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厄災の子 ~運命に負けて異世界に行く~  作者: 香川寿太郎
第二章 冒険者の街 イーハル
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第20話 剣豪バルコの思い

午前中

朝食を終えた俺とマルコ、リーエ、バルコは最後の修業をしていた。

「いよいよ明日か。新技は完成したか?ヒサメ」

「前に見せた通りさ。一振りで剣が霧散するから、通常技としては使えないから、切り札みたいなものかな」

「新技ですか?」

リーエが尋ねた。

「ああ、最近やっと形になってきたんだけど」

「見てみたいです!」

「確かに、興味がありますな」

「魔力消耗が激しいけど、一回だけなら」

「わあ、ありがとうございます」


俺は精神統一して集中する。

「ふぅー。火よ」

右手に小さな火を灯す。

千変万化(せんぺんばんか)の腕、武装強化」

武装強化により、形だけだった火の剣に硬度がでてくる。その硬さは普通の鉄の剣はもちろんのことミスリル剣をも超える。

「す、すごい。火の剣なんて見たことない」

「形のない火に武装強化とは!それに、この魔力密度!凄まじい威圧感です」

リーエとバルコが驚く。

「噴火一刀」

その威力はまさに噴火の如く前方を焼き尽くし、地面を溶かす。

「これが、俺の新技です。まあ、未完成ですが」

「これで未完成なんですか」

「ああ、本当は火が破裂して散らばることなく、とどめながら切りたいんです」

「このままでも十分な気がしますけどね」

「これだと魔力消費が多くってさ」

「ああ~、なるほど」

「ヒサメ、前よりも範囲が狭いというか、何というかこう…精錬?されてないか?」

「ああ、爆発の方向を絞ってるんだよ。おかげで魔力の節約になって一日三回までできるようになったんだ」

「なるほどな」

「これをサンドラに見せたら、自然現象の魔術並みの威力があるって」

「だから、噴火の一振りか」

「ああ、何もかもを燃やし尽くす、火の剣、噴火一刀。全てを吹き飛ばす、風の剣、嵐一刀。全てを飲み込む、水の剣、瀑布一刀(ばくふいっとう)。よける間もなく相手を切り裂く、雷の剣、界雷一刀(かいらいいっとう)


一通り説明を終えると、黙りこくって考え事をしていたバルコが尋ねた。

「ヒサメ殿は形のない、火をスキルで剣の形にして、そこから更に武装強化をしたと?」

「そうです、一撃でよくわかりましたね」

「そんなことが!?」

「これは、千変万化(せんぺんばんか)の腕をもつ俺だけの剣です」

「その技は…クラワー家の奥義に匹敵します」

「奥義?」

マルコが疑問を口にする。


「もうサンドラ様にはお伝えしましたが、クラワー家の当主となれる者は代々、自分だけのものといえる奥義を作り出し、習得した者なんです」

「つまりオディアスも奥義と呼べるものをもっていると?」

俺の質問にバルコが答える。

「はい、奴の奥義は一振りで何十もの風の刃を飛ばす回避不可能な超範囲攻撃です」

「龍撃・風よりもですか?」

「龍撃はあくまでも真流剣術の技です。奥義はレベルが違います」

「あれよりも強いのか」

バルコの言葉に俺達はあらためて明日の決戦の厳しさを感じとっていた。


午後

「皆さん、お集まり頂いたようで、最終調整をします」

ガードンの言葉で会議が始まり、バルコが発言する。

「作戦は予定通りに、オディアスはサンドラ様が、五人の幹部のうち、三人は私が、残った二人がマルコ殿とヒサメ殿が、その他の人たちは騎士団の方々に、総大将はお館様がお願いします」

