22 後夜祭と待ちぼうけ
午後になると体育祭はさらに盛り上がってきた。
まず三年生が主体のグラウンド劇。歌あり踊りあり、高校生活最後だからどのグループも一生懸命で一体感がある。このために大道具や小道具のパートも頑張ってきたのだ。
競技のほうも騎馬戦や綱引き、リレーなど得点の高いものが続く。その度に声を出して応援し、結果に一喜一憂する生徒たち。
そしてついに、最後の種目である選抜リレーが始まった。今回も山岸くんと奈津が出る。
リレー大会の時は山岸くんが第一走者だったけど、今回は奈津から。そしてやはりアンカーは各グループのグループ長が走る。体育祭の盛り上がりはここで最高潮になるのだという。
「よーし、気合い入れて応援するぞー!」
三年生の声に負けないように、私たちも叫ぶ。そしてついにスタート。
「奈津ー! 頑張れー!」
奈津はロケットスタートを見せ、一位で山岸くんに繋いだ。
「山岸、行け!」
「頑張れ山岸くんー!」
みんなの声援が熱くなる。もちろん私も。
「山岸くん、頑張ってー!」
その時、
「奏多!」
どこかでそんな声が聞こえた気がする。私は顔をブルブルっと振り、その声を耳から追い出した。
「やった! まだ一位よ!」
山岸くんは二位を引き離して次へバトンを渡した。
「やったね有紗! 山岸くんかっこいいやん!」
美佳が興奮して抱きついてくる。そしてそのリードを保ったままバトンが渡っていき、アンカーのグループ長へ。
どのグループも地響きのように声援を送る。ああどうか、このまま優勝しますように……
パァン。ピストルの音がした。そして拳を振り上げる青雲のグループ長。
「やったぁーー!!」
選抜リレーは青雲が一位だ。いつのまにか私たちは抱き合って涙を流していた。
こうして体育祭は終わりの時間を迎えた。競技だけでなく応援や劇も含めた総合結果が発表され、私たち青雲は惜しくも二位。三年生はみんな泣いていた。他のグループの三年生もだけど。
(一生懸命頑張ったから、結果がどうであれみんな満足の涙を流しているんだな……)
表彰式が終わると片付けだ。あれだけ頑張って作った櫓やパネル絵も全て、壊して片付けていく。寂しいけど、だからこそ美しいのかも。
「終わっちゃったね〜体育祭」
「うん。楽しかったね」
片付けが終わり、今日一日の汗と埃で薄汚れた体操服を制服に着替えた。これから教室でホームルームだ。
「みんな怪我もなくよく頑張ったな。キャンプファイヤーが終わったら、全員ちゃんと帰宅しろよー。では、解散!」
先生の話が終わると全員で写真を撮り、それぞれ校庭に向かった。
「有紗〜、私らはフォークダンスに行くね! その前の告白大会も見たいし」
フォークダンスが始める前に朝礼台をステージにして告白大会が行われる。そこで勇気ある人が進み出て、好きな人に愛を叫ぶ。上手くいく場合もあるけどほとんどは玉砕らしい。でも見てる分にはめっちゃ楽しいイベントなのだそう。
「わかった。私は……待ち合わせしてるから……」
照れながら言うと、みんなに肘でつつかれた。
「わかってるよ〜。有紗、頑張って両想いになってくるんよ!」
三人に見送られ、私は待ち合わせ場所に歩いて行った。なんだか胸がドキドキして死にそうだ。
(山岸くん、もう来てるかな……さっきテニス部の男子と話してたから、まだ来てないかも)
校庭ではもう告白大会が始まったようで「早く行こ!」とみんな走っている中、私だけ、みんなと逆に向かっている。
人気のないウォータークーラーに着いたけれど、まだ山岸くんはいなかった。
(寂しいようなホッとしたような)
ううん、やっぱりホッとした、かな。今のうちに少し呼吸を整えよう。
校舎が邪魔になって、ここから校庭を直接見ることはできない。でも賑やかな声が聞こえ、拍手や笑い声も溢れている。
(楽しそうだな……)
一人で待っていると少し不安だ。本当に山岸くんは来てくれるのかな、って。
「あれー、有紗どしたん、こんなとこで。告白大会、見に行かんの?」
別のクラスの友達が校庭に向かいながら話しかけてきた。
「あ、うん、もう少ししたら見に行く」
「◯◯先輩が学年のマドンナに告るらしいから、必見よ。じゃあねー」
「うん、あとで」
友達の姿は校庭の方へ曲がり、見えなくなった。暗がりにぽつんと一人でいると言いようのない不安に襲われる。
どうしたんだろう山岸くん。誰かに捕まって来られないのだろうか。
(誰かって……まさか)
嫌な考えが頭に浮かんだ。




