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厄災の子 ~運命に負けて異世界に行く~  作者: 香川寿太郎
第二章 冒険者の街 イーハル
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第19話 新技

互いをライバルだと認め合い、握手を交わした、その日

「なあ、マルコ」

「なんだ?ヒサメ?」

「俺に魔術を教えてくれないか?」

「魔術?確か魔力量が少なくて身体強化や武装強化とか、魔力消費量が少ない魔術しか使えないって言ってなかったか?」

「そうなんだが、これまでの戦いで思いついたことがあってな。それにマルコが使っているようなやつじゃなくていい。小さい魔術でいいんだ、ダメか?」

俺は黒狼戦、先のオディアス戦で(ひらめ)いたことがあった。


「それは別にいいんだが、俺でいいのか?お前には魔導王様がいるだろう?」


サンドラか…、前に魔術の説明を受けたけど俺の理解の範疇(はんちゅう)を超えていた。


「それは…。サンドラは説明下手でさ。サンドラ自身が天才肌なのもあって、魔術師じゃない俺にはよく分からなくってさ」

「ああ~、なるほど。僕でよければ教えるさ」

「ありがとうな」

「いいってことよ。で、何を教えればいいんだ?」

「基本の水と風と火と雷を教えてくれ」

「土はいいのか?」

「ああ、土は必要ない」

「分かった。なら最初は火魔術がいいかな」


マルコは片手を出すと、小さな火を灯す。

「まずは発動。手に魔力を集める。それをエネルギーとして火をつける。剣と剣がぶつかると火花が散るだろ?それはぶつかって発生するエネルギーが火に変わっているんだ。それと同じことを魔力でする。感覚でやるのは難しいがな」

マルコの火が次第に熱く、大きくなる。

「火がついたら、後は簡単だ。火に油を注ぐと火が大きくなるように、魔力も注げば注ぐほど、大きく、熱くなる。消すときは逆に魔力の供給をやめればいい」


「なるほどなー。魔術ってやるべきことが多くて面倒くさいな」

「なに、慣れれば半自動的に使えるさ。それに、お前は武装強化を使えるんだろ?それに、比べたら大したことはない」

「ああ~。けど武装強化は身体強化の延長線上の魔術だからな。感覚が掴みやすかっただけだよ」

「ふふっ、武装強化を身体強化と同じ分類をするのか。ま、なんにせよ、やってみろよ」

「ああ、分かった」


魔力を集中させる。それを火にする


『ボッ』

「あれ?ついちゃった。マルコ、これでいいのか?」

「はぁ~。一発で成功か」

「ん?なんて?」

「いいや、なんでもない。これは一番簡単だし。僕でも一時間くらいで出来た。それに、ヒサメはもともと魔力操作の精密さは高いからな。不思議じゃないさ」

「へ~、そうなんだ」


(僕は練習を始めてすぐに魔術が使えた時は神童なんて言われた。普通はこの基礎的なものでも何週間か必要だ。それを一発か)

マルコは内心少し驚いていた。しかし、同時に喜んでもいた。

(ああ~!それでこそ僕がライバルだと決めた男だ)


「それにしても惜しいな」

「ん?何が?」

「だってお前さ、もっと魔力量あったらサンドラさんみたいに凄い魔術師になってたかもしれないぜ。お前はそれだけの素質がある」


ん~?恐らくすぐに魔術が使えたのは種族としての特質だし、魔力量が少ないのも特質だしな。


「まっ、俺にはスキルに剣や拳があるからな」

「え、ヒサメって格闘術も使えるのか?」

「ああ、全極拳をな。けど剣術のほうが好きだけどな」


全極拳はシズクが得意としてる格闘術で、柔極拳と対をなす格闘術だ。柔極拳は自身の力は最小限で、相手からの攻撃の力を利用する格闘術だ。対して、全極拳は自身の力を最大限に引き出す格闘術だ。どちらも、太古からある武術である。


「古流剣術に、全極拳ね。どっちも古くからある、基本的な身体能力が必要なやつじゃないか」

「師匠が得意なやつがそれだったんだよ」

「シズクさんはあんまり知らないけど、お前は身体能力高いもんな。身体強化がヤバい」


師匠に比べれば俺の身体能力なんてかわいいものだ。

「師匠はヤバい。走っただけで、目の前から消えるんだよ。もう、速すぎる」

「まあ、人類史上最強だからな。本気で戦ったらどうなることか」

「前に聞いた話だと、サンドラと戦ったら森が半分なくなったらしい」

「えげつな!それ大丈夫なの?」

「流石にヤバいと思ったらしくて、サンドラが植物の魔術で直したって」

「規模が違いすぎるな」


「なあ~。あ、水魔術も出来た」

「おい、それまだ教えてない」

「いや、火魔術でやり方つかんだから」

「ハア~、お前も対外常識外れだな。で、さっき言ってた思いついたことってなんなんだよ?」

「それは、できてからのお楽しみ」

俺は風魔術も発動出来たところで魔力が枯渇したので今日の修業を終わりにした。



翌日、これまでの戦い、修業を思い出して新技の構想を練っていた。


黒狼との戦いで、黒炎を(まと)った拳の攻撃はミスリル剣で斬れなかった黒狼の体毛を貫くことができた。後日、普通の水や火を拳に纏わせたが、あの攻撃力には及ばなかったし、戦闘中に使いにくい。それで、剣の形にしてみたが、それこそ斬るどころか、水や火が飛び散り魔力を無駄に消費するだけだった。


