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厄災の子 ~運命に負けて異世界に行く~  作者: 香川寿太郎
第二章 冒険者の街 イーハル
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第24話 森の化け物

「ギョエエーー」

皆が戦いが終わったと思ったその時、けたたましい声が聞こえる。

「何だこの音?」

サンドラが尋ねるとリーエが震え、バルコが答える。

「これはラードーンの声です」

「こ、これが」

マルコが反応する。


すると、ラードーンが話出す。

「また結界を壊された。ここ数年で二度目だ」

今度はオディアスが声を震わせながらラードーンに問う。

「お、お前がラードーンか?」

「我の名を知っているのか?さてはお前が黄金の林檎(りんご)を狙う者だな」

「林檎なんてどうでもいい。俺はお前を何年も探していた。娘の(かたき)をとらせてもらう」


オディアスが一人で突っ走っていく。しかし、オディアスは既に満身創痍(まんしんそうい)だ。このままではまずい。そう思った俺は叫ぶ。

「待て、やられるぞ」

だが、オディアスは止まらない。

「千剣!」

オディアスの攻撃がラードーンを襲う。ラードーンはよけることもできず、全ての刃をくらった。

「ものすごい攻撃だ。確かにこれなら結界も破られよう」

しかし、ラードーンは全くの無傷だ。

「噓…だろ」

思わずオディアスが声をもらす。


ここで今まで見ていた俺、マルコ、サンドラ、バルコが参戦する。

「サンドラ、その手は」

そこで俺はサンドラの片手がないことに気がつく。

「少し手こずってな」

俺たちは全員戦いの後で怪我、疲労している状態だ。普通は引くべきところだがオディアスは止まらない。

「うおぉ~、龍撃・風」

ラードーンはその攻撃を首一つで相殺する。

「我に魔術は滅多に効かん」

「なら直接攻撃するまでだ」

オディアスはラードーンに駆け寄り攻撃する。俺、バルコも駆け出す。しかし、ラードーンは首を巧みに使い俺たちを近づけさせない。サンドラが魔術を放つ。

風の刃(ウィンドウカッター)

