第14話 武装強化
翌朝、バルコとの修業が始まった。
バルコが木刀を持って現れ、
「まずはヒサメ殿がどこまでできるか試してみましょう」
と言い出し、試合形式で手合せをすることになった。
相手は剣を両手に持ち攻撃に備えて構えている。正眼の構えだ。
やっぱりシズク師匠の師匠なんだな。構えが全く一緒でスキがない
俺が最初に攻めにでる。上から剣をふるが、バルコさんはその攻撃に対して剣を斜めにし、綺麗に上から下に受け流す。今度は正面を突く。しかし、剣でそれを止められる。
噓だろ、剣先の一点集中攻撃を剣で止められた!そんなのちょっとでもずれたら剣が滑ってそのまま刺されるぞ
「なかなかの攻撃ですね。ではこちらも」
バルコは一歩前に詰めると下から剣を振るう。俺は何とか防ぎ、反撃しようと剣を振りかぶった。その瞬間にバルコは俺の剣を目がけて攻撃する。そのせいで腕が完全に後ろにいく。
予備動作を狙われた。このままだと攻撃も防御もできない
そこを見逃すバルコではない。俺の体勢を崩した後に流れるように追撃を仕掛ける。
俺は残った左腕をスキルでアダマンタイト化して防いだ。
バルコは一瞬だけ驚いた表情を見せるがすぐに冷静になる。
「それがヒサメ殿のスキルですか?初めて見るものですね」
「はい、腕を色んなものに変えられます」
「なるほど、いいスキルです」
そして、またバルコの攻撃が始まる。
バルコの攻撃はシズク師匠よりも速くない、力も強くない。俺と同じか、それより下だ。なのに攻撃に回れない。嫌な所に的確に攻撃してくる。防御しにくい。こっちからの攻撃はする前に潰される。
俺はバランスを崩した、いや崩された。その瞬間に一気に詰められた。一回後手に回るともうおしまいだ。体勢を立て直そうとするが、バルコがそれを許さない。距離を取れない。最後は押し切られてしまい攻撃をもらった。
「勝負ありですな」
「はい、ありがとうございました」
「数年でここまでとは、ヒサメ殿は素晴らしい才能をお持ちで」
「いえ、俺なんて。師匠やサンドラに比べれば」
俺は一度、サンドラと模擬戦をしたが、なす術なく負けている。
「確かに、シズクや魔導王様は天才です。それこそ千年に一度の才でしょう。シズクは魔力量が少ないにもかかわらず、剣術と体術だけで他を圧倒できる身体能力と技術。まさしく一騎当千と言えるでしょう。また、魔導王様は噂でしか聞き及びませんが、スキルと魔術に関する知識で誰にも真似できないような多彩な攻撃手段。お二人は全人類のなかでも最強と言えるような人でしょう。しかし、ヒサメ殿はまだまだ伸びしろのかたまりです。しっかりと努力すれば、きっとお二人に届きうるでしょう」
俺はその言葉を信じ切れなかった。それほどまでに俺と師匠たちとでは差があるのだ。
「本当に、俺も強くなれますか?二人みたいに」
「はい。今はまだ技や駆け引きが若いですがね。それはこれから嫌でも身につくでしょう。ところで、ヒサメ様は武装強化を知っていますか?」
「武装強化?」
「はい。身体強化の応用技で武器、防具に魔力を通してその強度と性能を高めます。これができるかできないかで大きくかわります」
「剣を強化する…ですか?」
「はい。武器の強化はそのまま攻撃力の強化に繋がります。どんなに身体強化が優れていてもそれに見合う武器でなければその力を充分に発揮できませんからね」
そう言われた俺は黒狼との戦いを思い出した。
確かに俺は緋色で黒狼を攻撃するも堅い毛皮に阻まれて薄皮を斬るだけだった。
「しかし、これは身体強化よりも難易度が非常に高く、高度な魔力操作が必要です。剣士は魔術を使わずに剣術で戦いますから、そのような魔力操作ができない人が多いので、使い手は少ないのです。まぁ、シズクは一回見たら『わかったわ』とか言ってすぐに習得しましたがね」
流石は師匠であるの一言に尽きる。
だが、俺も新人だ。魔術系統なら得意である。
「魔力操作ですか。身体強化は結構得意ですが」
「では、直ぐに習得出来るかもしれませんね。早速やってみましょう。その木剣に身体強化の要領で魔力を流してみてください」
「はい」
木剣に魔力を流そうとする。しかし、なかなか魔力がいき届かない。
身体強化はもともと身体にある魔力の通り道である魔力回路の流れを速くして、本来の力以上をだす。
しかし、武装強化は魔力の通り道がなく、当然魔力の流れがない物質に無理やり流れを作って魔力を全体に均一に込める必要がある。この均一にするのが難しい。不均一だと逆に強度の違いから武器が脆くなってしまう。
結局、俺はその日のうちには習得できなかった。
それをバルコに言うと、「それは当然のことですよ」と言われてしまった。
俺は夜にサンドラに武装強化について聞いてみた。
「あれか、できるぞ」
「え、できるの?」
「ああ、魔力操作の修業の時についでにできるようにしたが、そんなに難しくないぞ。もっと魔力操作の精密さが必要な魔術なんていくらでもあるからな」
サンドラもできるのか。
「まぁ、俺達は新人だ。魔力操作は努力すれば直ぐにでも上達するだろう。よかったら、俺が魔力操作の練習をみてやろう」
「いいのか?頼む」
「ああ、任せとけ。明日の剣術修業の後に教えてやる」
サンドラは嬉しそうに答えてくれた。




