第18話 模擬戦
その一週間後、バルコやガードンは街の警戒レベルを上げたり、鴉の情報収集をしたりと忙しい日々を過ごしていた。
かく言う俺たちは少しは手伝いをしていたが、基本的には戦いに備えていた。
「ヒサメ、僕と前みたいに模擬戦をしないか?」
唐突な誘いだったが特にやることもないし、実践ができるならその方が良いので承諾する。
「ああ、マルコ。いいぞ」
「ふふん、今回は前回と違って勝たせてもらうぞ。」
「ああ、俺だって負けないよ」
二人は対面する。俺はいつも通りにスキルでミスリルの剣を作る。
「行くぞ」
俺の呼びかけで勝負が始まった。
「先手必勝!」
ミスリル剣を作りながら飛び出す。
「させるか!ウォーターウォール」
「それは、前も見たぞ」
俺は水壁を切り捨てたが、マルコはそれを予測していた。
「知ってるよ。だが、この距離なら外れないだろう。アクアキャノン!」
水の塊が大砲のように襲う。
「なっ!?」
咄嗟に剣を盾にするが余りの威力に吹き飛ばされる。
「まだまだ、アクアバレット」
マルコはピストルのような水魔術を何十発も打ってくる。
アクアバレットは先ほどのアクアキャノンよりも小さい。しかし、その分消費魔力が少ないうえに、速くて貫通力がある。離れた相手に対してはアクアキャノンよりも最適だ。
「うお、速っ」
俺は身体に直接あたりそうな魔術だけを剣ではじいていく。だが、ところどころにかすり傷が増えていく。
このままだと押し切られる。
「逃げるなら、上だ」
俺はアクアバレットから逃れるためにジャンプで飛び上がり、そのままマルコに突っ込む。
「空中では身動きとれないだろう。それに落ちて来るまでに魔力を充分に集められる。アクアキャノン」
マルコは先ほどの二倍近くの大きさになるまで魔力を込め、空中にいる俺目がけて放つ。
アクアキャノンは既に俺の眼前にある。
「流石にそれをくらったらまずいな。だがな、身動きはとれるんだよっと」
俺は剣を伸ばして地面に突き刺した。その反動を使って無理やりにアクアキャノンを横によける。そして、そのまま落ちてきたエネルギーを利用して強烈な蹴りを放つ。
「グッ!」
マルコは横腹に蹴りを受けた。俺はマルコがひるんだ隙をついて追撃する。
「ちっ、させないよ。フレイムアロー」
マルコは距離を空けるために火の魔術を広範囲に放った。俺はそれをすれすれで避ける。
「おっと、危なかった」
そこで俺は満面の笑みで笑うマルコに気が付いた。
なんだ?何かするつもりか?
「ふふふん。ようやく準備ができた」
「準備?」
「辺りは水浸しで、さっきのフレイムアローで水蒸気も出来てきた」
「それが準備か?」
「ああ、そうだ。ディープミスト」
次の瞬間、辺りが深い霧に覆われた。
ディープミストはオディアスから助けてもらった時にマルコが使っていた魔術だ。
しかし下準備有りのディープミストは前回とは違い、広範囲でより深い霧のため、簡単には霧を晴らすことはできない。
「何も見えないな」
俺はマルコがいた方向に駆け寄って、剣を振りおろした。しかし、そこには、もうマルコはいない。
「どこに行った?」
俺は再び歩き出そうとするが、足が動かなかった。
「ん?足が凍ってる。動けねぇ」
マルコは元いた場所に俺が来ると予測し、氷結魔術を仕掛けていた。
俺が動けない間にもマルコは魔術を発動させている。
「これで、終わりだ。ストームバースト」
マルコは今までの中でトップクラスの魔術を放った。
ストームバーストは水魔術と風魔術の複合魔術だ。水蒸気を風の空気膜の中に圧縮し、指向性を待たせて破裂させることにより、アクアバレット以上の速度に、アクアキャノン以上の破壊力をもつ。
「ぐはっ…」
俺はぶっ飛ばされて倒れた。
「大丈夫か?」
マルコが寝転んでいる俺の顔を覗き込む。
「…負けたよ。お前強いな」
「だろ?」
マルコはニッコリと笑って言う。
「これで一勝一敗だな」
俺は気になっていたことを聞いた。
「どうしてそんなにライバルになりたいんだ?」
「どうしてって?ライバルって憧れない?」
「憧れ?」
「互いに切磋琢磨して、時には争い、時には背中を押しあう、そして時には助け合う。そうやって共に成長してゆく。そんな友がいる人生は、それはもう楽しくて輝かしいものになると、そう思わないか?」
輝かしい人生か…前世ではそんな人がいなかったな。ただただ暗く苦しい日々に感じていた。ライバルか…うん、いいかもしれない。一緒に笑って、苦楽を共にする生涯の友って言うのは。それにマルコとはこの世界に来てから初めて親友のような関係が築けそうな感じがする
「そうだな、そう思うよ。俺達はライバルだ」
俺の言葉を聞いたマルコは目を見開き驚いた顔をすると、すぐに満足そうな顔をして、うんうんと何度も頷いた後に手を差し伸べた。
「じゃ、改めまして。よろしくなヒサメ!」
「ああ、よろしく。マルコフニウス」
こうして俺たち二人は両者が認めるライバルとなった。




