23 告白とキャンプファイヤー
パタパタと誰かが走ってくる音がする。
「ごめん、和辻さん! 待たせて」
「ううん、大丈夫」
本当はホッとして嬉しくて涙が出そうだったけど。気を遣わせたくなくて必死でこらえた。
「先に来て待っとくつもりやったのに、ほんとごめん。一人にさせてしもた」
「ホントに大丈夫だから。気にせんとって」
泣きたくなんてなかった。なのに、気持ちと裏腹に私の右の目から涙が一粒、こぼれ落ちる。
「和辻さん……」
「あっ、ごめん、泣くつもりなんかなかったのに……」
困ったような顔をした山岸くんが一歩足を踏み出し、一瞬だけ私を抱きしめた。
「本当にごめん」
大好きな声が耳元で響く。彼はさっと身体を離すと真っ直ぐに私の目を見た。
「あのさ」
「俺……和辻さんが好きなんだ。良かったら、俺と付き合って欲しい」
(嘘……山岸くんから言ってくれた……嬉しい……!)
私も、告白しなきゃ。今しかない。
「あのね」
「うん」
「私も、山岸くんが好きです……よろしく、お願いします」
私の言葉を聞いた山岸くんは、とてもとても甘く微笑んだ。
「……ありがとう。すげぇ嬉しい」
「私もだよ……夢みたい」
ちょうど、校庭から歓声が上がった。いつの間にか日は暮れかかり、キャンプファイヤーに火が点されたみたいだ。
「見に行こうか」
「うん」
山岸くんは先に歩こうとして足を止め、左手を私に差し出した。
私はドキドキしながら右手を出し、彼の手に重ねる。するとキュッと握られ、そのまま手を引かれて歩き出した。
(手……手を繋いでる! 手が大きくて硬いな……男の子って感じする……ああ、心臓が口から飛び出しそう)
空は暗くなり始め、キャンプファイヤーの火が赤々と燃えている。その周りにフォークダンスの大きな輪ができていて、みんな楽しそうに踊っている。きっと、好きな人と踊れるように祈りながら。
「すごい。キャンプファイヤー綺麗やね」
「そうやな。学校でこんなことできるなんてな」
「一生の思い出に残りそう。こうやって山岸くんと一緒に見られて」
山岸くんの左手に少し力が入った。
「あのさ。名前で呼びたいんやけど……かまん?」
「え! あ、うん、もちろん……じゃあ私も、名前で呼んでいい?」
「うん。じゃあ、有紗」
思った以上の破壊力だ。あの大好きなイケボで私の名を呼ばれるなんて。
「は、はい……じゃあ、奏多くん」
「くん、はなくていいよ」
「……奏多」
「えー? 聞こえない」
「奏多」
「もう一回」
「奏多!」
意地悪言って笑ってる。でもそんな山岸くん、ううん、奏多が好き。
「この後、駅まで送っていくから」
「うん」
「部活の後も」
「うん。火曜と金曜は塾無いから、図書館で待ってる」
「デートもいっぱいしよう」
「ふふっ、意外と積極的なんやね」
「有紗のことすげぇ好きだから……たくさん思い出作りたいんだ」
「私も。初めての彼氏だから、いろんなこと一緒にしたい」
奏多はびっくりした顔で「初めて?」と聞き返した。
「初めてだよ? そんな風に見えなかった?」
「うん……めっちゃ可愛いから当然いただろうと……」
(待って待って待って! めっちゃ可愛いって言ってくれた? あんなにシャイだった彼がこんなことさらっと言ってくれるとは思わなかったんですけど!)
両想いになった途端の嬉しい変貌ぶりに、私は幸せで嬉しくて夢のようだ。
手を繋いだままそっと奏多の顔を見る。燃え盛る火に照らされた横顔が綺麗で眩しくて。視線に気がついた奏多が振り向いて、優しく微笑んだ。




