第13話 師匠の師匠
イーハルの街に入った俺達はそのまま領主邸に向かった。
「お帰りなさいませ、リーエ様」
メイド姿の使用人の出迎えがあった。
領主って凄いんだな~。
なんて考えているとリーエが答える。本当にお嬢様なんだな。
「はい、只今帰りました。この方達は私の客人です。それからお父様はいますか?」
「はい、領主様は只今お部屋にて書類仕事をなさっています」
「そう。分かりました。ありがとう」
そのまま、お嬢様に連れられるままに俺達は屋敷の中に入った。
コン、コン
「失礼します。お父様、今よろしいでしょうか?」
「ああ、入っていいよ」
部屋にいたのは優しそうな雰囲気なのだが、しっかりと鍛えられた肉体が服の上からでも分かる体格のいい男性が椅子に腰かけていた。
「そちらの方々はお客さんかな?リーエ」
「はい、賊に襲われていたところを助けて頂きました」
「賊⁉大丈夫だったのかい?けがは?」
「大丈夫ですよ」
「そうか、良かった。君たち、本当にありがとう。申し遅れた、私はガードン=イーハル。この街の領主です」
「俺はヒサメです」
「俺はサンドラだ」
お互いの自己紹介を終えた後に、俺は事情を聞いた。
「ところで、襲っていた連中って何者なんですか?」
「奴らは『鴉』と名乗る組織です。ここ最近に現れるようになりまして、その実態はほとんど分からず。私も接触したことがありません。分かっているのはメンバー全員が剣士で真流剣術を使うことと、ここイーハルを拠点にしていることくらいです」
真流剣術?
俺は知らない単語が出てきたが話の腰を折るのもあれなので一旦スルーした。
「奴らの目的は何なんですか?」
「それも分かりません。しかし、我が領地を狙い、今日は娘まで襲ったのです。恐らくは私たちイーハル家に恨みを持つ人達でしょう」
「恨みとは?」
サンドラの質問にガードンは一瞬答えが詰まる。
「…さぁ?幾分広い領地ですので不満の声は必ず出てきますので」
自身の領地で自分を恨む人が出たのだ。落ち込むこともあるだろう。
「それもそうですね。何か手伝えることはありますか?」
「それは心強い。その時は、お願いしますよ」
「はい」
「さて、貴方がたにはお礼をしないといけないですね」
「いえ―」
「じゃ、俺たちがここで鴉の調査をするからその間にヒサメに剣術を教えてやってくれ」
俺が断ろうとするとサンドラが割り込んできた。
「剣術?それは、師匠にもう習ったぞ、サンドラ」
「お前が習ったのはたった数年だろ?大半が体作りと基礎剣術だろう」
「それは、そうだけど」
話しているとサンドラは視線をさっきの執事に向けた。
「あんた、剣豪バルコだろ?」
「あの人を知っているのか?」
「ああ、古流剣術の達人だ」
「元ですよ。魔導王様」
「そして、お前の師匠、シズクの剣の師匠だ」
「え、師匠の?」
「おや、ヒサメ様殿シズクの弟子でしたか」
「はい、まぁ師匠の足元にも及びませんが」
「シズクは特別でしたからね」
「というわけだ。ガードンさん、ちょっとこの爺さんを貸してもらえないか?」
ガードンはバルコに視線を向けた。
「私は構いませんよ」
本人の許可を得たガードンは快く承諾してくれた。
「ええ、いいですよ。場所は庭をお使いください。後、本日は是非我が家に泊まっていってください」
そればかりか屋敷に泊まらせてくれることになった。
「ああ、そうさせてもらう」
「ありがとうございます」
そして俺は明日からシズク師匠の師匠に剣術を教えてもらうことになった。




