第12話 新たな出会い
いよいよ第二章です
『これは、はるか昔のこと。百億年、いや、もっと前だろうか。まだこの世界も存在していなかった神話時代の話である。
ある時に時空の狭間に二人の兄弟が誕生した。どのようにして生まれたのかは定かではない。一説には魔力が集まり意思を持った存在ではないかとも言われている。
この兄弟は仲が良く、互いに切磋琢磨して生きていた。兄は魔力を見つけて魔術を作った。弟はあらゆる武術を生み出した。曰く、現在の魔術は全て,その神話時代の魔術をもとにしている。曰く現在の武術、剣術や槍術、棒術、体術に至る全てがその神話時代の武術をもとにしている。
兄弟は二人だけの生活を何百年か過ごした。そんな中、兄は弟に言った。
「世界を作らないか?そして、我々以外の生物をたくさん作り育てよう」
弟は言った。
「それはいい。やりましょう。兄者!」
兄は原初魔術により、時空を生み出した。次に大地と天を創った。大地に水を生み出した。光と闇を生み出した。植物を、獣を、魔物を創った。それらをもとにして、エルフ、獣人、魔人を創った。最後にそれらの特徴の基本型であるヒト族を創った。そして、弟がそれらに生きるすべを教えた。
兄弟はこの世界をガザニンテウスと名付けた。
そして兄はこの世界の創造神に、弟は武神になられた。兄の名はガウス、弟の名はザウスとおっしゃられる。
創造記 第一章 』
俺、春風氷雨は馬車に乗りながら読書をしていた。
ふと、隣の男を見ると寝ていた。サンドラだ。
「ふぁ~、よく寝た」
「なあ、サンドラ」
「ん、なんだヒサメ?」
「俺ら、今旅をしているんだよな?」
「当たり前だろ?何を言ってんだ、いきなり」
「旅はある程度の実力が必要って言ってたよな?」
「ああ、言ったぞ」
「じゃあ、なんで俺達はこんなにのんびり馬車に乗ってんだよ」
そう、俺達は旅を始めてここ数週間、なんにも危険なことがないまま、ゆらり旅をしていた。
「そりゃあ、お前、どこもかしこも危険な道だったら商人とかどうすんだよ?それにこの辺は比較的安全なんだよ」
「なら、俺らは今どこに向かってんだ?」
「イシダーンバナ国のイーハルという町だ。そこは冒険者の町と言われるくらいに冒険者家業が盛んなんだぜ」
「そこになんかあるのか?」
「ああ、Aランクダンジョンがあるぞ。それにイーハルはシズクが修業してた場所だ」
「師匠が。あ、なんか見えてきた」
俺の眼には、前にいた町とは比べ物にならないくらいの大きな街があった。
乗せてもらっていた馬車から降り、俺達はその街に歩いて向かう。
すると、ギン!っと剣と剣がつばぜり合いする音が聞こえる。
「サンドラ!」
「ああ、行くぞ」
走った先に見えたのは、女の子とその執事のような風貌の2人が剣を持ちながら、十数人の賊に囲まれている所だった。今にも絶体絶命のように見える。それを見たサンドラは俺の肩に手を置く。
「仕方ないから転移を使うぞ」
サンドラの得意魔術である転移だ。この転移魔術はサンドラの代名詞と言われるくらいで、使える者は他にいないらしい。しかし、そんなサンドラでさえ一日一回、自身あわせて三人までしか使えない。
賊の取り囲んでいる二人の前に瞬間移動すると、賊が、
「なんだ、お前ら?どこから現れやがった。そいつらをかばうなら死んでもらうぞ」
俺は右手に魔力を流してミスリル剣を構える。サンドラは奴らを警戒しながらも、
「嬢ちゃん、爺ちゃん、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫ですが、あなた方は?」
「俺はサンドラだ。んで、そいつはヒサメだ。冒険者をやっている」
それを聞いた賊は
「サンドラ……?それに、さっきいきなり現れた…まさか、魔導王か⁉」
「そうだが」
「ち、何でそんなやつがこんな所にいるんだよ。予想外だ。お前ら、引くぞ」
と、逃げ出していく。
「あ、待て」
俺が咄嗟に追いかけようとするが、サンドラが
「やめておけ。まだ、俺たちは何にも事情は知らないんだし」
と止められた。
「あの、ありがとうございました」
そう言ってきたのは15歳くらいの白髪の美少女だった。
「いいってことよ。それより二人ともけがはないかい?」
とサンドラが言うと、今度は老人が感謝を伝える。
「はい、お陰様で。いや、しかしこんなところで魔導王様にお会いできるなんて。この度は本当にありがとうございました」
そんなにサンドラ…というより魔導王って有名なんだな。
「改めまして、俺の名前はヒサメと言います」
こちらから挨拶をすると向こうも返してくれた。
「私の名前はリーエ=イーハルと申します。先ほどは助けてくださりありがとうございます」
と、綺麗にお辞儀をしてきた。
「イーハル?」
イーハルって今向かっている街の名前じゃ?
俺が首をかしげるとリーエが答えてくれた。
「はい、この町の領主の娘です」
「そいつは驚いた」
サンドラも俺と同様に驚いていた。
すると、
「助けて頂いたお礼をしたいので、私の家まで来ていただけませんか」
と家に招待された。執事のような老人もそれに賛同する。
「是非とも屋敷のほうまで来ていただけませんか?先程のような奴らがまた来ないとも限りませんし、護衛をして頂けたらと思います。勿論、報酬はお支払いしますので」
そう言われた俺達は断ることなく領主様の屋敷までついて行くことになった。




