第10話 黒き大狼
放たれた炎には逃げ場はない。俺は即座に地面に手をつくと腕から魔力を前方にドーム状に広げてスキルで土の壁を作る。さっきやった土の槍の応用だ。しかし、それでも熱は完全には防げない。
「熱い。けどなんとか耐えられる」
しばらくすると熱が収まった。俺はスキルを解除して相手を確認すると、黒狼はそこにはいなかった。
「どこに行った?」
俺は辺りを見渡す。その時、上空から気配を感じた。俺は咄嗟に横に転がる。そのまま、立ち上がると今度はこっちから攻撃を仕掛ける。
「はぁっ!てやっ!」
いける。このまま攻め続ければ勝てる。
相手の爪を牙を躱しては隙をついて攻撃する。しかし、ここで連戦続きで集中を欠けてしまった。
予期せぬ黒狼の尻尾による攻撃に俺は反応出来なかった。
「な!?しっ―ぐわぁ!」
大きな体格差があるため、俺は簡単に飛ばされてしまった。黒狼は転がった俺を噛み殺そうとしてくる。俺はなんとか転がったまま後ろに移動して体制を整える。
「はぁっ、はぁっ、今のはきつかったな」
気付けば俺の額からは血が流れている。恐らくあばら骨が何本か折れている。
今日はもう長いこと身体強化の魔術を使っている。身体強化の魔力消費量が如何に少ないとしても徐々に魔力は失われていく。魔力量が少ない俺ではこれだけでももう残りは少なくなってくる。
「攻撃はしているが硬い体毛に覆われているため、ほとんど斬撃が通っていないな。魔力量も残り少ないし、剣やめるか」
剣を鞘に収めると、体術の構えをとる。
元々、俺が剣術を使っていたのは体術よりも得意だからだな。師匠は俺の逆で体術の方が得意だが。
しかし、体術の方が状況に合っているならそうするくらいには出来る。師匠に合格を貰ったしな。
黒狼は俺を噛み砕こうと顔を近づけてくる。俺はそれを避けて相手の顔の下に潜り込み、そのまま下から黒狼の顎を殴りまくった。
「グワァ~」
効いたようだ。相手はふらつきながら距離を取ろうとする。俺は距離を取らせまいと付きまとうが、黒狼はここでまたもや黒炎を吹いた。
俺は腕で防ぐが黒炎の風圧で吹き飛ばされて、そのまま壁に激突した。
「いてぇ~。くそが!受身もまともにとれなかった。腕が燃えた。…ん?腕が燃えた?そうだ。とわっ」
悠長に俺が考えごとをしていた最中に黒狼は攻撃してくる。
だが、体にダメージを負った俺はもう躱すだけで精一杯だ。
「今は耐えて反撃の機会を探らないと」
俺は粘り強く相手の攻撃を躱し続けた。
すると、痺れを切らした黒狼は自身の最大の攻撃である黒炎を放つ。
「待ってたよ!」
俺は黒炎が手に触れた瞬間にスキルを発動して黒炎の腕にする。
そして、俺は黒狼に向けて一直線に走り、黒炎を吹き終えた瞬間の僅かな硬直の隙をつく。
俺は黒狼に拳を振りかざした。
「うおぉーー」
俺の振るった拳が黒狼の胸を貫いた。
「グルァー」
黒狼は自身の放った炎により硬い毛を燃やされる。しかし、黒狼はまだ息がある。
互いに満身創痍だ。相手は動くが速さはない。しかし、体格差があるため充分に攻撃力がある。しかし、ここで引いたらもう後がない。魔力も尽きかけだ。もう身体強化もスキルも発動できない。距離を取って黒炎が来たらもう勝ち目がない。
俺は少しの隙をつくと剣を抜いて、さっき貫いた胸を目がけて突き刺す。
「グギャァー」
黒狼はまだ立っている。
「くそ、まだか」
そう思っていたが、黒狼は倒れた。
「ギリギリで勝ったな」
そこで俺も倒れてしまった。




