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隣の席のクール男子に恋しています  作者:


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35 母と顔合わせ

 次の日。また頑張って作ったお弁当をクーラーバッグに詰め込んで、母の車で出発した。


「彼氏くん、会うの楽しみ〜。体育祭の時はまだ付き合ってなかったんだよねぇ? でもあのお姫様抱っこの子でしょ? イケメンだったからわくわくしちゃう」


 母のテンションはめっちゃ高かった。奏多と会わせるのを躊躇してしまうレベル。


「お母さん、会うのは試合終わってからだからね。それまでは隠れててよ」


「はいはい。わかってますって」


 今日は昨日の試合で出揃ったベスト8が準々決勝を戦う。奏多たち以外は全て二年生だ。


 一試合目、かなりの接戦を制した奏多たちだけど、準決勝で惜しくも負けてしまった。

 それでもその後の3位決定戦では勝つことが出来て、最終結果は第3位だ。県大会への出場も決まった。


「すごいわねえ、奏多くん」


 母はすっかり『奏多くん』呼びで定着している。奏多、びっくりするだろうな。


 全部終わって解散になり、奏多が走って来た。


「お疲れ様!」


 声を掛けたけどどことなく緊張している。私の隣で母が手を振っているからに違いない。


「奏多くん〜、お疲れ様でした。上手だったわね〜」


「ありがとうございます。あ、あの、山岸奏多です。有紗さんとお付き合いさせていただいてます」


 頭を下げる奏多に母はこちらこそよろしくね、と言い、車で待ってるからゆっくり話しておいで、と私の背中を押した。意外とあっさり引き下がったので私のほうがびっくりしてしまう。


「お母さん、有紗に顔が似てるな」


「そうなんよ。体型も髪質も全部そっくり」


「お父さん、有紗のこと可愛くてしょうがないんやない? 好きで結婚した女性(ひと)にそっくりの娘なんて、想像しただけで萌える」


「あはは……そうなんよね。お母さんともまだラブラブやし」


 これは本当にそう。恥ずかしながら父は母と私にめちゃくちゃ甘くて過保護だ。


「あ、今日の弁当も美味かった。ホントにありがとう」


「良かった。すごい練習したんよ。今までお弁当作ったことなかったもん」


「そうなん⁈ めっちゃ美味しかったよ。初めてとは思えん」


 あまりにも奏多が喜んでくれたので、週に一回くらい奏多にお弁当作ろうかな、なんて密かに思っている。毎朝自分で作ってるって言ってたし、一日くらい楽させてあげたい。私もいつか一人暮らしをする時にお弁当を作る練習になるし、一石二鳥だ。


「準決勝惜しかったね」


「ああ。相手のサーブがすごい良かった」


「結局、あの人らが優勝したもんね」


「県大会行ったらまた当たるかもしれん……今度は勝てるように頑張るわ」


 それでも今日の結果には満足しているようで、奏多の顔は穏やかだった。


「あ、そうだ。今日は車だから荷物いっぱい持ってこれたからね、これ、坂口くんや他の人と食べて」


「何? これ」


「凄い美味しいカステラなんよ。疲れたから甘いもの欲しいと思って。ちゃんと個包装になってるからみんなに配って」


「わ、サンキュ。坂口も喜ぶわ」


 遠くの方で奏多を待ってる坂口くんの姿が見える。スマホをいじりながらじっと待ってて、健気。


「じゃあ明日、学校で会おうね」


「あ、車まで送るよ。お母さんにもう一度挨拶したいし」


 昨日の今日だからちょっと神経質になってるのかな。駐車場はすぐそこだから危ないことなんてないんだけど。でも嬉しい。


 車が駐車場を出るまで見送ってくれた奏多をバックミラーで見ながら母が呟く。


「いい子だったわねえ、奏多くん。イケメンだし」


「もう、お母さんそればっか」


 母からの奏多への褒め言葉を聞きながら運動公園を後にした。私は今日が幸せな一日だったことに感謝して目を閉じた。






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