか詰め込みすぎた気がする。

俺たちはオディアス、ティアラと共に屋敷に戻ってきた。

「そういえば、バルコ。君は最初どこにいたんだ?」

ガードンが尋ねる。

「はい、少し厄介な相手に捕まっていまして」

「厄介な相手?」

すると、俺たちの背後から一人の男が飛び出てくる。

「それは僕のことかな?」

その男は一見すると女とも思えるような中性的な男だった。


「お前はムツキ!」

サンドラが驚いた声を出す。


え!?…ムツキ?


「魔導王様、この男を知っているのですか?」

「ああ、バルコ。こいつは俺たちの同郷なんだ」

「え!?」

俺は思わず声をもらす。同郷ということは俺たちと同じ異世界人ということか。

「ん?どうしてお前が驚くんだ?ヒサメ。同郷なら顔くらい知っているだろう?」

「ええと、マルコ。その…」

俺がごまかそうとしていた時だった。

「実は俺たちの故郷はそれなりにでかくてな、顔を合わせないやつも結構いるんだ」

サンドラが助け舟を出してくれた。


「そういうこと。じゃあ改めまして僕の名前はムツキ。オディアスの話を聞いて鴉のメンバーになってたんだけど、どうやら解決したようだね」


この喋り方、それにムツキという名前。もしかしたら…。


俺がずっとムツキの顔を見ていると、ムツキがそれに気づく。

「どうしたの?ヒサメ」

「いや…何でもない」


「でだ、バルコはこの者に足止めをされていたということかい?」

「はい、お館様。到着が遅れて申し訳ありませんでした」

「それはいいんだけど、そんなに強かったのかい?」

「はい、正直に申しますと私では恐らくこの者に勝てません」

「ほう、それほどに強いのかい」

「はい」


「いや~照れるな~」

ムツキは顔に手をおきながら言う。

「僕はオディアスから娘の(かたき)を討つって聞いてね。かわいそうだと思って協力したんだよ」

「ムツキ、堂々と言っているが普通に犯罪だし、相手は貴族だ。死刑もあり得るぞ」

「え!」

サンドラがそう言うとムツキは口に手をあてて驚く。すると次にはガードンに泣きついていた。

「貴族様~。僕、死刑なんていやだよ~。反省するから~。許してくださ~い」

すると静観していたオディアスが口を開いた。

「ガードン。今回の騒動は全て俺の命令だ。俺の首一つで許してはくれないだろうか?」

「え、いやだよ」

ガードンはためらいもなくそう言い放つ。

「この通りだ!」

オディアスは土下座をする。

「だから、戦場でも言ったろ?今回のことは上に報告するつもりはないって」

「え、それじゃあ?」

「うん、無罪放免!…とはいかないけど、そんなに重くない罰で済ませるつもりだよ」

「ありがとう、ガードン」

オディアスの目には涙が浮かんでいた。

「せっかく、ティアラちゃんが戻ってきたんだ。前みたいに仲良くしよう」

ガードンはクラワー家の者たちとムツキに数か月の街の警備と森の調査を罰とした。





オディアスたちがクラワー家の屋敷に帰っていった後の夜のことである、俺はムツキと話をしていた。

「なあ、ムツキ」

「なに、ヒサメ?」

「俺は春風氷雨(ひさめ)っていう」

「知ってるよ」

俺の体はワナワナと震えていた。

「やっぱりお前は右代無月(うしろむつき)…なのか?」

「正解!」

ムツキはパチパチと拍手しながら答える。


ああ、やっぱりムツキだ。


俺は気がつくと涙が頬を伝っていた。

「久しぶり、ヒサメ」

俺はムツキに抱きついていた。


俺がムツキと知り合ったのはまだ父がいた、小学生の時である。その時の俺は友達が沢山いた。そのなかでもムツキとは特に仲がよかった。毎日遊んでいた気がする。ずっと親友だと思っていたが別れというものは案外あっさりと訪れる。中学を卒業したと同時にムツキが引っ越した。それから、俺は親父が死刑になり会いにいくこともせずに人生を終えた。しかし、この世界でまた会えたのだ。奇跡としか言いようがない。


それから俺たちは語り合った。前世のこと、この世界に来てからのこと。

話によると、ムツキは前世で人に殺されたらしい。そして、神に出会ってこの世界に転生した。その後は冒険者になり、依頼でサンドラに会ってお互いが新人(あらびと)であると分かったらしい。