次に、武装強化を習った。この時にも、しかしたら水や火の剣にもできるかもしれないと思ったが、形がないただの水や火に疑似の魔力回路を作るというのが無理だった。

だが、サンドラは言っていた。武装強化は自分に相性のいい武器ほど使いやすいと。俺のスキルで出来たものは俺の魔力だから武装強化の相性は最高だと。

そこで思った、「ただの水や火ではなく俺の魔力で出来た水や火なら?」と。


そして、オディアス、真流剣術の使い手と戦って、魔術と剣術とが融合(ゆうごう)させた戦い方を見て、できるかもしれないと思った。俺だけの技を。


俺は火魔術をスキルで剣の形にして、武装強化を発動させる。


グニャグニャしてて、魔力を通しにくい。けど、何とか形にもっていけそう。しっかりと強度をもたせて、もっと魔力を安定させるように。


しかし、

『パンッ!』

火の剣が魔力の込め過ぎで暴発してしまった。

「クソ~惜しいところまでいったんだけどな~。もう一回」

また火の剣に慎重に魔力を込めていく。すると、火がさっきよりも剣の形を保っていく。

メラメラと効果音を出しながら剣の形になる。

「まだ抑えきれてない感じがする。力の入れ具合を間違ったら霧散(むさん)してしまいそうだ。けど、一回試してみるか。ハアッ」


そうして火の剣を振ったその時、

『ドバガァァーン』

俺は爆破の勢いで後ろに吹き飛んだ。

「いっててー。どうなったんだ?」

眼に映ったのは燃えつくさんばかりの炎であった。

「一振りでこの威力なら、使いこなすことが出来れば、必ず俺の切り札になる」

すると、いきなり俺は眩暈を覚える。


「なんだ、しんどい。立ってられない。え、まさか魔力が、もう」


火魔術自体は灯す程度だったために、そこまでの魔力消費はなかったが、剣にはスキルと武装強化の分の魔力が込められていた。それが破裂して散っていってしまった。昨日、マルコが使ったストームバーストよりも少し多いくらいの魔力量だ。しかし、魔力量の少ない俺に疲労感を覚えさせるには充分であった。


その時、

「おいおい、大きな音がしたからわざわざ転移魔術で来てみたら、なんだこの状況」

「サン…ドラ…か」

「ヒサメ、何があったんだ?確か、新しい技を思いついたって言ってたが?」

「ああ、これがその結果だ」

「この炎をねぇ~。だから、そんなにフラフラなのか。魔力枯渇か?」

「そうだ。倒れそう」

「そうか、休んどけよ。とりあえず火を消すか。魔力干渉。火よ、集まれ」

すると火の一部がサンドラの手に吸い寄せられ、一塊(ひとかたまり)になっていく。それを更に圧縮していく。全体の三分の一程集まったとき、

「これくらいで充分か」

サンドラは集まった炎を上に向ける。

「魔力砲」

炎が天高く打ち上げられ、上空で圧縮されていた炎が爆弾のように一気に広がった。


「何をしてるんだ?」

「何って、火を消すんだよ」

「いや、それは聞いたけどさ」

「まあ、見てろって。ストームレイン」

すると、ポツポツと雨が振り出し、すぐに大雨となった。

「これ、サンドラがやったのか?」

「ああ、お前の炎を使って、雨が降りやすい状況にした上で、雨が降る水魔術を使った。天候やらの自然現象に干渉する魔術は予め準備してからのほうが、魔力消費が少ないし効果が高いからな」


相変わらず雑な説明だが、模擬戦闘の時にマルコが使っていたディープミストの規模が大きいタイプか。


「魔力干渉ってなんだ?」

「ああ、魔力量が少ない俺が人並み以上に魔術を使えるようにと開発した、俺のオリジナル魔術だ。相手の魔術の魔力に干渉して、そのまま自分の魔術にする。欠点は少し時間がかかるから、放出されて自身に高速で向かっている魔術には使えないし、魔力量の多い魔術は干渉しきれない」


「いや、スゲー魔術だな。マルコが目を見開くぞ」

「ああ、これは武装強化よりも遥かに繊細な魔力操作が必要だからな。火も消えたし。帰るぞ」

「分かった」


その後、新技の練習をしたが結局、完成までには至らなかった。

本当は魔術を剣の形に保ったままにして霧散させずに剣にしたかったが、どの魔術もどうしても制御しきれずに、暴発してしまうために一振りしか攻撃できなかった。そして、暴発により魔力が飛び散って失ってしまうために、一日で三回しか使えない上に、三回目を使うと暫くの間は魔力枯渇で動けなくなる。


そして、迎えた戦い前日に最終会議が行われた。


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