それにガードンがうなずく。

「ああ、分かったたよ。そして、リーエは基本的に僕と行動だよ」

「はい、分かりました」

「というか…本当に来るのかい?」

「はい、前にも言いましたが、多分オディアスさんの狙いは私なんです。私が行かないと話になりません。それに、オディアスさんとは話をしないといけないですから」

「そうだね。オディアスがああなった原因は僕らにある、あいつとは話し合わないといけない。そのためにはまずは勝たないとね」

「はい」

この時、バルコがうつむいていたことに誰も気づかなかった。


「でも戦力的には少しキツイか」

マルコがふと(つぶや)いた。そこで俺は思いつく。

「あ!そうだサンドラ、シズク師匠を呼んで来ればいいじゃん。転移魔術を使って」

「無理だ!転移は一度行ったところにしかいけない。あいつがいる、キシケゴードンには言ったことがないし、行くのにどんなに急いでも二ヶ月はかかる」

「そうか」

「それに俺たちがいれば負けはしない」

サンドラが自信満々だ。いや、これは相手に負けたくないという信念か?

「ですが、相手は一ヶ月かけたんです。何かしら仕掛けては来ると思いますよ」

「リーエちゃんの言う通りだが、わからない以上どうしようもない」

「ああ、そうだな」

俺がうなずくと

「まあ、そうなったらオディアスのことはヒサメ、お前に任せるとするよ」

「俺か?流石に無理じゃないか?」

「少なくとも、この中じゃ一番可能性があるぞ」

「バルコさんがいるだろう」

「あ?そうか?」

サンドラは肯定することはなかった。


そして、話し合いが終わると夕食を摂って、夜となった。俺が散歩ついでに庭を歩いていると声が聞こえた。

「はぁっ!せあ!」

「バルコさん?」

「ん?これはヒサメ殿、どうなされました?」

「いや、散歩に。バルコさんも明日は早いんですし、ほどほどにした方が?」

「はい、すぐに終わりますよ」

俺はバルコの表情に(かげ)りを見つけた。

「何かあったんですか?」

「いや、何も。ただサンドラ様が昼におっしゃっていたことですよ」

「あ~、バルコさんよりも俺の方がオディアスを倒せるっていう」


そんなことないのに、サンドラはなんであんなこと言ったんだろうか。


「はい、本当にその通りだと思いまして」

バルコがうつむく。

「いや、それはサンドラが適当に言っただけじゃ?」

「いえ、私はオディアスを倒せない」

「それは…」

「私には…倒す覚悟がない。それをサンドラ様は見抜いていらっしゃったのでしょう」

「倒す覚悟がない…それは、どういうことですか?」

意味が分からなかった。


「私はオディアスの娘を守れなかった、それどころか助けられてしまった。そして、娘を見殺しにした私なんかがオディアスの相手をしてもいいのかと、そう思ってしまったのです。オディアスがティアラ譲を私が殺したと言ったらしいですね。本当にその通りだと思いますよ。お館様やお嬢様までも覚悟を決めていると言うのに。それが情けなくて…」

バルコは後悔していた。あの時助けられていたら、こんな事態にはならなかったと。


「確かに、バルコさんが助けられなかった後悔も、オディアスの大切な人がいなくなった悲しみも理解できます。俺にも覚えがありますから」

父親のことを思い出して話す。

「でも、それはバルコさんの責任ではないでしょう」

「しかし…」

俺はバルコの言葉を遮るように話し続ける。

「それでも、もし自分が許せないなら、オディアスに謝って許してもらいましょう」


その時、背後の屋敷の方から声が聞こえた。

「そうですよ、バルコ。あなたが思い詰める必要はありません」

「リーエお嬢様!」

その声の主はリーエであった。

「あの時、私は何もできなかった。一番の原因は私です。それでも、オディアスのことは止めなければなりません。私の命はティアラに助けてもらった命、例え相手がティアラの父親でも、ティアラの意志を、覚悟を無駄にはしません」

「お嬢様…」

「明日、お互いになすべきことを、頑張りましょう」

「はい…明日は絶対にオディアスのことを止めてみせましょう」

「頼りにしてますよ」

「はい」

こうして、決戦前日は終わっていった。


翌朝、

「ふん、少しはやる気になったみたいだな」

「サンドラ様、はい、ご迷惑をおかけしましたね」

「別に迷惑ってほどじゃねーよ」

「では、行きましょう」

一同は、約束の森に向かっていった。

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