その攻撃がラードーンの一つの首を斬った。

「なっ!?」

ラードーンが驚く。

「何だよ、魔術効くじゃねぇーか」

「そんなことは、お前何者だ」

「サンドラだ」

このラードーンの隙をオディアス、バルコがつく。

「おりゃあ!」「ふん!」

そして、更に二本の首が落とされる。


俺は魔力をためる。

「嵐一刀」

ラードーンは数本の首を盾にして体を守る。盾となった首は切落される。

「またもや魔術が…どうなっているのだ」

マルコも魔術を放つ。ラードーンは思わずよける。

「よく分からないが我は我のすべきことをする。お前たちの排除だ」

ラードーンは狂ったように首を振り回す。それらが俺らを襲う。俺、マルコ、オディアスがそれにより吹き飛ばされる。しかし、オディアスは血反吐を吐きながら立つ。

「ゴホッ!まだだ。娘のティアラの仇はとる」


すると、ラードーンが聞いた。

「おい、お前さっきもそのようなことを言っていたな。お前はティアラの父親か?」

「ああ、そうだ」

「なるほど。よく見ると、そこの爺さんも木の陰にいる娘も五年前にいたな」

バルコとリーエのことだろう。ラードーンは更に話す。

「お前たちに問おう。本当に林檎が目当てではないのか?」

「そんなもん興味ない」

オディアスが答える。

「分かった。我はこれ以上お前たちを攻撃しない」

「どうゆうことだ!」

「林檎が目当てでないならお前たちを攻撃する理由が我にはない」

「例えお前に理由がなくとも俺にはある」

「ティアラのことか?」

「ああ、そうだ」

「ふむ、頃合いか。ついて来るがいい」

そう言い放つとラードーンは俺たちに背を向けた。

「待て!」

「オディアス、ついて行ってみましょう」

再度攻撃しようとするオディアスをバルコが制止する。


俺たち一同はラードーンに続いた。そして、見たのは黄金の林檎であった。

「これが黄金の林檎か」

サンドラは興味深そうに林檎を見つめる。

「こっちだ」

ラードーンはその林檎の木の根元に俺たちを(みちび)く。そこではリーエと同じ年齢くらいの女の子が寝かせられていた。

「まさか!?」

リーエが口を手で抑える。

「ティアラ、ティアラなのか?」

オディアスがその女の子に駆け寄る。

「ん~?お父さん?」

女の子が目を覚ます。

「ティアラ~。良かった。本当に。よく生きててくれた」

オディアスが女の子、ティアラを抱きしめる。

「お父さんがどうしてここに?守り主さん?」

「また結界が破られたので様子を見に行ったらこの者たちがいた。林檎が目当てでないためここに連れてきた」


「ラードーン、一体どうゆうことなのですか?5年前、私たちが会った後に何があったのですか?」

バルコの問いにラードーンが答える。

「ふむ、どこから話そうか」

ラードーンは少し考えてから話始めた。

「少し昔の話から始めよう。我がただの魔物だった時にとある男に負けた。我はただ殺されると思っていたが、その男は我を従魔とした。それから数年後、神界大戦が起こった」


「神界対戦!?」

マルコが驚く。俺も少し本で読んだことがある。はるか太古の頃の神々の戦いだ。皆も驚きで声を詰まらす。

「ああ、この木はその神界大戦のずっと前から存在する。そしてこの木になる黄金の林檎は千年に一度、実をつける」

「その黄金の林檎とは何なんだ?どうしてお前が守っている」

オディアスが聞く。

「慌てるな、ティアラの父親よ。黄金の林檎は食べると身体の怪我、病、老いすらも克服(こくふく)できる」

「「「「な!?」」」」

そんなものは聞いたことがない。


「先の神界大戦ではそれまでに実っていた林檎を全て食べ尽くした。そして人々にこの林檎の存在も知られた。すると、人々は様々な理由でこの木を求めた。大切な家族、主を助けるため、金を儲けるため、不老になるため。そのため我が主はこの木の存在を人々から隠そうとした。それで我を木の番人にし、普通の人々からは見ることも触れることも行き着くこともできない結界を張った。それから約1万年の月日が流れ、人々から林檎の記憶はなくなり平穏な日々が続いた。しかし、五年前に事件が起きた」


五年前と聞いたオディアスの目つきが鋭くなる。

「我が主が張った結界が破られたのだ。その犯人は男女2人組であった。その者達は林檎の存在を知っていたのだ。男の方を殺したと思ったらいきなり身体がいうことを効かなくなった。そして女に木の実をほとんど奪われた。最後に気合で動き追い払ったが、残ったのは4つであった。それから、間もなくティアラたちがやってきた。結界も修復(しゅうふく)できていなかったからとおくから林檎が見えたのであろう。気が立っていた我はティアラたちの話も聞かずに攻撃した。そして、そこの二人が去った後に後悔した。我はこんな幼子(おさなご)に何をしているのかと。そして、ティアラに黄金の林檎を与えた。すぐに家に帰さなかったのは悪かった。だが、黄金の林檎を食べた者をやすやすと返すわけにはいかないのだ」


「どうしてだ!」

オディアスが叫ぶ。

「さっきも言ったであろう。黄金の林檎は老いすらも克服すると。ティアラに我が処置(しょち)をする必要があった。そしてそれが最近やっと終わったのだ。完全に普通の人とは言えないが、ほとんどが元通りと言えるだろう。寿命が数十年ほど長く、魔力量と質が変わっただけだ」

「つまり俺はまたティアラと生活できるのか?」

「ああ、そうだ」

オディアスはそれを聞くと涙を流しながら抱きつく。

「ちょっとお父さん!」

ティアラも嬉しそうである。リーエの方を見てみると涙ぐんでいた。


皆が感極まった時、サンドラは一人考えごとをしている。

「どうした?魔術師?」

「ああ、いや。見ることもできない結界を五年前や今、壊されたのはなぜなのかと思ってな」

「分からぬ。強い衝撃でも壊れるかも知れぬが滅多にないことだ」


結局原因は分からずじまいであった。というより情報量が多すぎて混乱しそうだ。

そして、話も終わった時である。

「魔術師よ」

「何だ?」

「お前に黄金の林檎をやろう。その手を治すがいい」

「それはありがたいが、食べると俺も五年ほどここに居ないといけないんだろう?」

「その心配は要らぬ。お前とそこの変な技を使う剣士は大丈夫だ。そして、お前をそのまま帰らせてはいけぬような気がしてな」

ラードーンは首を俺とサンドラに向けながら言った。

「俺とサンドラが?」

「ふむ、サンドラと言うのか。サンドラよ林檎を食べろ」

「分かった」


サンドラは林檎を一つ取って食べる。すると、みるみるうちにサンドラの手が再生する。

「これは…」

サンドラが思わず声を出す。

「ふん、やはりなお前にはその実に適正がある」

「適正?」

「ああ、この実は元々神々が食べるためのものだ」

「神様が食べる?」

「ああ、これは神の回復アイテムだ。それを人が食べると効きすぎる。そのため不老になってしまう。つまり副作用みたいなものだ」

「なるほど。じゃ何故、俺とヒサメには副作用(それ)がない」

「恐らくは体質的なものが関係している」

「体質?」

「ああ、我も詳しいことは分からぬが、神界大戦の時にもこの実を食べても変わらなかった者がいた。その者は神と神の戦いに参戦していた」

「神々の戦いに?」

「ああ、普通の人は神に傷一つつけられない。存在の次元が違うからだ。しかし、その者は神に攻撃できた」


その話を聞いていたマルコが口を開いた。

「それじゃ神界大戦の本に出てきた英雄は実在したのか?」

「英雄?」

「ああ、ヒサメ。俺も本でしか知らないが、性別も種族も何一つ分からない。その英雄は神に協力し邪神と戦ったと」

「恐らくその英雄のことであろう」

「俺たちがその英雄と同じ、若しくは似た体質ってことか?」

「ああ、そうだ」

「よく分からないがまあ手が治ったならいいか」

「もうすぐ結界が修復される。もう出ていく行くといい」

ラードーンの言葉で俺たちは帰ることとなった。最後にティアラが振り返る。

「守り主さんありがとう」

「そのような言葉は要らぬ。もともと我が悪かったのだ」


そうして俺たちは戦いが終了し、騎士もクラワー家の剣士も互いに和解したのであった。

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