色々話していると眠たくなってきた。

「ふわぁ~」

「今日は戦いやらなんやらで忙しかったからな」

「ああ、もう寝ようか」

「そうだな。お休み、ヒサメ」

「お休み、ムツキ」


次の日に俺、サンドラ、マルコは領主ガードンに呼び出された。

「昨日はありがとう。おかげで大きな被害を出すことなくオディアスとも和解できた」

「いや、大したことはしていない」

「俺はバルコさんに剣術指導してもらいましたし」

「おかげでヒサメとパーティーになれた。こっちこそ感謝している」

皆がそれぞれ反応する。

「ふふ、けれどもこっちとしても俺がしたいしね。何か欲しいものとかあるかい?」

「面倒だから金銭でいいぞ」

「あ、僕もそれで」

サンドラ、マルコはお金を要求した。それなら貴族にとっては大した手間ではないだろう。

「分かった相応の金額を用意しよう。ヒサメ君はどうしよう?」

「俺ですか」

俺は欲しいものを考えていると。

「もしなんだったら、リーエとかどうだろう?」

「は?」

突然のことで頭が真っ白になる。


「いや、年も近いしどうかなと思ったんだけど」

「俺は平民ですよ」

貴族の結婚相手は貴族。それが定石の世界だ。出自不明の平民では貴族の婚約者は務まらないだろう。


「ふふ、僕の領地は少し特殊でね。冒険者が集う街だから、冒険者と結婚する者がいるんだよ。それに君はその若さで既にかなりの強さだ。将来性もある。どうかな?」

「嬉しい話ですが、お断りさせて頂きます」

「そうかそれは残念だ。気が変わったらまた言ってくれ」

「はい、分かりました」

「ではヒサメ君は何が欲しい?」

「俺は本が欲しいです」

「本?なんの本だい?」

「神界大戦の本です」

「ああ、なるほど」

俺はラードーンから聞いた話が気になっていたので、その本についてお願いした。

「分かった用意しておこう」


惜しいことをした気がしないでもないが、前世の記憶の影響かリーエのことをそうゆう風に見ることができないし、まだまだこの世界を見てみたい。だから、これで良かっただろう。



それから俺たちは、この街の名物冒険スポットであるダンジョンに向かった。三人パーティーによる初めての冒険だ。初めてはガタガタだったが徐々に慣れてきた。そしてダンジョンボスにたどり着く頃には連携をとれるようになっていた。


そうして一ヶ月くらいこの街に滞在していた。

「サンドラ様とヒサメ様にお手紙でございます」

受付の人から手紙を受け取った。差出人はシズク師匠だ。


サンドラ、ヒサメへ

今うちはキシケゴードン国におる。アカリが新人(あらびと)を集めて欲しいらしいから、出来れば来てくれへん?後、ムツキの居場所が分かるんやったら伝えておいてくれへん?ほな、頼んだで!

シズクより


「サンドラ、アカリって誰だ?」

「キシケゴードン国にいる新人(あらびと)だ」

「前に師匠が言ってた人か。神様に感謝してるっていう」

「ああ、それにしても全員集合か。まあ、ちょうどダンジョンを攻略し終えたところだ。行くか」

「分かった。マルコとムツキに伝えておく」

「ああ、ありがとう」


マルコに伝えると「いいぞ」という返事だった。ムツキは罰が終わった後に行くらしい。

俺たちはこの街を離れることをガードンたちに告げた。

「そうか。できればこの街にとどまって欲しかったけど、仕方ないね」

ガードンはそう言って無理に引き留めることはしなかった。


俺たちは二日後に出発することとなった。見送りに来てくれたのはガードン、バルコ、リーエ、オディアス、ティアラ、ムツキだった。

「皆さん、本当にお世話になりました。よい旅を」

「ヒサメ殿、シズクによろしく言っておいてください」

ガードン、バルコが挨拶をする。

「分かりました」

俺がそう返事をする。リーエとオディアスの方を見ると二人は何か言いたげな顔である。

「二人とも言いたいことがあるならハッキリと言いなさいよ」

ティアラが二人の背中を押す。

「ええっと、ヒサメさん。また来てくださいね、待ってますから。約束ですよ」

「ああ、また来るよ」

リーエとの別れの挨拶を済ませると、オディアスが口を開いた。

「ヒサメ、今回のことはありがとう。お前が止めてくれなかったら、俺は取り返しのつかないことをしてしまっていた。サンドラにマルコも本当にありがとう」

オディアスは頭を下げた。

「いいよ。これからも娘さんと仲良くな」

「ああ、もちろんだ」

すると、ティアラが二人の前に出た。

「リーエは少し消極的ね。ヒサメ様、サンドラ様、マルコ様、父を止めて、私を助けてくれてありがとうございました」

「いいってことよ」

これはサンドラだ。


最後はムツキなのだが…。

「ヒサメ~。もうお別れかよ~。もう少し一緒にいてくれてもいいだろ~。俺も直ぐにキシケゴードンに行くからな~」

と泣きながら別れを惜しまれた。


皆とはお別れだ。リーエとはこの世界での初めての友達だ。悲しくないわけがない。でも、これっきりのお別れではない。また会いに来ればいい。そう思って俺たちはこの街を離れた。

これにて二章は終了です。また閑話と二章の登場人物紹介があります。

これまで読んでくれて本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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