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31 新人戦

 10月。ついに奏多の新人戦の日がやってきた。


 いつも自分でお弁当を作っているという奏多のために、この日私は早朝から張り切ってお弁当を作ることにした。奈津のアドバイスを受け、試合の合間に食べられるものを研究して何度も練習したのだ。


 おにぎりは2種類。梅干しとちりめんじゃこを混ぜ込んだものと、ほぐした塩鮭と粗みじんにした大葉を混ぜたもの。どちらも、試合の合間にさっと食べられるように小さく握ってラップに包んだ。

 主菜は、消化に時間がかかるとパフォーマンスが落ちてしまうので脂肪の多いものは避け、揚げ物もダメ。だからつくねの照り焼きと、豚もも肉とパプリカのオイスターソース炒めにした。

 あとは塩昆布とネギの卵焼きとブロッコリーのチーズ焼き。デザート代わりのりんごとさつま芋の重ね煮も詰め込んだ。どれも、食べやすいように楊枝を添えて。


 食中毒にならないようにクーラーバッグに保冷剤も入れて、けっこうな大荷物。


「大丈夫? 有紗。今日はパパと会合に出なきゃいけないから、車で連れて行ってあげられないんだけど……」


「大丈夫よぉ。試合会場の運動公園には中央駅からバスが出とるんやし、ヘーキ。じゃあね、行ってきまーす!」


 開会式から見逃すまいと早く到着したつもりだったけど、熱心な保護者たちが観客席を埋めていて席を探すのが大変なほど。


「あ」


 奏多を見つけた。外を走ってウォーミングアップしてるみたい。

 私は(お弁当、持ってきたよ!)と身振り手振りで示した。そしたら、こっちに走ってきてくれた。


「有紗!」


「奏多、はいこれ、お弁当! 保冷剤入れてるから冷たいかもしれないけど」


「ありがとう。めっちゃ助かる。食べるの楽しみやな」


 すごく喜んでくれてるのが伝わって、私も嬉しくなる。


「俺の試合、10時の予定やから。勝ち進んで午後も試合できるように頑張るわ」


「うん、頑張って! 応援してるね」


 奏多は渡したお弁当を自分たちの荷物置き場に置いて、また走り始めた。その姿を見ているだけでも幸せだ。


 

 そしてついに奏多の試合の時間。奏多がエントリーしているのは坂口くんとのダブルス。ドキドキしながら試合を見守った。


(あ……これは大丈夫かも)


 しばらく見ればわかった。奏多たちのほうが断然上手い。その試合は難なく勝ち、次に進むことになった。


 その後も順調に勝ち進み、夕方に最後の試合を終えた時にはベスト8まで上がっていた。


(やったー! 奏多、坂口くん、二人とも凄い! これで、明日も試合が続くんだよね。あと3回勝てば……優勝⁈)


 明日の分の材料もちゃんと買ってある。頑張って作らなきゃな。


 試合を終えた奏多と坂口くんがこちらに走ってきた。


「有紗! 有紗の弁当のおかげで勝ったよ。めっちゃ美味かった」


「和辻さ〜ん、僕もちょっぴりお裾分けしてもらったんよ〜。おかげでいいサーブ打てました」


「何言よん、二人の実力やん。おめでとう! 明日も作ってくるから頑張ってね」


「ああ、ここまで来たら優勝目指すつもりや。な、坂口」


「そうそう。一年生で優勝、かっこええやん〜」


 二人ともすごく嬉しそうだ。


「あ、俺たちもう解散なんやけど、ここまで自転車で来とるんよ。有紗は、バス?」


「うん。中央から乗ってきた」


「ごめんな、ここまで来るの大変やったやろ」


「全然。遠足気分で楽しかったもん。また明日、来るからね」


「あ、じゃあバス停まで送って行く」


 その時、テニス部顧問の先生から集合がかかった。


「大丈夫よ。もうすぐバス来るから。また明日ね」


「わかった。今日はありがとう」


 奏多たちは急いで集合場所に走って行った。私は、軽くなったクーラーバッグを振りながら、浮かれ気分でバス停に向かっていた。


「ちょっと。あんたが奏多の彼女?」


 突然そう呼びかけられるまでは。






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