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厄災の子 ~運命に負けて異世界に行く~  作者: 香川寿太郎
第一章 始まりの街 ビギン
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第10話 黒き大狼

放たれた炎には逃げ場はない。俺は即座(そくざ)に地面に手をつくと腕から魔力を前方にドーム状に広げてスキルで土の壁を作る。さっきやった土の(やり)の応用だ。しかし、それでも熱は完全には防げない。

「熱い。けどなんとか耐えられる」

しばらくすると熱が収まった。俺はスキルを解除して相手を確認すると、黒狼はそこにはいなかった。

「どこに行った?」

俺は辺りを見渡す。その時、上空から気配を感じた。俺は咄嗟(とっさ)に横に転がる。そのまま、立ち上がると今度はこっちから攻撃を仕掛ける。

「はぁっ!てやっ!」


いける。このまま攻め続ければ勝てる。


相手の爪を牙を(かわ)しては隙をついて攻撃する。しかし、ここで連戦続きで集中を欠けてしまった。

予期せぬ黒狼の尻尾(しっぽ)による攻撃に俺は反応出来なかった。

「な!?しっ―ぐわぁ!」

大きな体格差があるため、俺は簡単に飛ばされてしまった。黒狼は転がった俺を()み殺そうとしてくる。俺はなんとか転がったまま後ろに移動して体制を整える。


「はぁっ、はぁっ、今のはきつかったな」

気付けば俺の額からは血が流れている。恐らくあばら骨が何本か折れている。


今日はもう長いこと身体強化の魔術を使っている。身体強化の魔力消費量が如何(いか)に少ないとしても徐々(じょじょ)に魔力は失われていく。魔力量が少ない俺ではこれだけでももう残りは少なくなってくる。


「攻撃はしているが硬い体毛に覆われているため、ほとんど斬撃(ざんげき)が通っていないな。魔力量も残り少ないし、剣やめるか」


剣を(さや)に収めると、体術の構えをとる。

元々、俺が剣術を使っていたのは体術よりも得意だからだな。師匠は俺の逆で体術の方が得意だが。

しかし、体術の方が状況に合っているならそうするくらいには出来る。師匠に合格を貰ったしな。


黒狼は俺を噛み(くだ)こうと顔を近づけてくる。俺はそれを避けて相手の顔の下に潜り込み、そのまま下から黒狼の(あご)(なぐ)りまくった。

「グワァ~」

効いたようだ。相手はふらつきながら距離を取ろうとする。俺は距離を取らせまいと付きまとうが、黒狼はここでまたもや黒炎を吹いた。


俺は腕で防ぐが黒炎の風圧で吹き飛ばされて、そのまま壁に激突(げきとつ)した。

「いてぇ~。くそが!受身もまともにとれなかった。腕が燃えた。…ん?腕が燃えた?そうだ。とわっ」

悠長(ゆうちょう)に俺が考えごとをしていた最中に黒狼は攻撃してくる。

だが、体にダメージを負った俺はもう(かわ)すだけで精一杯だ。


「今は耐えて反撃の機会を探らないと」

俺は(ねば)り強く相手の攻撃を躱し続けた。

すると、(しび)れを切らした黒狼は自身の最大の攻撃である黒炎を放つ。


「待ってたよ!」

俺は黒炎が手に触れた瞬間にスキルを発動して黒炎の腕にする。

そして、俺は黒狼に向けて一直線に走り、黒炎を吹き終えた瞬間の(わず)かな硬直の隙をつく。

俺は黒狼に拳を振りかざした。


「うおぉーー」

俺の振るった拳が黒狼の胸を(つらぬ)いた。

「グルァー」

黒狼は自身の放った炎により硬い毛を燃やされる。しかし、黒狼はまだ息がある。


互いに満身創痍(まんしんそううい)だ。相手は動くが速さはない。しかし、体格差があるため充分に攻撃力がある。しかし、ここで引いたらもう後がない。魔力も尽きかけだ。もう身体強化もスキルも発動できない。距離を取って黒炎が来たらもう勝ち目がない。


俺は少しの隙をつくと剣を抜いて、さっき貫いた胸を目がけて突き刺す。

「グギャァー」

黒狼はまだ立っている。

「くそ、まだか」

そう思っていたが、黒狼は倒れた。


「ギリギリで勝ったな」

そこで俺も倒れてしまった。

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